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蒼氷のゼニス  作者: 天御夜 釉
第1部:第3章
100/199

第100話 「カクセイの時」

 魅烙みらくが乱戦の中、男たちをかいくぐって発砲を繰り返していた。

 彼女の銃は本物だ。学園の規定レギュレーションに反しないよう、人を殺すほどの力はないはずだが、それでも当たり所が悪かったら後遺症は残るだろうし、心臓に電気を流しまくったりいろいろやったら人は死ぬだろう。

 一回ぶち込むだけだけでは絶対に死なないけれども。


「出し惜しみ、するのやめた」


 俺は、力なく地面に倒れたままの澪雫みおを見やって、うじうじ考えるのをやめた。

 どうしても、いろいろといいたいことはあったのだけれども。

 出し惜しみもどうかと思ったし、どうしても何か引っかかりがとれたような感覚がしたのだ。


 能力は開花しきっていないが、俺の父親は感情で力を得たのだ。

 それならば、俺が今力を得たとしてもなんら問題はないだろう。


 感情を高めろ。(みんな)を守るという感情と、相手への殺意を。

 そして俺は、【覚醒アウェイク】能力への切符を手に入れる。


「魅烙、3分だけ時間をくれないか」

「了解だよ」


 俺の表情を見たのか、すぐに彼女はうなずいた。

 ちなみに、零璃れいり刑道けいちも、ルナナもすでに倒れていた。


 いや、刑道はルナナを守ることに専念したと考えるべきか。

 周りの床を思い切り変形させ、要塞を作り上げて引きこもっていた。


 その要塞の堅さたるや、筋肉達磨たちが殴ってもひび一つ入らないのだから、すごいものだろう。

 ちなみに俺の氷の茨は、殴れば簡単に破れる。

 が、その変わり腕が茨で血だらけになること不可回避であり、下手したらそのまま戦闘続行が不可能になるかもしれない。


「そういえば、覚醒というのはどんな感覚なのだろう」


 そこから全く分かっていない俺は、しかし自分の炎を燃やし続けた。

 ともしびだったそれは、1分を超えた時点で烈火に変わった。

 烈火だったそれは、2分を超えると豪火へと姿を変える。



 そして、時間通りに、豪火は劫火へと変わりつつあった。

 殺意を抱くなら、本気で相手を殺すまでに抱け。


 誰かを守りたいなら、ほかのすべてを敵に回してでも。

 守り続けろ。


 いつか、小さいころ。

 父親が、母親に内緒で俺に授けた言葉だ。

 インパクトがあまりにも強すぎて、今でも覚えている。


 ずっと憧憬していた、父親の信念。

 今、ここで俺も親父のようになる。


「もう、時間ないよ」


 か細く、切羽詰まった魅烙の言葉が聞こえる。

 あーうん。精神的にもきついだろうね。


「わかった。……」


 俺は、3分たったその時に、確かな何かをつかんだ感覚がした。

 今まで能力を使っていると、絶対何か引っかかりを持っていたのだが今回はそれがない。

 思い通りに、自分の能力を扱える。


 いや、すでに俺のものではなかったのかもしれない。

 しかし、それが俺の力である。


 二つの感情が、一つに混ざり合おうとしていた。

 自分の頭がくるってしまう、なくなってしまうような感覚に反抗しながら、俺は呟く。


「覚……」


 思いを断ち切る。

 俺は俺であり、感情に飲み込まれれば俺ではなくなる。


 俺は俺であり、自分の意思を貫く。


 俺は俺であり、俺のしたいように行動する。


「……醒!」




 その瞬間、俺は光に包まれた。


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