第127話 「無表情澪雫」
お久しぶりです。
色々とあってモチベーション的にもアレでしたが、今日から更新再開です。
目が覚めると、天井は白かった。
ここがどこか、正しくは良く分からないがあまり考えなくてもわかる。
敗北した。
この学園にきて初めて仲良くなった少女2人がここ、同盟【ソキウス】に入るとききどうしても我慢できなくなったのだ。
……嫉妬かと言えば、嫉妬なんだろうけれども。
それにしても、あの武器の威力はいったいなんだ。
あれの価値は知っているし、それが世界に一つしかないレベルで貴重なものであり、同時に武器が人を選ぶものだとも知っている。
そう言うもの。
というよりも、その余波で自分が踏みとどまれずそのまま敗北した方が恥に思える。
どうしようか。このままトンズラしたほうが良いんじゃないか。
いろいろと考えた結果、しかし俺は何もしないことに決めた。
決めた、と言うよりは人が入ってきて逃げようにも逃げられない状態に陥ったのだ。
「あら、目覚められたのですね」
先輩の一人である彼女をたとえるなら、涼風の精霊といった感じだろうか。
スローネ・デスティンも六駆七星も可愛いとは思う。そう思っているからこそ、学園3位に喧嘩を売りつけたのだからそうなのだが、この先輩は完全に感じが違う。
美しい。どこか高貴な雰囲気が周りに漂っており、思わず息をのんだ。
「どこか動かないとか、不随になったなどの問題はありませんか? 朱鷺朔君は能力者ですから、そんなことはないと思いますが」
心配そうに見つめてくる先輩に首を振って、俺は起きあがる。
が、その前にベッドに押さえつけられた。
はっとして彼女の顔を見つめると、先ほどの慈悲に満ちた顔はドコへやら、冷酷に満ちた目線でこちらを見つめているではないか。
力は強く、武術をやっていた俺でも体を動かすことができない。
体が接近し、「いい匂いだな」と脳天気に考えていた俺の思考は、その冷たい言葉に押しつぶされた。
「選びなさい」
何を? と聞けばネクサス・アルカディアの傘下になるかそれとも放課後2人に会わないかの選択らしい。
俺が何をしたのだろう、と考えているとなんだかんだ考えてネクサスっていう男は周りに慕われていたのだろうと考える。
「そもそも、何がそんなに不満なのですか」
「アットホームでやるなら、そもそも同盟でなくていいのでは? と思いましてね」
「それは貴方の価値観です」
「でも、アットホームな物もあなたたちの価値観ですよね?」
言ってから、これはまずいと考えてしまった。
先輩の表情が消えたのを確認し、抑えられた手も放れているのに気づいて俺は起きあがる。
音もなく白が煌めいたのを視認して、よける準備をしてしかし誰か乱入者が新たに入ってきた。
アルカディアだ。
「はいはい、終了終了。やめなって澪雫」
「でも」
「いいから、離れなさい」
澪雫、と呼ばれた先輩が小太刀をしまって下がる。
そんな少女を見つめて、おさめたのを確認したアルカディアは俺の方を見つめていた。
その目には、何かを問おうとしていることくらい分かる。
しかし、それだけだ。何を言われるのか、彼の忠臣としか思えない澪雫という先輩の怒りようと言うか、その冷酷様に何ともいえない感情を抱く。
「このまま帰れって言うわけにもいかないから、今日はゆっくりしていくと良い。話は明日聞こう」
その言葉にはっとして時計を確認すると、すでに夜の10時である。
流石に今から外に追い出すってことはしないのだろう。
と思ったが、ふつうなら喧嘩を売ってきた部外者に親身になれるわけがないともいえる。
「澪雫、戻るぞ」
「……はい」




