はじめての実感
第二十五話では、莉奈が自分で選んだ安心を初めて試してみます。
小さな経験ですが、莉奈にとっては大きな一歩です。
第二十四話の夜。
莉奈は自分の部屋にいた。
机の上には、今日ドラッグストアで買ったばかりの袋が置かれている。
自分で選んだもの。
紗奈たちに相談しながら決めたもの。
不思議な気持ちだった。
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「本当に買っちゃったんだな……」
莉奈は小さく呟く。
少し緊張する。
少し恥ずかしい。
けれど興味もあった。
今日一日、紗奈たちの言葉が頭から離れなかった。
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しばらく迷った後、莉奈は決心する。
「せっかくだし……試してみようかな」
誰に言うでもなく呟いた。
初めてだから少しぎこちない。
それでも慌てずに準備する。
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数分後。
莉奈は鏡の前に立っていた。
変な感じがする。
今まで経験したことのない感覚だった。
思わず苦笑する。
「なんだか不思議……」
けれど嫌な気持ちはしなかった。
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旅行の待合室を思い出す。
あの日の自分は不安でいっぱいだった。
どうしていいのか分からなかった。
一人だった。
何も準備がなかった。
でも今は違う。
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莉奈はゆっくり息を吐いた。
肩の力を抜く。
そして――
じゅわぁっ……
静かな部屋。
聞こえるのは時計の音だけだった。
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莉奈は少し驚いた。
けれど慌てなかった。
不安もなかった。
ただ不思議な感覚だった。
「……そっか」
小さく呟く。
「こういうことなんだ」
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もちろん恥ずかしさはある。
まだ慣れない。
でも、あの日の待合室で感じたような強い不安はなかった。
備えがある。
そのことが思った以上に心を落ち着かせていた。
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ベッドに腰掛ける。
窓の外には夕暮れの空が広がっている。
スマートフォンを見ると、四人のグループチャットに新しいメッセージが届いていた。
美咲だった。
「次のお出かけ楽しみ!」
思わず笑う。
悠斗も返信している。
紗奈もスタンプを送っていた。
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莉奈は画面を見ながら思う。
少し前の自分なら、出かける前から不安ばかり考えていた。
けれど今は違う。
楽しみだと思える。
それが嬉しかった。
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「まだ慣れないけど……」
莉奈は小さく笑う。
「少しだけ分かった気がする」
安心とは、不安がなくなることではない。
前を向くための準備なのかもしれない。
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しばらくして、莉奈は着替える。
今日は試してみただけ。
それでも十分だった。
初めて自分で選び、
初めて自分で確かめた。
その経験は、莉奈の中に小さな自信として残った。
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部屋の灯りが優しく照らしている。
莉奈は静かに窓の外を見つめた。
今日踏み出した小さな一歩。
それは誰にも気付かれないほど小さいかもしれない。
それでも確かに前へ進んだ一歩だった。
そして次のお出かけの日は、少しだけ楽しみの方が大きくなっていた。
第二十五話のテーマは「実感」です。
知ることと、経験することは違います。
莉奈は初めて、自分なりの安心を少しだけ実感することができました。
その小さな一歩は、これからの成長につながっていくのでした。




