七行詩 二篇 (「飼っていた猫を抱いて~」ほか)
○
飼っていた猫を抱いて海までやって来た
彼女はたぶん自由になりたかったのだろう
たった一日で旅立ったのだから
だが、私もそれで良かった
何をしてやればいいのか分からなかったから
彼女を砂浜へ軽く投げ落とすと真っ黒な穴があいて
そこに真っ直ぐに落ちていった、ごきげんよう
(20200311)
○
ミノタウロスは恋人を背負っていると思い込んでいたが
それは彼への生贄だった
両手足ともだらんとなっていて
頭のてっぺんは潰れて血塗れになっている
彼は彼女を恋人だと思い込もうとした
なぜ彼女を生かさなかったのか
その答えは滴る血と共に流れ出してしまっている
(20200311)