表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロータス旅行団~出生不詳JKの異世界冒険譚~  作者: 景少佐
 ZWEITER AUFZUG:異界へようこそ
16/42

#03 屍夜行?

毎週木・日、15時~20時の間に投稿予定

 ケイとリコの案内で、三人は二人が乗ってきた飛行機の残骸があるところに接近していた。緑生い茂る大森林のなかにポツンとたたずむその白い人工物はいつ見ても異様で、相変わらず少し離れたところから見ても目立っていた。


「あ、見えてきましたよ、グリムボルトさん。あれです」


 自然の景色に混ざることなく、木木の隙間から己の存在を強く主張しているそれを見つけたリコは、指を指してグリムボルトにそう告げた。


「おお、あれが……」


 リコに教えられたグリムボルトは、初めて見る本物の「飛行機」というものに、一瞬にして目を奪われた。


「近付いて見ても……大丈夫なのか?」


「大丈夫だと思いますよ。餐鬼(グール)が隠れていない限りは」


 それから三人は、付近に餐鬼が潜んでいないか警戒しつつ、飛行機に近付いた。


 一歩近付くたびに真っ白に染められたその巨体とグリムボルトとのサイズ差が露わとなる。二人にとってはもはや当たり前のことだが、そんなことを存じない彼はそれに圧倒された。


「大きいな……これが本当に、空を飛ぶのか?」


「そうですよ。まあ、今は墜落して機体の前半分が行方不明ですがね」


 手を冷たい金属のボディに当て、見上げてまじまじと鉄の巨鳥を観察するグリムボルトの背後からリコが答える。


「俺たちは中を見てきます。まだ食糧がいくらか残っていたはずなので」


「わかった。儂も外を見終わったらそっちに行こう」


 そう言って二人は、飛行機の姿に釘付けになっているグリムボルトを残し、機体内部へと向かった。昨日に持ちきれなかった機内食をまだあれば回収するために。


 昨日と同じ手順で機体の断面からよじ登り、客室に入る。一度経験したことであったので、今回は昨日よりもスムーズに登ることが出来た。が、しかし疲れることには変わりない。


「まったく、非常口を昨日の時点で開けておくべきだったな。というか、なんで逃げるときに誰も気が付かなかったんだ」


 と、ケイが登り終え、額にかいた汗を拭いながらぼやく。


「仕方ないだろう。完全に頭から抜け落ちていたんだから。みんなパニクってたんだ」


「まあ、それはわたしも人のことを言えないし、お互い様か」


 などと話ながら息を整えつつ、二人は機内を見渡す。そこには昨日と相変わらず凄惨な最期を遂げた仏様が転がっている――はずだったのだが、どういうわけか、一体もそこには無かった。死体が跡形もなく、綺麗に消え去っているではないか。細かい肉片や血溜まりなどはそのままだが、メインの、大きな死体だけがその姿を隠している。

 

 思いも寄らない展開に、二人はしばしの間言葉を失っていた。


 真っ先に考えつくのが、一晩のうちに獣に食い尽くされたという説だ。が、そういう風には見えない。

 

「獣に持って行かれたのか……?」


 ケイがポツリと蚊の鳴くような声で呟く。


「いや、それだったら引き摺って血の跡が残ると思う。持ち上げて行ったとしても、死体から滴り落ちる血だとかが痕跡になるはずだ。でも、腐って無くなるには早すぎるしな……」


「じゃあ、なんだ。死体が勝手に動き、列を成して夜行したってのか?」


「あるいは、餐鬼に噛まれると、そいつも同じような餐鬼に成り果ててしまうとか? それで喰われた奴らが軒並み餐鬼と化して彷徨っているんだ」


「そんな、ゾンビ映画じゃないんだから」


 その後も少し考えてみたが、結局二人の間では、ひとまずこの件は隅に置き、まず飛行機の非常口を開けようという話になった。それからグリムボルトさんに相談してみよう、と。


 非常口は、後部には座席の十八列目と二十七列目、左右合わせて四カ所設置されていた。そのうちの一カ所、左翼側十八列目の非常口ドアを開け、緊急脱出用スライドを展開する。これでもういちいち機体の断面を猿のように上り下りする必要はなくなった。


 さっそく展開したスライドから滑り降り、二人はグリムボルトのもとに駆け寄って事情を話した。初めは彼も同じく獣が持って行ったのだろうという考えだったが、機内に入り、実際にそこの光景を見ると、その考えを撤回した。


「俺は餐鬼に噛まれた奴も餐鬼と化してどこかに行ったんじゃないかって思ってるんですが、そのような情報、聞いたり耳にしたりしたこと、あります?」


 リコはまだゾンビ映画的現象説を諦めていなかったらしく、そのような情報を持っていないか彼に尋ねるも、彼にすぐに首を横に振られたことで立証は叶わぬ夢となった。が、それでこの説がお釈迦になった、というわけではなかった。


「あいにくそんな話は聞いたことがないな。だが、思いも寄らなかったが、その可能性は否定できん。儂らも餐鬼の特性とかについて完全に把握している訳ではないから、もしかしたら君のそれが正解という可能性もある」


「だとよ、ケイ。俺の説はまだ可能性がある」


 彼に自身の説をフォローされるや否や、リコは自信に満ちた苛つく顔でケイに言う。


「一秒やる。そのウザい顔をどうにかしろ」


 そう言ってケイは矢を一本手に持ち、矢じりをリコに向けて脅した。


「やめてくれ、俺は先端恐怖症なんだ」

 

「嘘付け。――それに、浮かれている場合じゃないだろう。癪だが、もしお前の説が正しかったら、相当厄介なことになるぞ。喰い殺されてジ・エンド、じゃなくなるんだからな。餐鬼の被害が大きくなればなるほど対処が困難になる。お前の好きなゾンビ映画でもみんなそうだっただろう?」


「ケイ、と言ったか。ゾンビ映画とやらはわからんが、確かに君の言う通りだな。そうなれば、儂らの村も何か対策しないと危ういかもしれん」


 と、楽天的なリコとは対称的にグリムボルトが不安げな表情を浮かべて言った。なにもリコの説が正しいというわけではない。証拠が何一つ無い今では、妄想の域を出ないだろう。しかし、どうしてか、妙な胸騒ぎを彼は感じていた。


「飛行機の見学はもう結構だ。ありがとう、二人とも」

 

 グリムボルトが改めて二人に向き直り、礼を言う。


「まだ中を見ていませんが、いいんですか?」


 と、リコ。


「ああ……。また今度、時間が出来たときに来て見ようと思う。――さ、儂らの村に向かおう」


 そうグリムボルトは二人に言い、彼の村に向けて歩き出そうとした。が、その歩みはすぐに止まることとなった。あまりにも急に止まったので、彼の後ろを歩いていた二人は思わず彼の背中に衝突しそうになる。


「うわっと……、どうかしましたか?」


 リコが体勢を立て直して彼に問う。

 

「静かに。……餐鬼がいる。……臭いがする」


 グリムボルトは小声でそう告げ、手で動かないよう二人に合図した。


 ――近いな。二人は気付いていないようだが、前方から餐鬼特有の臭いがする。同じ方向から歪な魔力も感じるし、間違いないだろう。距離にして、おおよそ一○○メートルほどか。こっちに向かってきているようだ。


「二人とも、ゆっくりと後退してあの飛行機の中に隠れるんだ。こっちに来ている」


「あなたはどうするんですか」


「違う方へ行ってくれればいいが、そのまま来るようなら儂が倒す」


 恐らく大した戦闘経験のないであろう二人に危険な真似はさせられない。それに、魔力の感じからして相手は一体だけだ。どうにでもなるだろう。そうグリムボルトは考えていた。が、二人はそうは考えていなかった。


「それは余りにも危険ですよ。餐鬼のことを完全に知っているわけではないんでしょう? だったら、万が一に備えて三人で当たった方がいい」


「だが、お前たち……」


「大丈夫ですよ。あなたほど強くはないかもしれませんが、これでも昨日、二人で数体倒していますから」


 そう彼を説得するリコの目を見て、グリムボルトは確信した。彼の強気なその眼差しが、決して無知から来る根拠のない自信ではないということを。その隣のケイも同様だ。彼と違って口数は少ないが、彼と同じ目をしている。


「……ハハハ、すまんな。どうやら、お前たちを過小評価していたようだ。だったら、お前たちにも仕事を頼もう」


 それからグリムボルトは、即興で考えた二人に対餐鬼の作戦を伝えた。まずグリムボルトは飛行機周辺の比較的見晴らしの良い広場に立ち、餐鬼の動向を探る。リコは彼の後方に立ち、近接戦闘状態になった際の援護。ケイは飛行機の中に入り、弓矢で餐鬼を狙撃する。射撃タイミングはケイに一任する。


 ――ケイの弓矢の腕は、ここまで歩いてくる途中で二人から聞いている。にわかには信じがたい話だったが、それが本当なら儂やリコが出る幕はないだろう。


 彼の作戦が共有されると、さっそく三人は己の持ち場に着いた。グリムボルトとリコは地上で、いつでも剣を抜けるように構え、ケイは飛行機の中から弓矢を構える。


 準備はできた。あとはいつ餐鬼がその姿を現すのか、それ次第だ。

お読みいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたなら、↓の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけるとありがたいです。


またブックマークも宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ