はじめての計画
第十五話では、大雪の旅行を乗り越えた三人が次の旅行の計画を立てます。
今回のテーマは「旅の始まり」。
出発の日ではなく、その前のわくわくする時間を描きます。
大雪の旅行から数週間後。
紗奈はいつものカフェへ向かっていた。
窓から差し込む午後の日差しが暖かい。
今日は美咲と悠斗と会う約束をしていた。
店に入ると、美咲はすでに席に座っていた。
「おはよう!」
「こんにちは」
紗奈は笑顔で席に着く。
しばらくすると悠斗もやって来た。
「すみません、お待たせしました」
「全然大丈夫」
美咲が手を振る。
三人は飲み物を注文した。
しばらくは近況報告だった。
仕事の話。
最近見た景色の話。
旅行から帰った後の話。
穏やかな時間が流れる。
その時だった。
美咲が突然身を乗り出した。
「ねえ!」
紗奈と悠斗は顔を上げる。
「次はもっと大きな旅行しない?」
「大きな旅行?」
紗奈が聞き返す。
「そう!」
美咲は嬉しそうに頷いた。
「今度は二泊三日くらい!」
紗奈と悠斗は顔を見合わせる。
思わず笑ってしまった。
美咲らしい提案だった。
「楽しそうですね」
悠斗が言う。
「でしょ?」
美咲は得意そうだった。
紗奈も少し考える。
以前の自分なら不安の方が大きかっただろう。
旅行の日程。
移動時間。
準備するもの。
考えることはたくさんある。
けれど今は違った。
不思議と楽しみの方が大きい。
「いいかも」
紗奈が言う。
「本当?」
美咲の顔が明るくなる。
「うん」
紗奈は笑った。
その様子を見て悠斗も頷く。
「僕も賛成です」
それで決まりだった。
三人はスマートフォンを取り出す。
行き先候補を調べる。
海の見える町。
温泉地。
歴史ある街並み。
どこも魅力的だった。
「ここ綺麗!」
「この景色いいですね」
「食べ物も美味しそう」
話はどんどん盛り上がる。
気が付けばメモには候補地がたくさん並んでいた。
宿泊先も調べる。
移動手段も考える。
誰も急がない。
誰も無理をしない。
三人で相談しながら決めていく。
その時間がとても楽しかった。
紗奈はふと思う。
第一話の頃の自分なら考えられなかった。
旅行前に不安ではなく楽しみを感じている。
それだけで大きな変化だった。
窓の外を見る。
柔らかな午後の日差しが街を照らしている。
「今から楽しみだね」
美咲が笑う。
「うん」
紗奈も頷く。
「楽しみですね」
悠斗も笑った。
まだ出発していない。
何も始まっていない。
それなのに心が少し温かかった。
次の旅は、きっと楽しい。
そんな予感がしていた。
第十五話のテーマは「楽しみにできること」です。
第一話の紗奈は、旅行の前に不安ばかりを抱えていました。
しかし今は違います。
美咲と悠斗という仲間がいて、一緒に計画を立てています。
安心とは、不安をなくすことだけではありません。
未来を楽しみにできることも、きっと安心の一つなのです。




