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7話 ファッションセンス

 明日は私服で友達と出掛けるわけだが、折角お金があるのだ。

 おしゃれな服を着ていきたい。


 今の私服はジャージやTシャツなど、最低限のものしかないので、今から服屋に買いに行くことにした。


「ふふふ! 中々いい感じだね!」


 ノナは服やアクセサリーを購入し自宅へ戻ると、それに着替えて鏡の前で右手をVの字にして、顎に当てる。

 自らのファッションセンスを、自画自賛しているのだ。


 現在のノナ姿は、黒髪ロングに、黒のTシャツにオレンジのスカートに黒猫のニーソックス。

 その上から、所々シルバーのアクセサリーが装備されている、黒のロングコートを羽織っている。


 首には黒のチョーカー。両腕にはシルバーの鎖を巻いている。スカートにもシルバーチェーンをベルトのように巻き付けている。どちらも、ただの鎖ではなく、アクセサリーだ。

 指には中古屋ショップで買った指輪を全部で7つ付けている。2009年頃に人気だった漫画に出てくるものを本格再現した指輪である。全部で7種類あり、中古価格でも、1つにつき2万円近い。全種類購入したので、当然その指輪だけで、14万円近くが消えた。


「普段おしゃれしないけど、たまにはいいね! エムに見せたらきっとビックリするだろうな! 明日が楽しみだ!」



 次の日、ノナは待ち合わせ場所であるスカイツリー駅へと向かった。


「そういえば、現実世界のエムってどんな感じなんだろう?」


 ノナの場合は、元の時代の姿になったが、エムは何か変化があるのだろうか?


「髪の毛の色が違うだけかな?」


 ダンジョン内ではピンク髪だったが、ダンジョン外では黒髪だろう。

 高校生でピンク髪は、流石に校則違反となってしまうからだ。


「あれ? もしかして、エムかな?」

「うわっ!」


 エムらしき女の子を発見したと思ったら、向こうもこちらを見ていたようで、目が合った。

 気が付いてくれたのだろうか?


 ノナはエムの目の前まで走る。


「わ、私に何か用ですか?」

「え?」


 緊張しているのだろうか?


「エムだよね?」

「あ、あの……どうして私の名前……」

「あ、ごめんごめん! 私だよ! 私! 吉永ノナです!」

「へ゛ぇ゛っ!?」


 エムは声にならないような声を発し、まるで幻覚を見ているかのように驚いた。


「驚かせてごめんねー! どう? 服とか、かっこいいでしょ? 昨日買ったんだ!」

「え!? か、かっこいいね」

「うん! ダンジョン内では村人装備だからね! 現実ではかっこいい服を着たいと思ってね! ただ、まだ少し地味かなっても思ってるんだけど、エムはどう思う?」


 本当は髑髏のシルバーネックレスも買いたかったのだが、節約の為、泣く泣く我慢した。

 いくら貯金があるとはいえ、仕事をしていないので、お金は出て行くばかりだ。無駄使いをしてはいけないとノナは自分に厳しく接したのだ。


「今のノナでも、私としては十分派手かなって……。勿論! かっこいいよ!?」

「そう!? だったら良かった!」


 ただ、こうしておしゃれをしても、ダンジョン内ではまた村人装備になってしまうのだろう。

 まぁ、元の姿に戻れるので、それはそれで嬉しいのだが。


「ファッションは語れる程詳しくないから、置いとくとして。なんか……こう見た目が、思ったよりも大人っぽいね! 大学生みたい!」


 本当は、大学生ではなく、もうすぐ29歳の肉体なのだが。


「えへへ! そうかな? というか、エムはエムで、髪の毛ピンクじゃないから結構印象変わるね!」

「現実では校則とかあるから、流石にね。っていうか、本当に失礼なんだけど、本当にノナは中学生なの?」

「あー……実は」


 ノナは言いにくそうに目線を逸らす。


「あの時はつい癖で中学2年生って言っちゃったんだけど、本当は今年で29歳なんだよね」


 本当は言いたくないが、流石にこの姿で中学生は無理があるので、正直に話した。


「ごめん!」

「いやいや! 謝らなくていいよ! ただ、あまりにもダンジョン内の姿と違ったから……もし、なんか事情があるんだったら、こっちこそごめんね?」

「怒らないの?」

「うん! だって、もう友達だしね!」

「おお! やっさしー!」


 とその時。


「ライブ会場は隣の駅だよー!」

「え?」

「あれ? 今日のライブイベントの参加者じゃないの?」


 ノナは、知らない人に話しかけられた。

 なぜかは分からないが、バンドマンと間違われたみたいなので、一旦昼食も兼ねて場所を移動した。


 昼食はマックドナルドで済ませた。


「私が奢るよ!」


 昨日買ったシルバーアクセサリー付きの黒い財布を、バリバリと開き、1万円を店員に差し出すのだった。

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