76話 悪霊
「悪霊って、除霊的なのできないの?」
「除霊ですか……?」
首を傾げたアリア。
どうやら、除霊の意味を知らないようだ。
もしかすると、異世界にはそのような概念がないのかもしれない。
「悪霊をアリアちゃんから取り除けないかなって!」
ノナがそう言うと、アリアは勢いよく首を左右に振る。
「無理です! この悪霊は、魔王の生き写しとも言える程、強力なんです!」
アリアが言うには、悪霊を外に出すことはできるが、完全に切り離せないらしい。
そして何より、外に出してしまうと、悪霊が大暴れするとも。
悪霊は魔王の生き写しとも言える程強いらしい。
だが……
「アリアちゃん! それなら任せてよ! 私こう見えても、異世界の魔王より強い人に勝ったんだからね!」
「え!? どういうことですか!?」
ノナはアリアに、異世界の自称神と戦ったことを話した。
「魔王が既に死んでいるとは……」
ノナが魔王よりも強いとされる自称神と戦ったことについてもそうだが、魔王が既に討伐されたということに対して、驚きを隠せないようだ。
「だからさ、これから先アリアちゃんが倒れないように、その悪霊倒しちゃうよ!」
「うぅ……」
不安そうな表情を浮かべるアリア。
確かに、自称神との戦いを実際に見た訳ではないので、不安になる気持ちも分かる。
「悪霊による被害を私が受けない方法もありますので、無理をしなくても大丈夫ですよ! 今までもそれでなんとかできていましたし!」
「そうなの? じゃあ、どうして今回は?」
「私にも分かりません。ただ、この悪霊は人の悪意や負の感情を向けられた時に強く反応するんです」
「負の感情?」
ノナが頭を悩ませていると、ミソギが耳元で呟いてくる。
「SNSじゃないかな」
「SNS……?」
アリアはSNSをやっていないハズだが。
「この前の戦闘を盗撮されて、ネットにバラまかれたでしょ? その時、アリアは全然戦闘をしていなかったから、言いにくいけどネット上で色々書かれている」
「そんな!」
確かにアリアは戦闘をしていなかったが、別にそれでも問題はない。
それに戦闘後はしっかりとミソギとエムを回復することで探索に貢献していた。
だがしかし、その辺りのシーンはネットで拡散された動画にはない。
いや、だとしてもなぜそれだけで?
そんな疑問をミソギの耳元で投げかけた。
すると、ミソギがまた耳元で話す。
「ゲームで言う所の寄生プレイ……つまり自分は、楽して強いチームでほぼ何もしないプレイをしているように、感じられたのかもしれない」
「たったそれだけで!?」
ノナはミソギの耳元で話す。
「そもそも別にアリアちゃんは友達だから一緒に行っただけで寄生とかないし、仮に寄生だと勘違いしたとしても、なんでそれをネット上に書くの?」
勘違いすること自体は悪いことではない。
だがしかし、なぜそれをネット上で書いている人が多いのだろうか?
仮に寄生だとしても、被害を受けるのはノナ達だ。
ネットの人達は、何一つ不利益もなく、こんなことを言うのもなんだが無関係なハズだ。
それなのに、なぜ?
「炎上ってそういうもんだよ」
と、ミソギが耳元で呟いた。
少しショックだった。
皆本気で言っていないと思っていたのだが、実際にその悪霊が負の感情に反応しているというのなら、本気で言っている人もいるということなのだろう。
優しい人が多い。
そう思っていたノナは衝撃を受けた。
だが、すぐに顔を左右に振り、気分を切り替える。
「どうしたんですか?」
流石に不審に思ったのか、アリアが問いかけて来た。
2人は、愛想笑いをして誤魔化す。
「よし! じゃあ、悪霊を倒しに行こうかな!」
再びダンジョンに行くのは不安な面もあったが、いつ悪霊の影響を受けるか分からない。
早い内に悪霊を倒そうと考えた。
3人は立ち上がると、近くのダンジョンを探す。
できれば人がいない不人気ダンジョンがいい。
探していた所、そのようなダンジョンはすぐに見つかった。
この前の事件によって探索を自粛している者も多かったので、それも合わさり簡単に見つけることができた。
「ノナ、私は邪魔にならないように離れているよ。思いっきりやればいい」
「うん! ありがとう!」
ミソギはノナが暴れやすいようにと、気をつかって距離を大きく取った。
「じゃあ、行きますね! ……と、私だけじゃ駄目なので、寸止めで攻撃とかってできますかね?」
どうやら宿主に危機が迫った時、外に出やすくなるらしく、異世界で生活をしていた時もそのようなことがあったらしい。
ノナはカオスソードを引き抜き、アリアに攻撃するフリをする。
「えいっ!」
寸止めであったが、思わずアリアは両手を顔の前でクロスさせた。
そして、アリアの中の黒いものが、外に放出される。
「ゴゴゴゴゴ」
黒い霊のような、ドス黒いオーラ。
これが悪霊のようだ。
外には出ているが、アリアとは繋がっている状態らしく、根元がアリアと繋がっている状態だ。
「ノ、ノナさん!」
不安そうな表情を浮かべるアリアであったが、ノナは彼女に対し言う。
「大丈夫! すぐに倒しちゃうから!」




