剣と争いと弾幕とそれから
第三回小説祭り参加作品
テーマ:剣
※参加作品一覧は後書きにあります
まえがき、あとがきに書こうと思ったことは活動報告に書いてありますので(多分)是非そちらも。
君は夢というと何を想像するだろう。
憧れの職業? ヒーロー? ロマンチックな恋? そうね、彼だったら『えー……平和に暮らせたらそれでいいよ……』なんて言いそうだわね。私? 私の夢は――――復讐、かしらね。
☆☆☆☆☆☆☆
「痛い痛い痛い痛い!! なになになに!?」
「おはようリン。今は授業中よ?」
そんなわけで隣の女子にいきなり叩き起こされた。叩くと言っても教科書の角という残虐極まりない方法だが。
「だからと言って本の角をつむじに叩きつけることないんじゃないのかっ!?」
「だって先生に起こせと言われたんだもの」
「村正!? さも俺が悪いような言い方をするな!?」
そんなこんなで目が覚めたところで自己紹介でもしておこう。ボクの名前は『小長井鈴乃』。こんな名前でもれっきとした男の子だ。
……そりゃ髪も長いし眼も大きいけど女の子に間違えられるはずがないんだ……間違えられるはずがないんだけど……。
……けほん。ボクは浜松軍事訓練高等学校ってところのHACU科に通う二年生。ここはその名前の通り軍隊に入る人を育成する学校だ。ボクが生まれる結構前は自衛隊って名前だったらしいけどアメリカ軍となんかあって今は軍隊って名前になってる。
やってることはほぼ一緒だけどね。
あ、HACUっていうのはHigh-output Armed Combat Uniform。つまり高出力武装戦闘服の略で『着る戦闘機』なんて呼ばれたりもするけど、要するに人が着て戦うパワードスーツみたいなもの。
戦闘機と同等のスピードを出せる大型バックパック。戦車レベルの強力な武装。搭乗者を守る強固な装甲と全方位シールド。
どうやって動かしているのかは色々と謎だが、製作者いわく『人間の脳の隠された機能がどうたらこうたらなんだよ~!』らしい。
隣に座ってる幼馴染の長い青みがかった黒髪をした『村正・K・片名』に誘われて入ったこの学校だけど、そりゃあもう大変で大変で。別にボク自身は運動は嫌いじゃなかったし嫌じゃなかったんだけど……。
「……っともうこんな時間か。確か次の授業はHACUだったな。気をつけて訓練に励むんだぞ」
「きりーつ、ありがとうござましたー」
『次HACUだぜー?』『知ってるか? 富士の方の学校じゃ生徒全員に量産機が支給されるらしいぞ?』『まじでー!? 俺もそっち行きたかったわー!』『今朝の地震ちょっと大きかったねー』『うん。うちもそれで目が覚めちゃったー』授業が終わってみんなが雑談しているなかボクは黙々と次の授業の準備をしていた。
☆☆☆☆☆☆
「おーっし全員揃ったなー。んじゃ今からHACUの実習訓練始めっぞー」
蒸し暑い訓練用体育館に、軍事訓練科目担当のミニ教師のだるそうな声が響く。
「今日もまず射撃訓練からはじめっぞーHACUは二人組作って交代でまわせー」
鋭そうなほどきれいな黒いツインテールを振って、黒いスーツを着た自称24歳は校舎のほうへと消えてった。
『あちぃ……』って言ってたけどあの人もしかしてサボる気かなぁ……。
「リン。今日も先にやらしてもらっていいかしら?」
「いいよ、ボクは見てるから」
ボクは体操着の方名が体育館倉庫から、練習用に支給されている一般量産型のHACU『AM-Q_02』を引っ張ってくるのをみながら近くの木陰に腰掛ける。
「いつも思うのよね」
「?」
「この射撃訓練用のP90ってショボすぎないかしら?」
ヘルメットの部分の二本の通信アンテナが特徴的なQ_02を装備した方名が、持っているP90をまじまじと見ながらそんなことを呟いた。
「もっとBMGやRPG-7ブッ放ちたいわ」
「発想が危なすぎるわ!」
「ロシア生まれだから当然よ」
「さもロシア生まれが全員危険人物みたいに言うな!」
「あら、ロシアは敗戦国なのよ?」
確かに、十年ぐらい前ロシアは初めてHACUを使った戦争でアメリカに負けている。その戦争ではアメリカは駐屯基地を作るときに街を一個焼いたとか黒い噂もあるわけだが……。
「だからといってロシアの人が悪い人みたいな言い方はないだろ……」
「もしかしたらにっくきアメリカに復讐しようとするテロリスト的な集団がいるかもしれないわよ?」
「ボクはいるとしたら方名以外考えられない」
「よくぞ見破ったわねッ!!」
「そうなのか!? じゃあこれからアメリカ軍と壮絶な戦闘を繰り広げたりするのか!?」
「そんなの三巻でもう終わったわ。最新刊は木星でトラ○ザムバーストよ」
「パクリのうえに劇場版じゃん!!」
ボクと会話しながらも片名はバスバスッと的の中心へ弾を当てていく。
実はこの幼なじみ、HACUの操縦技術が学校一である。
今やっているHACU射撃訓練はもちろん。基礎体力訓練、基礎射撃訓練、基礎戦闘訓練、HACU運用訓練、HACU戦闘訓練のすべての科目がS評価という超天才児なのだ。
「ふむ、さてそろそろいいわね。リン、交代」
「ボクはいいよ」
「やりなさい」
片名がボクの目の前までずいっと顔を近づけてくる。こうして間近で見ると端正な顔立ちが黒髪に映えていてとても綺麗なのがわかる。
「わかったわかった。やるよ」
「うむ、わかったならよろしいっ」
片名はそう言ってぱっと顔を離した。ボクはしぶしぶ片名の外したHACUを着けてP90を的に向かって構える。
なぜボクがここまで嫌がるかというと……。
「ふんっ!」
「はっ!」
「ふっ!」
「ふぁっ!」
「うん。見事なまでに的に当たってないわね」
そう。射撃がとてつもなく下手くそなのである。
☆☆☆☆☆☆☆
「よかったじゃない、今日は一発当たったわよ?」
「よくないよ……このままじゃ進級できないよ……」
「そんなことよりもうお昼ね。屋上行きましょう?」
「そんなことより!? ボクの深刻な将来の問題をそんなことって言った!?」
ボクは訓練が終わり(結局先生は帰ってこなかった)片名と二人でお昼を食べるために屋上を目指して廊下を歩いていた。
その時後ろの方からダダダダーっと廊下を走る音が聞こえてきた。
「ひゅーひゅーおっふたりさーん!! 相変わらずお熱いねェ」
「鳥居、廊下は走るな」
後ろからボクの166cmの肩を掴んできたのは同じクラスの友達『土御門鳥居』だった。
「お前らまた屋上かー? にゃーんかやましいことしてるんじゃないだろうなー?」
「あそこが一番景色がいいんだよ。裏山も見えるし」
「うらやまー」
「なら貴方も来る? 土御門」
「おー。んじゃ購買で何か買ってから行くから先行っといてくれー」
そう言って駆け足で下りの階段を降りていった鳥居を見送りながらボクらは上の階段を上がっていった。
「やっぱ誰もいないねー」
「そりゃあ私がここで自殺した生徒がいるっていう噂を流したからね。来るとしたら物好きの新聞部ぐらいよ」
それはそれっでどうかと思うけど……。
「さ、早くお弁当食べましょう? 山の緑が透き通るような空の青に映えていてとっても綺麗よ?」
「そうだね……ん?」
片名が指した方向を見てみると、山の中腹に赤い鳥居を見つけた(鳥居といってもさっきのアホで変態の同級生ではなく神社の入口の方の意)。
「ねぇ片名、あんなところに神社なんかあったっけ?」
「ん……? あの鳥居のこと? ……なかった、わね。よし、あとで行ってみましょう?」
「うぇ!? い、行くのか?」
「わからないことをわからないままににしとくというのは性に合わないのよ」
「それにしては普通学科の成績低いよね」
「くーるびゅーてぃーの時点で頭はいいのよ」
「そのひらがな文字が既に頭悪そうなんだけど……」
黙ってれば本当にクールビューティーなんだけどね。
「そうと決まれば放課後行くわよ」
「えー……ほんとに行くのか……」
「おーっすただ今戻ってきたぜーい!! って二人してないみてんの?」
「なんでもなーい。さ、みんなでご飯食べよーぜ! 明日の体育祭楽しみだなぁ!」
「そういえば明日って体育祭だったね。忘れてた」
「おいおい鈴、我が校最大の行事を忘れるなんてひどいなー。村正さんは覚えてたよね?」
「ええ、私が唯一と言ってもいいほど活躍できる行事ですもの。忘れるわけがないでしょう?」
「二人共張り切ってるなぁ……」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
そして放課後。ボクはお昼の出来事を忘れて変える準備をしていた。
「さ、行くわよリン」
「行くってどこに……あぁあの神社」
「ささっ、早く行くわよー」
「ねぇなんでそんなに乗り気なの? ねぇってば!!」
☆☆☆☆☆☆☆
「ふぅ……ここね」
「周りの土が崩れてる……もしかして埋まってたのかな……」
夕暮れの山中。さっき屋上から見えた鳥居のとこまできてみると、土で汚れた鳥居と周りには土砂崩れのような跡が広がっていた。
「今朝の地震で崩れて出てきたのかもしてないわね。とりあえず進んでみましょう」
「危なくない!?」
ボクはそう思って方名の手を引いたが方名はこっちの方を振り向いて。
「あら、いざとなったらリンが守ってくれるでしょう? 彼氏なんだから」
にこっと微笑んだ。
…………まぁ、ここでうなずかなきゃ男じゃないよな。ちょっと待ってなんかすごい睨まれてる気がするんだけど気のせい?
「そ、それはそれとしてやっぱり危ないから……『さ、早く行くわよー』って聞いてる!? 聞いてないよね!?」
「大丈夫。男らしくなくても外見通りだから気にしないわよ」
「それはボクにとってはなにもいいことがないんだけど!?」
「ふーん……奥はほこらのようになってるようね。注連縄があるわ」
方名に引っ張られて奥に進むと、確かに太い注連縄がある小さな洞穴が奥の方に見えた。
「え……あ、ほんとだ。もしかしてなんか悪いものが封印してあるとかだったりして……」
「案外そうかもしれないわね。あんなに太い注連縄普通使わないわよ。そうと決まれば逃げるわよ。えんがちょえんがちょ」
「相変わらず自分勝手……わぁっと!」
べちゃっと方名が急に引っ張るせいで転んでしまった。しかもぬかるんでる……。
「あらごめんなさい、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫……。制服は汚れちゃったけど……」
「うち寄ってくかしら? 一人暮らしだしゆっくりできるわよ」
「……シャワーだけ借りて帰るからね?」
「なんだ残念」
そんなわけで、そのあと方名の家に寄ってシャワーを借りて置いてあった自分の着替えを着て帰った。やましいことなんかありませんR15タグついちゃ……ゲフンゲフン。
☆☆☆☆☆☆☆
そんなこんなで我が家に帰ってきた。横にガレージがついた普通の一軒家の扉を開ける。
「ただ……『おかえりリンちゃーーーんっ!!』げふ!? だ、だれ!?」
「むぅ、確かに久方ぶりだけど姉の顔も忘れちゃうの?」
顔をあげると、毛先がカールしたきれいな髪が被さった姉の顔がすぐ近くにあった。
「お、お姉ちゃん……帰ってきてたの……?」
「はろはろ~! リンちゃん大好きな梓おねーちゃんだよー!」
「お、お姉ちゃん仕事は!?『そんなもん可愛いリンちゃんのためならあってないようなものだよ!』いやあるから! 超大事だから!」
そんなわけでこの人がボクの姉でありHACU開発の第一人者でもある、天才変人の『小長井梓』だ。
「とりあえず離れてお姉ちゃん暑苦しい!!」
「ひゃぅん!」
玄関に上がってもなおも張り付いてこようとする姉を振り払ってリビングへと逃げ込む。扉に鍵を掛けてテレビの前のソファーに倒れこむ。
「おかえりーリンちゃん。ってどしたのそんなに慌てて?」
奥のキッチンで料理していたお母さんが心配したようにこっちを向いてくる口調はおどけているがあの母親はいついかなる時でもあんな感じだ。
「はー……はー……なんでも、ない……」
「そう? なら早く着替えてきなーそろそろ夕御飯ができるよん」
☆☆☆☆☆☆☆☆
「あれ、あれ!?」
ボクは二階の自分の部屋に上がって制服から部屋着へと着替えているとこだった。
「リンちゃんどうしたのー!?」
「お、お姉ちゃん……いや、財布落としちゃったみたいで。ポケットに入れておいたはずなんだけど……」
「なんだぁ……どこかで転んじゃったりしたのかなどじっ娘さんめっ☆」
「そんなことっ! ……あ……」
「ん~? 心当たりあるのかなー?」
「べ、別にないっ、あと用事思い出したから後でコンビニ行ってくるっ!」
「財布ないのに?」
「あ……」
「ふふ、どじっ娘さんっ♪ ご飯もうすぐできるみたいだから早く降りておいで~。あ、あとリンちゃんHACUの学校通ってるんだってね?」
「そうだけど……それが?」
「じゃあガレージに持ってきてある開発中のやつ見せてあげようか? 試作段階にあったクイーンの改良機1機貰ったやつにちょっと珍しい改良加えてみたのあるんだけどさー性能がダンチなんだよ!」
「じゃあ今度ね。今はお腹すいた……」
」
そんなわけで着替えて下へ降りるとテーブルにお母さんがカレーを乗っけていた。
「今日はハンバーグ?」
「昨日買った『料理が焦げない・銃弾を寄せつけない・息子を叩いても壊れない』が売りのフライパンつかったんだけどさーやっぱそれがよかったのかなー」
「うん。後半の二つはいらないと思うしそれ関係なく美味しいよ」
『ほんっと嬉しいこと言ってくれるねーこの娘は~♪』と嬉しそうに自分のハンバーグを口に運ぶお母さん。しゃべり方とかそうだけどお姉ちゃんは結構お母さん似だと思う。ボクはお父さん似ってお母さんが言ってた。もちろん顔じゃなくて性格が。
ちなみに父親はボクが小さい頃に亡くなってるからあんまりに記憶にないんだけどね。
ボクの父は軍人だったらしく、例の戦争にアメリカ軍の支援活動ってことでロシアに行ったとき亡くなったって聞いた。その事件をきっかけに当時中学一年生だったお姉ちゃんが防護用戦闘装備としてHACUを開発したらしい。今じゃほとんど戦闘の道具だけど。お姉ちゃんはそこん所どう思ってるんだろ?
「あ、そうだお母さんあとでちょっと出かけるね」
「ん、夜道に気ーつけやー」
そう言いながらお母さんは箸を進める。お姉ちゃんの方を見るとこっちを見てニヤニヤしていたので視線を逸らしてご飯の続きを食べた。
☆☆☆☆☆☆☆
「うー……夜だと余計怖いよ……早く探して早く帰ろう……」
そんなわけであの時のほこらまで財布を探しに来てた。足元は懐中電灯で照らしているけどそれでも暗いのは怖い。片名はあんなこと言ってたし……。。
「えーっと……確かここらへんで……あ、あったあった!」
懐中電灯に照らされた自分の財布を手に取ったときビィンと何かを引っ張った音がした。
「ん? なんか引っ張っ……うぇぇぇええええええ!?」
財布をポケットに入れたあと、後ろから地響きのような音がするので後ろを振り向くとほこらのようになっていたところの中の土が盛り上がってきていた。
「な、ななななななにこれ今のなんか偶然スイッチ入れちゃった的な!?」
地響きが止まりボクは盛り上がってきていたところをじっと見ていた。すると何か取ってのようなものが盛り上がった土から顔をのぞかせているのを見つけた。
「なにこれ……あ、抜けた」
近づいて引っ張ってみると簡単に抜けた。
見るとそれは2mほどの長さの洋刀だった。土から出ていた部分は剣の柄だったみたいだ。
「なにこの剣……ほこらと鳥居は日本のだったけど、これはどう見てもRPGの勇者かなんかが使ってるようなのだし……ま、まさかこれを封印してあったとか……!?」
危ないと思って持っていた剣を登ってきた丘の方へ向かって投げた。
すると、
「いたっ!?」
と小さい女の子ような可愛らしい声が投げた方向から聞こえてきた。
「だ、誰!?」
投げた方向にいた誰かに当たったのかと思ってそっちにいくと、そこには暗い夜が広がっているだけだった。
「ここじゃここ! まったく、やっと起きれたと思ったらいきなり投げられるとは思わなんだ……」
声のした方に懐中電灯を向けてもそこにはさっき投げた剣が転がっているだけだった。
「だからわしじゃ! わし! そこに転がってるやつじゃ!!」
「え、これ!? この剣がしゃべってるの!?」
落ちている剣を再度手に取るといきなり光輝き始めた。
「うわっ!?」
腕で目を隠し光が収まった時に視線を戻すと、
「ふむ、何年ぶりの身体かのぅ……」
白銀のツインテールに白いワンピースを着た幼い少女が立っていた。白くてなんと言うか神々しい、という雰囲気を纏っている。
「お主がわしの封印解いてくれたのじゃな? 礼を言うぞ」
「えぇ!? あ、いやどういたしまして……」
「わしの名は……ふむ、『カレトヴルッフ』とでもよ呼んでくれ。これからよろしくのぅ」
「ぼ、ボクは小長井鈴乃。こちらこそよろしく……ってよろしく?」
「ん? お主が新しいマスターなのじゃろう? ふむ……それにしても新しい主人がおなごとはのぅ……」
「ちょっと待って、ボクは君のマスターなんかじゃないし男だし!」
「む、そうなのか……でも封印を解いたのはお主なのじゃろう?」
「まぁ……そうみたいだけど……」
「だったらお主が新しいマスターじゃ。よろしくの鈴乃。ちなみに封印を解いてしまったのはお主なんじゃから断れんからの」
「そうなんだ……じゃあ、よろしく……カレトヴルッフ?」
「長いじゃろうカレトでよい」
そんなわけで仕方なくボクはカレトと一緒に家に帰っていた。
「ねぇカレト、ちょっと質問してもいいかな?」
「なんじゃ主さまよ」
前を歩くカレトと声をかける。
というか向かってるのは僕の家なのに先に歩いてどうするつもりなのか……。
「カレトってなんで封印されてたの? 昔になんか悪いことしたとか……」
「悪いこともなにもわしは所詮道具。いいも悪いも使い手次第じゃ」
「そっか……でもボクは使わないけどね」
「ふん……ってなんじゃと!? なぜ使わないのじゃ!?」
驚いた表情をこっちに向けてカレトが叫ぶ。
「逆に君をどうしろって言うの!?」
「なんかこう……色々あるじゃろ。ケンカから戦争まで」
「“煙草から放火まで”並みの物騒なキャッチフレーズだよ! ケンカもしないし日本は今戦争してない!」
「なんじゃ、わしが活躍できる世ではなかったのか……少し残念じゃ」
「そもそも今はHACUっていう歳新兵器が最前線を担ってる時代なんだから剣なんて持ってても役に立たないよ」
「むぅ……それはそうと主さま」
「なに?」
「周りのことはもう気づいてはおるのかの?」
言われてゆっくり周りを気にすると、僕とカレトの周りを数人に囲まれていることにやっと気づいた。
前から一人のリーゼントの絵に描いたようなチンピラが歩いてきてニヤニヤしながら僕に話しかけてきた。
「こんな夜中にどこ行くのかなお嬢ちゃんたち?」
「どいてください。今家に帰っているところなので」
「まーまーそんなこと言わずに俺らと遊ばない?」
ボクの肩をリーゼントが掴む。その手を払い除けて無理矢理進もうとすると。
「テメッ……下手に出てりゃ調子に乗りやがって……ッ!」
逆上したリーゼントが拳を振りかぶってきた。ボクは落ち着きながら振り向いて拳を止めようとしたら。
「そこまでじゃ」
リーゼントの拳をさっきの剣の峰で受け止めているカレトがいた。
「うっ!? な、なんだこのガキ!?」
「これ以上続けたければ続けてもいいんじゃぞ。次は刃の部分を使うがの」
「つっ、作り物のおもちゃの剣なんかにビビるかよ! 全員やっちまえェェェええええええ!!」
リーゼントの合図に10人ほどの男が一斉に飛びかかってきた。
「ねぇカレト」
「なんじゃ主さま」
「“ケンカから戦争まで”なんだよね?」
「うむ、言いたいことは分かるぞ主さま」
「殺しちゃダメだからねカレト?」
「Yes,myrord」
「どこの〇執事!?」
「一度言ってみたかったんじゃこれ~……っとと、主さまは伏せておれッ!!」
言われた通りに伏せると、カレトはものすごい速度でくるっと一回転しながら持っていた剣をぐるりと振り回した。
「ふぅぅんッ!!」
すると竜巻のような強烈な風がグァァっと巻き起こった。飛びかかってきた人はことごとく吹き飛ばされ塀や電柱に激突したりで気を失っていた
「ふぅ、リハビリにはちょうど良かったかもじゃのう」
剣を肩に担ぎながらカレトは息を吐いた。よく見ると剣身に金色に輝く2匹の蛇が彫られている。もしかしたらカレトはどっかの貴族が使っていた有名な剣とかなのかもしれない。けどカレトヴルッフなんて聞いたことないしなぁ……明日ググってみるか……今日は色々と疲れた。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「ほー君ちっこいのにやるねー!」
「はっはっは、あの程度なんでもなかったわ」
カレトを連れて家に帰ってきていた。母さんには『不良に絡まれてたところを助けてくれた子』ってことで説明してるけど、終始ニヤニヤしてるしどうだろうか。今は母さんがカレトを泊めてくれることを許可してくれるかだけど……。
「別にいいわよ~?」
「なんで心読んでるの!?」
「なっはっはっはー! いったい何年あんたの母親やってると思ってるのよ! ささ、二人共もう寝んしゃい」
そんなわけで二人で寝室に向かっていた。階段を上る途中ふと思い出した。
「そういえばカレトが封印されてた理由て聞いてないよね?」
「あ、そうじゃったのう。簡単じゃ、強すぎただけなのじゃよ」
部屋の扉を開けながらカレトの話を聞いていた。
「悪いことしたとかそういうんじゃなかったの?」
「少なくともわしはそのつもりはなかったの。問題は前の主人が何をやっていたかじゃな。ただ、悪いお人ではなかった……」
「そっか……ちなみにボクの前にはどんな人がいたの?」
「5人いたが、全員とも善い人じゃった……そもそも性格が悪いやつの下になどつかぬ……お主も、そういう人じゃと……すぅ……すぅ……」
そんなことを話しながらカレトはそのまま寝てしまった。カレトはこれからどうするのだろう。これからもここに住むのかな。ボクのことをマスターって呼んでたくらいだし。これからの彼女のことを考えてボクも寝た。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「――――い。――――――おい」
ん……?
「―――じゃ――! ――きるのじゃ――!」
誰かが、ボクを呼んでる……?
「起きるのじゃ主さま!!」
「げふぅ!?」
目を開けるとボクの上に馬乗りになって体を揺すっているカレトがいた。
「か、カレト? なに、まだ学校の時間じゃないはずだけど……」
「いいから下に降りてテレビを見るのじゃ!!」
言われた通り着替えずにそのままリビングに行くと、母さんが台所で食器洗いをしていてお姉ちゃんがが心配そうな表情でテレビを見ていた。ボクもテレビを見るとそこには自分の毎日通っている学校が映っていた。
「え、え!? な、なんで!?」
「戦争で負けたロシアの反乱軍が占拠したと先ほどレポーターが言っとった」
「そんな、なんでボクの学校を……!? それにまだ誰もいない時間じゃ――ッ!?」
そうだ、今日は体育祭の準備で投稿時間が早かったんだ……!?
「それはー……一応軍事施設だし……」
お姉ちゃんが言いづらいことでもあるのか目を合わせないように顔を俯かせてしまう。
「ど――」
うしたの。と聞こうとした瞬間。
「片名ちゃんだって」
とぅっと無言だった母さんが手を止めることなく口を開いた。
「なにが……?」
「村正・K・片名。ロシアと日本人のハーフで同学校に在籍する少女。幼少期はロシアで過ごしており戦争で両親も失っている。アメリカ軍からの信頼できる情報によりこの少女をこの事件の首謀者と断定。銃殺許可も降りててアメリカ軍のHACUも出動しているわ」
「なっ!?」
「さっきそのニュースで言っていたことよ」
母さんは無表情のままカチャカチャと食器を洗い続けている」
「そんな……片名がそんなことするはずない!!」
「ホントにそう思うの? 動悸も実力も十分――――『うるさいッ!!』……!」
「片名は……優しくて、綺麗で、少し毒舌だけど……それでもボクの世界一大好きな彼女なんだ!! 片名のことを悪く言うなら母さんだって許さないッ!!」
ボクは後ろ向きの母さんに向かって拳を振るいゴィィィンという硬い金属音がした。
ていうかフライパンだった。
「いったぁぁぁあああああ!!??」
「ふーん、そんな外見で言うことだけはいっちょまえだね。そう思うんだったらさっさと行ってきな」
「そんなに言うんだったら直接本人に聞いてくればいいじゃないか。梓今HACU持ってるんだろ?」
「え、ふぇ!? あ、あれはまだ調整段階だし実験用の機体だからかなりピーキーな性能だし……」
「そのぐらいいいハンデだ。だろうリン?」
「う、うん……ボク行くよ。お姉ちゃんその機体貸して」
「ッ! …………わかった」
☆☆☆☆☆☆☆
「これが昨日言ってた新型機『AM-Q_03(ショットランサー装備型)』だよ」
「ショットランサーって……近接武器!?」
ガレージにあったのは普通のQ_02と違い肩部、バックパック、脚部に増設されているスラスターとバックパックについている大型タンクだ。手には槍の中に小型の機関銃を入れた近、中距離用装備だ、ショットランサーが装備されていた。
「そう、元々の性能が高いQ_02の機動性と運動性能をアップさせた03型に高速接近戦闘用に格闘武器を持たせたんだよ」
「でもHACU戦の重武装の前じゃ近づけないから近接武装は意味ないって……」
HACUは基本重武装のためHACU同士での戦闘は基本長距離からの弾幕戦だ。その為格闘武装は装備していないのが基本なのだ。
「でも機動力を大幅アップした03型ならいけるんじゃないか。って話になって試しに作ってみようってことになったのがこのショットランサー装備型なの……。でもやっぱり無謀すぎるよ……」
「大丈夫お姉ちゃん。どうせいい武装を装備してたってボクの腕じゃ当たらない。まだこっちのほうが勝ち目があるよ」
「リンちゃん……」
心配そうなお姉ちゃんの顔を見ながらボクは03を装着していく。
「主さま!!」
「カレト!? 何しに来たの!?」
「無論ついて行くに決まっているじゃろ! 主さまのふぃあんせを助けに行くのじゃろう!?」
フィアンセて……母さんだな。違うわけじゃないけどさ……。
「カレトちゃんってカレトヴルッフで合ってるんだよね?」
「そうじゃ」
「それじゃあもしかして剣の精とかそんなの?」
「うーん……? ま、まあそんな感じじゃ」
お姉ちゃんがふむうむと頷いている……何なんだろう?
「リンちゃん、この子も連れてきなさい。カレトちゃんは元々の姿に戻れる?」
「? こうかの」
そう言うとカレトは昨日見た2mの剣に戻った。
「これで……連れてけって……?」
「うん。03型とのコンセプトとも合ってるし。さあ早く行ってきな!!」
ボクは言われた通りに腰についてるビームピストルをホルスターから外して代わりにカレトを差し込む。
「……うん! 行ってらっしゃいリンちゃんカレトちゃん。絶対に生きて帰ってきてね。じゃなきゃおねーちゃん怒っちゃうんだから」
「……わかった。いってきますお姉ちゃん」
少し物騒な行ってきますを言って空へ飛んだ。
『新しい主さまとの最初の戦が空中戦とはのう。これはちと感情が高ぶる」
「カレト。周りを頼んでもいい?」
『そんなものお安い御用じゃ。上も下も右も左も後ろも任せておけ。主様は前だけ見ていれば良い』
「見えたよ」
いつもなら自転車で15分かかる距離を今日は30秒で到着する。いつもこんなのなら遅刻なんてないんだけどなぁなんて少し考えてしまうが今は目の前のことに集中する。
「校庭は人でいっぱいだな……裏門から入ろう」
音を出さないように気をつけながら裏門へ向かうと案の定誰もいなかった。僕はそこでカレトの剣化を解く。
「侵入は成功したがまずはどうするのじゃ主さま」
「人質の開放が最優先で行動しよう。いいね」
「Yes,mylordじゃ」
悪いが今は突っ込んでる暇はない。急いで二手に分かれて人質の場所へ目指す。途中見張りもいたがショットランサーを横に振るい壁に叩きつける。
「テレビの情報だと確か三階のだ理科室って……着いた」
中をチラッと覗くと向かいの壁際に二人窓のところに三人……よし行ける!
一旦2階に行き理科室の上の部屋から飛び降りて下の窓ごと近くの見張りを蹴り飛ばす。
「っ!? な、なん――ガハッ……!?」
「ごふ……っ!」
壁際の二人もとっさのことで驚いてる隙にショットランサーでなぎ払って壁に叩きつける。
「鈴!!」
「鳥居! 無事だったか。片名は!?」
「村正さんなら別に連れてかれたけど……大丈夫なのか?」
「あぁ、もう一つの方は信頼できるやつに任せてあるから」
「そうか……気をつけろよ鈴。こいつらアメリカ軍の人間だ」
「なんだって!?」
とその時理科室の扉がバンっと開かれカレトが入ってきた。
「こっちも人質を逃がしたがあの片名とかいう娘はいなかったぞ!」
「ッ!? 別のところで一人で捕らえられてるのか?」
「だったら体育館が怪しいんじゃないか? 連中最初あそこに潜んでやがったんだ」
「ありがと鳥居。カレト行くよ!」
そしてボクは来た道を戻り駆け足で体育館を目指した。
「無事でいてくれ片名……ッ!!」
☆☆☆☆☆☆☆☆
出てくる兵士を斬り伏せながらようやく体育館へ着いた。
「片名っ!!」
叫びながら体育館の重い鉄製の扉を吹き飛ばす。
そこには、
「あ……あ、あ……」
体育館の中央で赤い池の中に沈む少女の姿があった。
「かたなァァァァあああああああああああああああああああ!!!!!!」
手に持っている得物をかなぐり捨て倒れている片名のそばへ近寄る。
「片名っ! かたなっ!!」
「ひどい……このまま血を流し続けたら出血多量で死んでしまうぞ! 早く治療しなければ……」
必死に呼びかけるも彼女の体は浅い呼吸を繰り返すだけで何も反応しない。カレトは自分の服を破り傷口を塞ぐがその布もみるみるうちにじわぁと赤く染まっていく。
「君が小長井鈴乃か……」
急に聞こえてきた声に驚いて体育館の壇上を見上げるとそこには背の高い軍服を着ている男が立っていた。
「私はこの事件の首謀者を捕まえに来た軍の者だ。そこにいる村正・S・片名の身柄を引き渡していただきた――ッ!!」
ボクは投げ捨てたショットランサーを持ち直し男に機関銃を男に乱射するが余裕でかわされる。
「お前らの……お前らのせいでーーーッ!!!」
片名をカレトに任せブーストを全開。ショットランサーを抱え一気に突っ込む。
「ふん、近接装備とは。……やれ」
男の合図に反応して両端から出てきた2機の金色の無人HACU『AF-912_00』が持っていたマシンガンを掃射してくる。
「……ッ!!」
SBに守られて直接のダメージはないがそれでも衝撃に揺さぶられて片名のところまで吹き飛ばされる。
「主さま!!」
「ハッハー!! 確かにィ? この学校を占拠したのは俺たちだがその女だって似たようなもんだぜェ……?」
男が高らかに笑いながら片名の方を蔑んだ目で見ている。
「IGLOO。ロシアの反アメリカ組織、ようするにアメリカに復讐しようとするテロ組織だ。そこのクソ野郎はそこのボスなんだよ!!」
カレトに抱かれてこちらからは顔は見れないがもしかしたら、泣いているのかもしれない。
「…………ごめん、なさい……」
「片名……?」
「ずっと……だまっていてごめんなさい……。いつか言わなきゃと、思ってたけど……ごめんなさい……」
ボロボロと泣きながらしゃべる片名。肩は震えからだもぐったりしている。もう手を上げる力っすら残っていないといった感じだ。
「ギャハハこいつ自白しやがった!! おいお前ら! こいつを連れてけ!!」
金色の912がキシュン、キシュン……とこっちに近づいてくる。
「ごめん、ね……ありがと。あなたと一緒にいた時間、とても楽しかった……」
片名……。
近づいてくるHACUを無視して片名を抱きしめる。と、その時。
「のう、主さまよ」
声が聞こえた。
「お主はその娘を愛しているんじゃなかったかの?」
それはとても幼くて。
「だからここまで来たんじゃなかったかの?」
凛としている。
「それをこの程度の障害で諦めるのか? わしのマスターはこの程度の男だったのか?」
そう言いながらカレトは歩いてくるふたりに向かって剣を抜く。
「そなたが諦めないのならわしは本当の力をお主にかしてやる。さぁ、鈴乃よどうする!!」
ボクは……ボクは……ッ!!
「ボクは片名を守る! 片名を守って、こいつらを倒したい!!!」
ボクは力の限り叫んだ。前ではカレトがこっちを向いてニヤッと笑っている。
「それでこそわしが惚れ込んだ主さまじゃ!! いくぞ……ッ!」
そう言うとカレトはすぅぅと息を吸い込んだ。
「汝よ! 我、約束の剣と契約すること誓うか!!」
「誓う……ボクは、力が欲しい!!」
叫ぶ。喉が張り裂けそうなほど叫んでカレト……エクスカリバーの隣に立つ。
「ならば抜け!! そして目前の敵を這い蹲らせてみせよ!!!」
「な、なんだぁ!?」
とてつもない光を放つエクスカリバーに手を突き刺す。そして抜く。
「ボクは……もう諦めないッ!!」
その瞬間僕が持っていたのは、白く丸い柄、握る手を守るかのように浮かぶに匹の蛇を模した角張った鍔、そして、
「なんだあの剣。刀身が……粒子、いや、ビームでできているだと!?」
「うぁアアアアアアアア!!!」
エクスカリバーを力の限り横薙ぎに振るう。912も危険を察知したのかSBの出力を高め防御のたいせに入るが。
『ンなもん……意味あるかァァァあああああああああ!!!』
ズッ、バァァァアアアアアアアアアア!!! とSBに当たった瞬間少しだけ止まったが、そのまま引っかかることなく二機を真っ二つにした。よく見るとビームの部分がとてつもなく長く伸びており壇上の下の部分までもを切り裂いていた。
「なっ、なんだこれはっ!!?? 聞いてない聞いてない聞いてない聞いてない聞いてないキイテナイキイテナイキイテナイキイテナイ!!」
ボクは剣を握りなおし。上から落ちたまま腰を抜かしている男の方へと少しずつ近づいていく。
「ヒッ……! わ、わかった! もう帰る! おっ、大人しく帰るから!!」
そして足元までたどり着き――――――剣を――――
「やめ、なさい」
剣を振り下ろそうとした瞬間。後ろから声が聞こえた。
「片名……なんで――」
「貴方まで、私と同じものを背負って欲しくない……望んでようが、望んでいまいが、人を殺めたら、そこからその人生は変わってしまう……あなたにはそうなって欲しくないのよ……」
片名はよろよろと立ち上がりながらこちらに歩いてきていた。足元を見ると下にいた男は白目をむいて気絶してしまっている。
「あなたは……大切な人だから……」
そして後ろまで来ていた片名に抱きしめられた。気配がして横を見ると昨日と同じ白いワンピースを着たカレトが立っていた。
「何も殺すことが戦争ではない。その娘の言うとおりじゃ。……わしはお前さんのような人を何人も見てきた」
「片名……ごめん、ボク……」
「いいの、私もずっと黙っていてごめんなさい……」
「確かに、それは少し怒ってる」
「だったら……!」
「だからこれでチャラね」
そう言ってボクは片名に唇を重ねた。隣でカレトが頭に手を回しなながら『ひゅー♪』と口笛を吹いた。明るい日の日差しが差し込む体育館でボクらはしばらく抱き合っていた。
☆☆☆☆☆☆☆
「片名は……これからどうするの?」
「……もうすぐ私の組織の回収部隊が来るわ。外じゃ私の指名手配は決定されてるみたいだしそれと一緒に行くわ」
「そっか……元気でね」
「へーテロリスト集団のトップに元気でねって送っちゃうわけ?」
「片名は……本気で復讐しようと思ってるの……?」
「ええ」
片名は一瞬で頷いた。
「私は私の故郷を燃やしたアメリカ軍を許さない。私の両親を殺したあの人たちを許すつもりはない」
「いつかボクが止めに行くかもよ?」
「あら、万年HACUの成績Eだったあなたが私に勝てるとでも?」
「もし勝てたら復讐なんかやめて一緒に暮らそう」
「……それちょっとずるい」
うつむきながら顔を赤く染めてこっちを上目遣いでじとっと睨んでくる。正直めっちゃ可愛いだけ。
後ろを見ると入り口のところに黒服の人たちが立っていた。あれが片名の仲間だろうか。
「それじゃあ行くわね」
「あぁ。木星でのクア〇タムバーストはいつになるんだろうね」
「ふふっ、いつかできるといいわね。リンのお姉さんに今度言っておいてよ」
「わかった。じゃあまたいつか会おう」
「ええ、いつか必ずあいまみえましょう」
そう言い残して片名は黒服の方へと歩いて行った。
ボクもみんなのところへ行かないと。そう思って歩き始めると、
「おーーいリーン!」
と片名から呼び止められた。
「次のデートは来週の土曜日3時に駅前に集合でいいかしらーー!?」
「さっきのいつかはどこいったの!?」
☆☆☆☆☆☆☆☆
後日談というか今回のオ――――けほっ、なんでもない。
あのあといろんなことがあった。学校占拠事件の立役者として警察から事情聴取を受けたり、クラスのみんなから片名の行方夜市県のことを聞かれたり、テレビ局から取材が来たこともあった。
結局あの事件は村正・K・片名とつながりを持ったアメリカ軍一派の暴走ということで落ち着いた。あれからあの人たちがどうなったのかは知らないけど、まぁ元気にはしてないだろうな。
今僕がいるのは富士HACU指導学校だ。全世界の中でHACUに関する教育機関の最高峰と言われる学校に僕は来ていた。実はあのあと半壊した学校に住めるわけはなく、みんないろんなところへ散らばっていったのだがな、例の事件の活躍が認められただとかなんか知らないけど僕だけがこの学校へ来た
来てしまった、かもしれないけど。
「ほー……えらくおおきい学校じゃ……。のう主さま?」
もちろん、カレトと一緒に。
「うん、HACUの教育最高峰の学校だからね」
「そんなところで主さまついていけるのか?」
うーん……難しだろうしいきなり入っていた転入生だしクラスメートとも色々あるだろう。
けど。
「ひとまず週末のデートのために頑張るとするよ!」
作者:靉靆
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