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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
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第102話 「治療と監視」

長らくお待たせしました。といっても昨日は更新しましたが。

プチスランプから脱したので、これからもよろしくお願いいたします。

 澪雫みおたちを医務室に送り込む。


 幸い、全員が負傷はしたものの、軽傷で済んだのは幸いなことだろうか。

 とにかく、それだけでよかったのだから感謝すべきなのだろう。


 少なくとも、彼らの目的は俺だったようだし。


「覚醒、おめでとうございます」


 治療を受けて医務室から最初に出てきたのは、澪雫だった。

 俺を見つめると、すぐに右足を引きずりながらも寄ってくる。


「治療、どうだった?」

「骨は折れていないみたいですけど、無理に動かさないようにって言われました」

「それなら、夏休み中は無理をしないようにな」


 はい、と澪雫。

 そして、俺の方を申し訳なさそうに見つめる。


「この足では、デートも行けませんね」

「行けるときに行けばいいさ」


 気にしていないことを彼女に伝え、彼女に座るよう促す。

 少しの沈黙の後、話しかける。


「このままで、いいのか?」

「何がです?」

「澪雫の実力なら、ここじゃなくてほかの場所に行っても通用するぞ」


 もっといい指導者のところで己を磨いた方がいいのではないか?

 俺は彼女に告げるが、間髪入れずに澪雫という少女は、首を振る。


「私は、どこだったら強くなれるとか、どうでもいいのです」

「え」

「やっと、自分の考えがまとまってきたのですよ。……私は、ネクサス君と一緒にいたいから、ここに居るのです」


 まだ、1年目のこの時期ですよと笑った彼女の顔は、慈悲にあふれていた。

 どのような家庭で育ってきたら、ここまで献身的で純粋な性格になるのだろう。

 そんな疑問を、俺はいくつも浮かばせては、消していった。


 結局は、彼女の根本的な性格が天使だという結論に達して、俺は考えるのをやめる。


「それよりも、覚醒したことに対して何かネクサス君に副作用などというものはありますか?」

「いや、今のところ無いけど……。このあと、王牙おうがさんと烏導うどう先生に呼ばれてる」

「私も行きます」


 ま、最終的にはみんなが一緒に行くと言うだろうし、俺は何も言わずにうなずいた。

 それでも。……骨は折れてないってことは、ひびが入っているかもしれないと言うことなのだろうか?


霧氷むひょうさん、車椅子でって言ったでしょう」

「あぅ」


 と、医務室のドアが開いて先生が顔を出す。

 車椅子?


「そんなに悪いんです?」

「打ち所が悪いし、初めての能力による怪我でしょう。本当に、無理はさせないでね、【ソキウス】のリーダーさん」


 確か、この先生の名前は天尼あま音吼ねこだったか。

 背丈だけで言えば中学生かと見間違えるが、医療系の能力を使える数少ない人らしい。


 能力者協会からの派遣、だったかな。

 外傷なら俺も少々は心得ている、というか才能があったが、それも「少々」「外傷」に限られる。


 この先生は、やろうと思えば切断された手もくっつけることが出来るのだと言うからな……。


「大丈夫です、そんな大仰なものは要りませんよ」


 澪雫は、自分が不自由になるのがいやなようだ。

 そもそも、車椅子というものが必要なほど重傷だとは思っていないのだろう。


「何かあればこちらが責任をとりますので、松葉杖をいただけますか?」


 さすがに、嫌々している彼女を無理矢理乗せるのも気が引ける。

 ここは、このくらいで我慢していただくとしようかな。


「そう……? じゃあ、ほかの人たちも治療は出来たから、お大事に」


 と、ぞろぞろと出てくる【ソキウス】のメンバーたち。

 他の人はだいたい腕から手に掛けて包帯を巻かれており、しかしそれも数日で治るだろうとのことだ。


「で、ここからどうするの?」


 最初に口を開けたのは、零璃れいり


「さっき澪雫には説明したけど、烏導先生と王牙さんに呼ばれているんで」

「なら、そっちに行こう。みんなも来るよね?」


 零璃の言葉に、ほかのみんなは間をあけずにうなずく。


「そういうと思った」


 まったく、最高のチームじゃないか。






「おー、来た来た」


 二人の教師は、天王子学園の第1訓練所で俺たちを待っていた。

 二人ともぴりぴりした変な緊張感は感じられず、かしこまった様子も見せない。


「ほかのみんなも、いらっしゃい」


 深淵の森に入ったような深い声。

 それでいて不快な気持ちには全くならず、夜聞いたらすぐにでも眠れそうなリラックス効果を持った、烏導先生の声はやはり聞いていて心地よいものだ。


 俺は取り敢えず、みんなと指定された場所に立ち。

 俺以外の全員には座ってても良いと言われ、特に澪雫には座れと指示される。


「とりあえず……7日の激闘はお疲れさま、だ」


 魅烙は、軽傷も何もなかったため試合が終わると同時に離脱していた。

 そのため、ここにいるのは【ソキウス】にいる人だけだろう。


「それが、まだ終わっていないんですよね」

「ん? ……ああ、ネクサスは明日もあるのか」


 今気づいた、とでも言いたげな顔で王牙はにやりと笑う。

 たぶん、今日ここに呼ばれたのはこんな世間話をするためではないのだろう。


「本題に入ろう。……ネクサス、君は今日【アウェイケスト】になったな?」

「なんですかそれ」

「日本語で【覚醒者】。つまり、覚醒した能力者のことを指す」


 【覚醒者アウェイケスト】、か。

 呼ばれかたが変わるというのも、認められたという気がしてなんだか楽しい。


 うれしい、とも言うべきだろうか。


「とにかく、だ。能力者には尊敬される位置に達したけれど、社会的にはよろしくないんだよな、それが」

「はい」


 それは、俺の父親を見ていたらよく分かる。

 父親は、ああやって世界を救ったからこそ【英雄ヒーロー】なんていう言葉で讃えられているが、一歩間違えたらただの化け物だろう。


「そこで、取り敢えず。君にはこれを付けてもらう」


 彼に渡されたのは、公式試合で配布されたそれとは違う、ある一種のデバイスのようなものだ。

 厚さはまあまああり、しかしそれも腕時計とどちらが厚いかと聞かれれば、腕時計のほうと答えるだろう。


「これは?」

「【アウェイケスト・ギア】。これから、『いつ』『どこ』で『どんな状況』で覚醒をしたのか、監視させてもらう」

まだ説明していないところは伏線になっているところが多々ありますので、お待ちくださいませ。

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