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【短編小説】襟巻き

 なんだって年始の忙しい時期に出頭を命じるのか、やはり愛護団体の奴らは性格が捻じ曲がっているに違いない。

 おまけにこの寒気だ。

 バス停まで来たものの、帰りたさが募る。

 愛護団体の奴らにも似た陰険な北風に巻かれて思わず背中を丸めたとたん「あら、素敵な襟巻きね」

と後ろから声をかけられた。

 振り向くと、荒川下流域東部と言う治安がよろしくない土地ではあまり見ないタイプの上品な身なりをしたご婦人が立っていた。


 見るに、同好の士である。

 ご婦人の首元にも毛並みの立派なミンクが巻かれていて、黒く光る目が美しい。

「お姉様も出頭ですか?」

「いやだわ、お姉様だなんて。もうお婆ちゃんよ」

 満更でも無さそうなご婦人が振る手に合わせてミンクも嬉し気に揺れる。

「しかし愛護団体の奴らも、こんな年始に呼び出すことも無いですよね」

 肩をすくめた私と一緒に、うさぎの襟巻きが跳ねた。


「全くよ、もう。わたしのミーちゃん……あ、このミンクね、お家が大好きだから今日みたいな日は大変で」

「ああ、分かります。うちのも同じですよ、餌で釣るのにも限度がありますもんね」

 わたしもウーたんの頭を撫でながら同意する。

「そうなのよ、おやつに慣れちゃうとなかなか巻かれてくれないから」

 ご婦人が愛おしそうにミーちゃんの頭を指でくすぐると、ミーちゃんは眠た気な目で応えた。


 凶悪に捻じ曲がった北風と同じタイミングで、ロータリーをバスが回ってくる。

「あぁ寒い」

 ご婦人はミンクのミーちゃんをぎゅっと合わせた。

「やっぱり生きてるのに限りますよね。生体確認の出頭は面倒ですけど」

 わたしがウーの頭を指で掻くと、ウーは甘噛みして返した。

 その暖かさが心地よい。

 やはり生きてると愛おしさが違う。


 バスがプシューと大きな音でドアを開くと、ご婦人のミンクとわたしのうさぎか同時に頭を上げて鼻をひつくかせた。

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