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アベストロヒ・捜索中の遭遇

観察者視点の地表人編ep22、です

 その日もアベストロヒはナブネイドを探してアシルの森の上空を彷徨っていた。


 私はアシルの針葉樹林地帯上空を低速低空で飛行していました。

 ちょうど2年前の初冬、私はここで相棒とも呼んでいいくらい大事にしていたネオ・ミアキスヒューマンを失いました。

 とても利発な、白地に七つの黒点模様のたれ耳の仔です。生きていれば五歳、ミアキスヒューマン換算ですと16~7歳相当になるでしょうか。

 高精細スキャナーには地上でネズミなんかの小動物を捕食する極彩色の竜鳥、草食走竜を群れで追いかける狼、鹿の大群を追う小型翼竜。このエデンならではの生態系が映し出されています。好奇心旺盛なナブネイドはその目でこんな光景を見たがっていました。

 私に是非はありません、もしかしてネオ・ミアキスがマナを視る能力を失った原因の判明、そして再度能力を得るきっかけになるかもしれない。それは大いなる収穫が得られると考え、同伴、随従を容認したのです。

 それが最悪の結果を招きました。彼は私の不注意、背後から超高速で接近するプレシャスウイングの存在に気付かず彼女の起こした突風に捲られて、ドローンから落ちたのです。

 私は慌ててナブネイドが落ちた周囲を探し回りました。ですがナブネイドの姿は見当たりませんでした。事故当時、フロートは樹冠から50メートルほどの高さにありましたし、高木層の林冠から低木のブッシュがクッションになって墜落の衝撃を受け止め大した怪我はなかった可能性も考えられます。


 ならばナブネイドはきっと生きているに違いない。諦めがつきませんでしたし、仲間も同意してくれました。

 生きていたら、我々とは違う感覚で体感したエデン地上の様子が聞けます。彼の見たもの感じたこと、体験したことは全て我々にとってとてつもない収穫になります。

 観測船ヴィマーナから大掛かりな捜索隊を出す話も浮上したのですが、ナブネイド捜索は私の私情、わがままです。さすがに断りました。


 その時。私の心を揺さぶるようなタイミングで地表センシングモニターに人影が映り込みました。


 いた。

 生きていた。

 ああよかったナブネイド。今回収しますからね、待っててください。


 はやる気持ちを抑えてカメラを最大ズームさせ確認すると、そこにいたのは特殊観察対象のグラディアテュールの長の子とアシルの雌のつがいと、行幸随行の一群でした。もう一度、藁にも縋る思いで行幸の一群に個体識別をかけましたが、やはりというか案の定というか、耳の垂れた七つの黒い斑点模様の仔はいません。ミアキスヒューマンは白変種、黒色化の差異はあれど食肉目科野生動物、地球でいうところの犬系カニス属、狼のルプスやキツネのヴェルペスや、クマ系ウルズス属、ヒグマのアルカス、豹系パンテラ属、ヒョウのパルドス、ライオンのシンバ、虎のチグリスといった野生動物の獣人です。

 翻ってナブネイドはドメスティケーション、飼い慣らしによる外見の変化が生じた大変目立つ容姿ですから、群れに混じって暮らしているならすぐに見分けがつきます。

 ああ。ナブネイドではなかった。消沈し悲しい気持ちが湧きましたがここは仕事に切り替えましょう。私情を挟んでいるのは私です。


 それにしてもなにか様子が変です。何かを気にかけている感じです。ぐるりと周囲にカメラを向けても危険に思われるようなものは何も映っていません。マイクで音声を拾ってもノイズがザーザーバリバリ言うだけでで全く聞き取れません。こんな現象は初めてです。

 赤外線スキャナーを確認すると、彼らの近くに非常に温度の低い、氷点下の塊が渦巻いていました。ご存じの通りサーモグラフィーというのは赤外線エネルギーを可視化したものです。温度が高くなるにつれて白く、低くなると黒く表示されます。もう日没ですから外気温は10℃くらいに下がっているでしょうか。ですからミアキスヒューマンたちの姿は明るくハッキリ捉えています。ではこの黒いものは、ごく低温の物質?光学レンズのモニターで確認しまそたが、そこには何もありません。


 まさか、海で確認された低温の現象によく似た何かでしょうか?


 咄嗟にオープンリールタイプの録画機器をオンにしたその時でした。突然黒い何かから真っ白い光が沸き上がりました。突然、超高エネルギーを発する何かが現れたとしか言いようのない、説明のつかない状態でした。モニターも光学レンズも強いフラッシュに焼け付きを起こして何も見えません。


 モニターが復旧したときには、グラディアテュールの長の子の姿が消えていました。

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