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69話 いただきますしよっか!

「じゃあ、いただきますしよっか! いただきます!」

「いただきます」


 カレーを口に入れると、なぜか凄く幸せな気分になった。


「これがカレーですか! 初めて食べました!」

「元の時代にカレー無かったの?」

「ありましたけど、実際にこうして食べるのは初めてです!」

「そうなんだ!」


 ノナはカレーを食べながら、なぜこんなにも幸せな気持ちになったのかを考えた。

 友達と一緒に作って食べているからだろう。


 後は……


(そういえば、最近お母さんのご飯食べてないな)


 この時代では一人暮らしをしているので、最近母が作った料理を食べていない。

 元の時代では、母の作ったカレーを食べるのも、珍しいことではなかったのだが。


「どうしたんですか?」


 ノナがじっとスプーンに乗せたカレーとライスを見つめていると、アリアが首を傾げた。


「え?」

「なんか、急に静かになりましたから……って、別にさっきまでうるさかったって意味じゃないですよ!? ただ、私と違って凄く元気そうでしたので、急に静かになったのでびっくりしただけです!」


 口を滑らせてしまったという訳ではないのだろう。

 おそらく、勘違いさせてしまいそうな言葉に補足をしているのだ。


 アリアは非常に真面目で優しい性格をしているのだろう。

 ノナはそう思った。


「元の時代のことを思い出しちゃってね。よくお母さんのカレー食べてたから」

「そうなんですか……」


 しんみりという程でもないが、ノナは軽く眉の力を抜きながら笑みを見せる。

 その様子に同調するように、アリアは声のボリュームを落とす。


「って、ごめんね。”こんなこと”で心配かけちゃって」


 少し懐かしんでいただけのハズなので、そこまで暗い雰囲気は出ていなかったハズだ。

 それなのにここまで心配させてしまうということは、それ程までに普段のテンションが高いのかもしれない。


「”こんなこと”じゃないですよ!」

「そ、そう?」


 アリアは両親がいないと言っていた。

 それに比べれば、「こんなこと」ではあると思うのだが、なぜかアリアは眉に力を込める。


「私はこの時代にずっといる予定ですけど、ノナさんは違うんですよね?」

「あー、うん。やっぱり自分の時間を生きたいというか」


 それに、体だけ年をとってしまい、なんだか勿体ない気もする。


「だったら、絶対戻りましょう! 私も協力します!」

「それは嬉しいね!」


 ノナの周りの人達は、優しい人ばかりである。



 次の日。


『おはよう、ノナ』

『どうしたの?』


 朝ごはん食べ、10時くらいになると、ミソギから連絡が掛かって来たのでスマホを耳に当てている。


『今日、平日だけどいてるかな?』

いてるよ!』


 学校へ行っている訳でもないので、問題ない。

 ノナの返事を聞いたミソギは続ける。


『レイドバトルしに行かない?』

『何それ?』

『ネットニュース見てない?』

『うん』


 あまりスマホを触らないので、よく分からない。


『クランメンバー同士か、知らない人同士でもいいんだけど、2人以上で戦うイベントを銀座駅のダンジョンでやっているらしい。どうも強いモンスターが銀座駅のダンジョンでうようよしているみたいだからね』

『イベントってことは、誰かがモンスターを発生させたの!?』


 イベントの為だけにモンスターを発生させるなんてことができるかどうかは不明ではあるが、もしそうだとしたらかなり危険な行為ではある。

 銀座駅は人が多いので、初心者がそこに行く可能性もあるだろうに。


『イベントってことにしているだけみたいだね。これは隠されているって訳じゃないんだけど、昨日の夜くらいから銀座駅のダンジョンで強力なボスモンスターが大量発生しているらしくてね。それをどうにかする為に、イベントという扱いをしているだけらしいよ。とは言っても、イベント呼びは冒険者ギルド団体がそう言った訳でもなく、ネット上で勝手にそう言われているだけなんだけどね』

『なるほど。それだったら、行った方がいいかもね』

『異常事態だからね。何かノナが元の時代に戻れる手掛かりもあったりなかったりするかもしれない』


 その後話をまとめた後、電話を切る。

 ノナはアリアへ、ダンジョンへ出掛けてくるということを伝える。


「ダンジョンって、確か……モンスターがいる所ですよね?」

「うん!」

「どうしても行くんですか……?」


 もしかして、自分も行くと思っているのだろうか?

 流石に異常事態が起こっている中、今のアリアを連れて行くことは難しい。


「アリアちゃんは留守番だよ?」

「あ、そういうことではなく、ノナさんが心配といいますか……」

「そういうことか! それなら大丈夫! 私は強いからね!」


 それに、今のノナはシルバーソードによる加護がある。

 加護というのは大げさかもしれないが、実際にゲームバランスをぶっ壊す程の力を秘めているような気もするので、そこまで間違ってもいないだろう。


「行ってきます!」

「お気を付けて!」



 銀座駅へ電車で向かうと、ミソギが待ち合わせ場所にいた。


「相変わらず派手な格好だね」

「ミソギは地味過ぎるかも」


 ミソギの場合は長袖のTシャツと、長めのスカートといった、そこまで珍しくもない格好をしていた。

 ノナはいつも通り、黒のロングコートにシルバーアクセサリーを大量に身に着けた服装をしている。


 もはや、外出する際の正装みたいになっている。

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