新田 まみの場合
舞台は住宅街にひっそりとある喫茶店。そこはこじんまりと小さい喫茶店。店員は、店長と社員が1人とアルバイトが3人いるのみの喫茶店。
舞台は住宅街にひっそりとある喫茶店。そこはこじんまりと小さい喫茶店。店員は、店長と社員が1人とアルバイトが3人いるのみの喫茶店。
そんな喫茶店で働くもうひとりの女の子のお話。
「・・・・・・おはようございます」
「おはよう、まみちゃん!」
「おはようございます、新田さん。着替えたら、入り口周辺の窓拭きをお願いしても?」
裏口から入ってきた女性に、今日子が食器を拭く手を止めて挨拶をした。店長も同じく、何かを書き付けている手を止めた。新田 まみと呼ばれた女性は軽く会釈をして、音も立てずに階段を昇っていった。
「まみちゃん、相変わらず無口ですねー」
「そうだね」
接客業としてそれはどうなのかとも思うが、そもそも客がめったに来ないので特に誰も気にしていない。それに、大体の接客は今日子がやってしまう。
「でも、まみちゃんの書くメニューボードかわいいんですよね。本当に可愛い〜ほしい〜」
「あげられませんよ。でもたしかにかわいらしいですね。さて、印刷してきますね」
「はーい」
店長が事務所へ去るのを見送り、今日子は食器を拭く手を再開させた。すると、いつの間に戻ってきたのか、新田が
「あの、窓・・・拭いてきます」
「あ、お願いします」
洗剤と乾いた布を片手に正面の入り口へ向かう新田を今日子はボーっと見送っていた。その後頭部を後ろからパコンと叩かれた。
「何をサボってやがる」
「げ・・・・・・!柳本さんじゃないですか。別にサボってませんよう」
「ったく、これじゃあ新田とお前、どっちが年上だかわかんねぇな」
実は今日子のほうが新田よりも2歳年上である。新田が大人びいているというよりも、今日子の言動が子供っぽいために、年齢を逆転して見られるのだ。数少ない常連のお客さんも同様である。今日子がむっと頬を膨らませて柳本に抗議するが、あっさりと流されている。
「そんなことよりお前、さっきすっげぇ気持ち悪い顔してたぞ」
「きも・・・・・・!?どんな顔ですか!」
「ストーカーみてぇ」
「ストーカーって・・・そもそも柳本さんストーカーにあったことあるんですか?」
「なかったら言わねぇよ」
「それは・・・ずいぶんと人を見る目がない女性で・・・・・・痛い痛い!!だからそういうところが・・・・」
「うるせぇ。んで、なんで気持ち悪い顔してたんだ?」
「まだ言う・・・」
今日子はぐすんぐすんと涙目になりながら理由を説明する。
「まみちゃんが可愛いなーと思って」
「はー?新田に愛想があるかっつうとなぁ・・・ねぇだろ。まあ、お前は学習能力がないけどな」
「最後の一言関係ないですよね。そしてズバッといいますね」
「俺は嘘はつかん」
きっぱりと言い切る柳本を無視し、今日子は言葉をすすめる。
「まあ、まみちゃんは基本無表情ですからね。でもさっき店長とメニューボードのデザインがかわいいかわいいって言ってたんですよ。多分それ聞かれてたんでしょうね。窓拭きに行くとき、耳が真っ赤だったんです。それが可愛いなぁって。可愛いなぁ・・・」
「きも」
柳本が言い切る前にガツンと足を踏まれた。首根っこを掴まれそうになったがひらりとかわし、客席のほうへ駆けていく。
「川村さん来たので、お相手してきまぁ〜す」
「キャバクラか!」
「柳本くん、うちは喫茶店であって、決してそういう店では・・・」
「知ってますよ」
事務所から戻ってきた店長にたしなめられるのをかわし、豆を挽く作業をする。ちらりと客席を見れば、初老の男性に元気よく話しかける今日子と、それに付き合わされる新田がいた。新田は少し困ったような顔をしていたが、今日子が何か話しかけると、かすかに口をほころばせた。
「あー・・・わからんでもないか」
ただ、あいつ・・・たまに誰もいないのに挨拶したり、入り口に塩盛ったりするんだよなぁ。
おにゃのこ2人目。女の子大好きなんですけど、キャラ設定がまだ2人しかいない・・・。これから増やしていきますね^^