起承転結は『今』に合わないのか?
時代と共に変化するのは、題材だけではないのだという驚きを、書き残しておこうと思いました。
『起承転結を意識することが重要である』
読みやすくて面白い物語を書く人は、この法則をしっかりと使いこなしているのだと思います。
分野に関係なく、この法則に従って進めることは、安心感にも繋がるのだと感じます。起承の部分よりも転結が急展開して、一気に終わるようなモノもあるでしょう。舞台などは、そんな印象です。
起承転結は、今のスピード社会には合わない、という話を、創作とは別の場面で耳にしました。起・承・転・結ではなく、承・結・起・転が好まれることもあると。
その話から、某小説Webサイト(なろうではない)でラノベを読んでいる友達が、ラノベも同じことになっていると言ったことに、私は衝撃を受けました。
友達には、私が物語を書いていることは知られてないし、彼女は、なろうをあまり読んでないから、バレる危険はないはずですが、私の挙動がおかしかったのでしょう。彼女は、私の挙動不審な態度に気付き、異議があると捉えたようです。
「ナギ(←私の呼び名の仮称です)は、ラノベを読まないから知らんねんて。イマドキの若者って、タイパ重視やん?」
「ええ〜っ、読まないわけでもないけど」
「あー、○○さんと一緒で、小説家になろうでアニメの原作を読んでるんやったっけ?」
なろうの名が出ただけで、ギクリとした私。でも、バレてないはず。ドキドキしすぎて、店のドアが開いたときの寒さも感じない中で、必死に平静を装いました。
「うん〜、そうね、読んだことあるよ〜」
すると彼女は、怪訝な表情……。私のドキドキは激しくなっていきました。もしかしてバレてる? なぜ突然、なろうの話が出てくる?
ほんの数秒の沈黙をとても長い時間に感じつつ、私の頭の中は、超高速のフル回転。
「なんか、隠してるん?」
「な、何も隠してないよ」
また、沈黙……。これは、やばい。私の目は泳いでいたのでしょう。なぜバレた? 私は、記憶を必死に探りました。リアルの友達には話したことがないのに……。
「なんで、急に関東弁なん?」
「えっ? えーっと?」
私の言葉のイントネーションが、非常事態になっていたようです。どうごまかそうかと慌てていると、彼女はニヤリと微笑み、なぜか頷いていました。
「関東弁の彼氏でもできたんやな?」
「はぁ? なんでそうなるん?」
「ま、別にええけど〜」
バレてない! 私が明らかにホッとした顔をしたのか、彼女はまた怪訝な表情。これは何か鋭いツッコミが来る、と身構えた瞬間……。
「お待たせしました〜」
私達のカウンター席に、サラダが届きました。彼女の関心は私から逸れ、メニュー写真より豪華に見えるサラダの撮影が始まりました。私は救われた。店員さんは、神っ!
「私は、順番が前後する話は、嫌いやけどな」
サラダが減っていくと、彼女の話題は、起承転結に戻ってしまいました。神は、近くにはいない。だけど、まだ注文している料理はあると、心を落ち着け、彼女の話に、ふんふんと相槌を打ちました。
「そう思うやろ?」
意見を求められるとドキッとするけど、必死に平静を装い、チューハイに手を伸ばしながら、頭をフル回転させる私。
「順番が前後する話は、私は読んだことないと思うけど。あっ、結論を書いてから物語が始まるやつ?」
「結論を書いてから? なんか、ナギが書いてるみたいな言い方やな」
あわわわわ……。
「お待たせしました〜。間から失礼します〜。あっ、お飲み物は大丈夫ですかぁ?」
だし巻きが届きました。店員さん、神っ! 友達のグラスがほぼ空っぽなことに気づき、声かけをしてくれたことで、彼女の関心はドリンクメニューに。
「これ、お願いします〜」
「はい! 喜んで!」
私も大喜びだよ。店員さん、神すぎる。
「何の話してたっけ? あー、せや。最近読んだラノベが、いくつか順番がおかしくてな。私、電車で読んでるやんか。まぁまぁな分量の物も、まだ半分も読んでへんのに話が終わって、その後、また続くみたいな感じでな」
「終わったのに続くって、後日談ってこと?」
「後日談じゃなくて、前日談みたいな感じやで」
私が首を傾げていると、彼女は、とあるWEB小説サイトを開いて、私に見せてきました。それが、まさかのなろうだったことで、私の心拍数は上昇し、いくつかの作品を目次の部分で説明されたけど、全く理解はできませんでした。
昨夜、この件を思い出して、印象的だったタイトルの作品を探し出して読んでみたところ、彼女が話していた意味がやっとわかりました。
でも、私が見つけた作品は、ちゃんと起承転結になっていました。内容も普通に理解できるし、途中までしか読んでないけど、とても面白かったです。ただ、厚みの部分というか、ウェートのかけ方が、私の感覚とは大きく異なることに気づきました。
ストーリーは、横道に逸れることなく、一気に結論まで進んでいきました。その後に、物語の中での主要な登場人物のサイドに立った話が、時間を遡って描かれる形でした。
だから友達は、起承転結ではなく、承結起転だと言っていたのだと思います。誤解を恐れずに例えるとすれば、素晴らしくよくできた感動的なあらすじの後に、各場面の肉付けをしていくという手法、でしょうか。
この手法は、結論まで読んでから、各場面を回想することができるので、私は個人的には読みやすいと感じました。ただ、好みは分かれると思います。
また、映画を短くまとめた物を観てからその映画を観に行くか否かを決める、という人の感覚に合わせた手法だと感じました。結論がわかってから改めて観る方が、余裕を持って観ることができるのでしょう。
私は、短くまとめた映画やイントロを飛ばして音楽を聞く人には共感できないのですが、観た映画を再び観る時の余裕を愉しむ視点だと考えると、アリなのかなと感じます。
短くまとめた映画しか観ない人や、サビしか曲を聞かない人の気持ちは、やはりわからないのですが。
長編の作品では、プロローグに盛り上がる場面を書いてから、時間を遡って本編を始めるという手法は、ちょくちょく見かけます。これは面白いなと思って、私も試したこともありました。
確かに、静かにスタートするよりも、読んでくれる人が多かったと思います。盛り上がりスタートというのは好印象ですね。ただ、途中でブクマ剥がれが増えたので、豆腐メンタルの私には合わない手法でした。
私はどんな作品も、必ず完結させることが大事だと考えています。読み専だったときに、多くのエタ作品にモヤモヤしたことが、書き始めるキッカケになったからだと思います。
ですが、今回見つけたような斬新な手法が増えれば、完結にこだわらなくても、エタによる害を最小限に減らせるような気がします。いや、そもそも、この書き方なら、行き詰まり系のエタは起こらないでしょう。
私は、読むためにかけた時間を、物語のフィナーレによって回収したいタイプです。半年経っても更新されないとモヤモヤして、同じ作者さんの作品は完結作しか読まないようになりました。
これは、読み専だった私のワガママです。無料で読ませてもらっているのに、更新が無いことに不満を言うなんて、何様やねん? と言われそうですが、モヤモヤしてしまうので仕方ないのです。そんな経験から、完結にこだわるようになってしまったみたいです。
完結しないことを前提に読む人もいると聞きます。作者がスタートダッシュを頑張って書くから、その部分だけを楽しむそうです。それも、愉しみ方の一つですよね。
時代の感性に合わせる。
それは、創作には必要なことなのだと感じます。でも私は、当たり前ですがAIではないし、お金を渡されて書いているわけでもない。
だから、やっぱり自由でありたいな、と思ってしまいます。今回見つけた斬新な手法を試す勇気は、まだ私にはありません。
ただ、時代から取り残されないように、流行り物のチラ見はしていきたいですが。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
滅多にエッセイは書かないのですが、すごく驚いたので書いてしまいました。まさかの今年2つ目ですが。
それと、標準語のことを関東弁と書いたことに反感を抱かれる方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。修正しようかと迷いましたが……結局こうなりました。