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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
114/199

第114話 「匿名の知」

「というわけで、司令塔に着任しましたー」


 俺は、目の前に立っているいかにも「一匹狼!」な風貌の男を見上げて、頭を下げた。

 相手も俺に礼を返し、俺は朗らかな顔で笑っている男をもう一度見上げる。


 異名【匿名の知】。彼の名前は天鵞絨てんがい影劉えいりゅうと言うらしい。

 2年生で、誰も今まで寄りつかなかったんだと。


「Aで」

「エー?」


 俺のことはそう呼んでくれ、と一匹狼さんはそういい、次の指示を待っているようだ。

 先輩面してくれてもよかったのだが、逆にこうかしこまられると何とも言い難い。


「とりあえず、お久しぶりです」


 声をかけたのは、神御裂かんみざき姉妹だった。

 まあ、天王子学園の理事長の、長男だから当たり前か。

 ちなみに、俺は会うのが初めてである。洸劔こうきとはよく昔遊んでいたが、思えばそのときも1人で何かの本を読んでいたような気がする。


「ああ、お久しぶり」


 イメージではもっと怖い人だと思ったのだが、こんなに柔らかい人だとは思わなかった。

 これだけ感じがいい人で、知将と呼ばれるほど頭がいいのであれば【同盟アライアンス】の中ではひっぱりだこではないのか、と不思議がるのも分かってほしい。

 不思議がっている俺を見てか、澪雫みおが噂話を教えてくれた。


「彼は、未来が見透かせるらしいのです」

「未来?」

「分析の結果だよ。未来予知なんて大層なものじゃない」


 元々俺はRTSが好きでね、と。

 リアルタイムストラテジー。つまり……軍師ゲームじゃないか。


 2年生の授業に、独自の授業があるとは聞いていたが。

 ちょっと見本を見せよう、と影劉さんは、タブレットを取り出して軽く操作し、ホログラムを展開させた。


「これはシミュレーターの機能も果たすんだ」


 流石天王子学園だよな、数億もつぎ込んでこれ作ったんだぞなんて、豆知識を俺たちに教えながら、1人1人キャラクターを設定していく。

 あくまでも影劉さんの目測らしいが、そのキャラクターはすごく明確に、俺たちの能力を指し示していた。





「これくらいか。まあ簡単に設定したけど、これだけならアライアンスのレベルは学園3位」


 協調性を入れてない場合。彼の言葉は、大きく俺たちに突き刺さる、


「まず欠点を言おう。相手の想定は同盟アライアンス【エーリュシオン】。この場合、俺なら試合を投げる」


 いや、俺たちでも試合を投げる。駄目、絶対。

 正面から姉さんと戦おうなんて、絶対に思わない。


「なぜだと思う? そう

「個々の能力が相手に届かないから?」

「残念。個々の欠点を、自分たちが保管しようとしないからだ」


 あっ。


 俺はなぜ影劉さんが一匹狼なのか、今分かった気がした。

 口調は朗らかだが、その言葉は人にナイフを刺し通すような鋭さがある。

 簡単に言えば、話が的確すぎるのだ。


「たとえば霧氷むひょう澪雫。なぜ能力を使わないんだ?」

「……それは」

「剣聖から注意しても使いたがらないと報告は受けた」


 そして外堀まで埋める。もう、言質も取られているのだから言い逃れが出来ない。

 やり方がすごい。……ていうか、よく母親に直接掛け合ったものだ。


 俺たちがスカウトしたときから今日まで1週間がたったが、その間にすべて終わらせてきたのだろう。


 影劉さんは、全員の欠点を全員言い終わった後、消耗しきっている俺たちを見つめた。


「さて、本題だ。強くなりたいか?」

「はい」


 俺は即答した。俺はゼニスになるのだ。

 だからこそ覚醒までしたというのに。


「他の人も?」

「……はい」


 澪雫から刑道けいちと、一人一人全員の返事を待ってから影劉さんはうなずいた。

 刑道は力のコントロールの欠如を指摘されている。小手先でも相手にとどめを刺せることが必要だと言われているのだ。


「……半年だ」


 彼のいう言葉は、すべて正しい。

 それを本能的に俺は分かっていたし、だからこそ何も言い返すことが出来ないのだが、彼の判断は普通に考えれば、常軌を逸しているものだった。







「半年、鍛錬して徹底的に強くなってくれ」

今9月で半年……つまり来年までなのです。


ということで第1部はこれで終了。小話などを書いて次は第2部。

このまま第2学年に移行します。

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