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67話 銀座の喫茶店

 ノナとアリアは電車に少し揺られ、銀座へ向かうと、そこの駅から少し歩いた所にある喫茶店に入る。

 初めて入る店だ。


「何頼んでもいいんですか!?」

「いいよ!」


 店員に席へ案内されると、メニューを開くノナとアリア。

 アリアは目を輝かせるようにして、メニューをペラペラとめくる。


「洋食がこんなに沢山! 今の時代って色々あるんですね!」


 洋食をあまり食べたことがないらしいアリアは、どれにするかキョロキョロと目線を移動させ、迷っていた。

 しばらくすると、注文を決めたようで口を開く。


「ブラジルコーヒーと、ナポリタンっていうのを食べたいです!」

「OK!」


 銀座ということもあり結構な値段ではあるのだが、金銭についてはこの時代のノナの貯金があるので、問題はなかった。


「私はこれにしようかな!」


 ノナは折角の銀ブラなので、同じくブラジルコーヒーを注文し、後はパンケーキも注文した。

 喫茶店でパンケーキとは、完全にお洒落な中学生である。


 元の時代に戻ったら、中学生では厳しいかもしれないが、高校生くらいになったら金銭を貯めて、友達とこのような所でお茶をしたいものだ。


「こちら、ご注文のお品になります」

「ありがとうございます!」


 しばらくすると、店員がやって来て、料理がテーブルの上に置かれる。

 ノナとアリアは店員に軽くお礼を言うと、いただきますをする。


「実はコーヒー、初めて飲みます!」


 アリアは砂糖とミルクをたっぷりと入れ、カフェオレのようなものを錬成する。

 ちなみにノナもコーヒー自体、あまり飲まない。


 缶コーヒーをたまに飲むくらいである。


「苦い……」


 予想よりもかなり苦かった。

 缶コーヒーはおそらく、かなりの砂糖とミルクが入っているのだろう。


 ノナは砂糖とミルクを、アリア程ではないが多めに投入した。

 缶コーヒーくらいの甘さになったのを確認すると、スプーンでよくかき混ぜ、ようやく味わい始める。


「美味しい!」


 缶コーヒーと同じくらいの甘さではあるが、やはり本格的なコーヒーは味が違った。

 風味が違うというべきであろうか?


 とにかく、何かが違った。

 何が違うのか、具体的に言語化できない所が残念だ。


「パンケーキもあったし、もう少し砂糖少なくても良かったかも!」


 パンケーキを口に入れ、飲み込んだ後に思わず呟いた。


「これがケチャップの味!」


 一方アリアは、ナポリタンの味に感動していた。

 ケチャップも初体験なのかもしれない。


「でも、どこか懐かしい雰囲気かもしれません」

「そうなの?」

「はい、どこがかは分かりませんが……」


 ノナも缶コーヒーとの違いは分かったものの、その違いを上手く言語化できなかったので、お互い様である。


「ごちそうさまでした!」


 2人は手を合わせると、小さなボリュームで言葉を発した。

 会計の際、改めて金額を見ると、本格的な喫茶店はやはり高級なのだと感じることができた。


 喫茶店を出ると歩くのだが、多くの人がアリアを見ているような気がする。

 それもそうだ。


 和服で歩いていれば、珍しくて目線を向けたくもなるだろう。


「やっぱり、この服変ですかね?」

「お洒落でいいと思うよ!」


 そういえば、この前ネットサーフィンをしている際に、この時代は多様性の時代というのを見かけた。

 であれば、和服を着て歩いていても、なんの問題もないだろう。


「ちょっと恥ずかしいです」

「じゃあ、服買いに行く?」

「え!? いいんですか!?」

「貯金があるからね!」


 勿論、未来のノナの貯金である。

 心の中でノナは、未来の自分に向かってウインクをしながら軽く舌を出し、手を合わせるのだった。


 服屋へ向かうと、アリアはTシャツとスカートを手で持ってくる。


「これがいいです!」

「もっとお洒落なの、じゃなくていいの? 例えば私みたいに!」


 そういえば、すれ違う人が見ていたのはアリアだけではなかったのかもしれない。

 ノナは黒のコートに、シルバーアクセサリーを大量に身に着けているのだから。


「ちょっと派手過ぎますね……あ、悪口じゃありませんよ! 私にしては派手過ぎるってだけで……」

「分かってるよ! もう、アリアちゃんは真面目だなぁ!」


 ノナはアリアの背後から、右手人差し指で彼女の右頬を軽くつついた。


「後は動きやすそうで、いいと思ったというのもあります!」

「おお! 私もこんな格好しているけど、動きやすい格好も好きだよ!」


 元の時代では、動きやすい格好をしていたのを思い出した。


「この時代では女性が走っているのを多く見かけました! なので、私も思い切り走りたくて!」

「大正では走れなかったの!?」

「はい! はしたないと言われてしまいますので」

「そうだったのかぁ」


 初耳である。

 となれば、希望通りの服を買うことにした。


 他生活に必要な代えの服などを購入し、服屋を出た。


「レジ袋必要でしょうか?」

「有料でしたっけ?」

「はい」

「お願いします!」


 そういえば、この時代ではレジ袋が有料なのを忘れていた。

 ポイントカードがあれば、実質差し引き0円くらいなので、良しとしよう。


 服屋はチェーン店だったので、会計も安く済んだ。

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