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13話 15年後の友達

「夜中だけど、いいよね……?」


 現在の時刻は、後少しで0時といった所だ。

 本来はマナー違反かもしれないが、その友達とは中学時代……というよりも、ノナにとっては現在進行形でかなり仲良くしている。


 それに、今連絡をしないと気になって眠れなさそうだ。

 ノナは、連絡先から【折原オリハラ ミソギ】の名をタップして、電話をかけた。


 10回くらいコールが鳴ると、ミソギが電話に出たようで、声が聴こえてくる。


『も、もしもし……?』

『ミソギ! 久しぶりー! 私でーす! 元気にしてたかな!?』


 いつも通り、友達であり親友でもあるミソギに声をかけた。


『ど、どうしたの……?』

『あっれ? なんか元気ないけど、大丈夫?』

『い、いや、あまりにも急だったからさ』

『最後に電話したのいつだっけ?』

『半年くらい前かな?』

『はっはっは! そんなに話してないんだね!』


 そこまで話していないとは。

 仲が悪くなったのだろうか?


『それにしても、なんか元気なくなった気がするんだけど、気のせい?』


 ミソギは昔から大人しい性格であった。

 まぁ最近は、「かみ殺す」が口癖のキャラの真似をして、ホウキを持って追いかけてくるようにはなったのだが。


 それはともかく、この時代のミソギは大人しいのではなく、どこか雰囲気が暗かった。

 大人しいだけならばミソギの個性なので良いのだが、元気がないのは心配だ。


『大丈夫?』

『う、うん。ノナこそ大丈夫?』

『へ? なんで?』

『いや、なんだかテンション高いからさ……。お酒でも飲み過ぎた? お酒苦手で普段飲まないのに珍しいね』


 中学生なので、お酒は飲まないようにしている。

 体は大人でも、なんとなくだ。


『なぁに言ってるのさ! ミソギだって、かみ殺すって言いながらいつも走り回ってる癖に!』

『え?』


 5秒くらいシーンとなったが、ミソギは大声で叫ぶ。


『い、いつの話してるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?』

『おお! 元気じゃん! あれ? でも、声が震えているような? そんなんじゃ風紀委員長になれないよ?』


 ミソギは風紀委員長になるのが目標だった。

 実際になれたのかは不明だが。


『お前えええええええええええええ!! ぶっ飛ばすぞぉぉぉぉぉ!!!!』


 深夜という時間帯に似合わない大声であった。


『ちょっ! なんでそんなに怒ってるのさ! それにそこは、かみ殺すよでしょ?』

『もうっっっっっ!! そういうのが嫌なんだっつぅぅぅぅぅの!!』


 ミソギは再び叫んだ後、息を切らせる。


『私、なんかしちゃった?』

『ノナは、Web小説の主人公なの!? 無自覚系主人公なの!? あれなの!? 無双系なの!?』


 物凄い早口での突っ込みを受けた。

 なんだか、凄く安心する。


『ウェブ? ああ! 携帯小説ね! ミソギそういうのあんまり好きじゃないって言ってたのに、読むようになったんだね!』

『本当に今日どうした!?』



 しばらくすると、ミソギは落ち着きを取り戻すと同時に、先程の元気がない声に戻ってしまった。


『というか、ごめんね! 夜中に電話かけちゃって!』

『いや、それはいいんだよ……。仕事もさっき終わったばかりだし……』

『さっきまでって、もう少しで0時なのに!? 働くの好きだねぇ』

『な、何言ってるの? あ、冗談だよね? それに、遅くまで働いてるのは、ノナだってそうでしょ?』

『私? 私は辞めたよ!』

『はぁ!? えっ!? 嘘でしょ!?』

『辞めた辞めた! なんか怖い人いたし!』


 ミソギは、ノナも遅くまで働いていると言った。

 怖い人がいる中で、更にはこんな時間まで働くなんて、あり得なさすぎる。


 この時代のノナは、仕事が楽しかったのだろうか?

 仕事を辞められなくて死のうとしていたその行動から、それは矛盾する。


 もしや、この時代のノナは2週間前に退職の意思を伝えれば必ず退職できることを知らなかったのだろうか?

 あの上司も知らないようだったので、その可能性は高いかもしれない。


 ということはだ。


『もしかして、ミソギは仕事辞められなかったりする?』

『どうだろう? 退職なんて考えたことなかったし……』

『じゃあ、今の仕事が好きなの?』

『好きな訳ないじゃん……』

『じゃあ、どうして辞めないの?』

『辞めないのって、それって転職しろってこと?』

『あ、多分そう! 仕事変えたりするのもいいかも!』

『ここ以外で働ける所なんてある訳ないじゃん……。私何やっても駄目だからさ……。ノナだって私と同じこと言ってたのに、突然どうしちゃったの……?』

『気が変わってね! それより、今度の日曜会わない?』

『急だね!?』

『うん!』

『に、日曜……。出勤にならなければいいんだけど……』

『日曜も仕事するの!?』


 この時代のノナも、日曜日に仕事をしていた日があったのだろうか?


『ま、いいや! じゃあ、デパートに行かない?』

『で、デパート!? 飲みじゃなくて!?』

『フードコートでもジュース飲めるよ! ゲームセンターとかもあるし、ミソギもそういうの好きだったじゃーん!』

『い、いつの話をしてるの……? いつもお酒飲まなくても、ほとんど居酒屋なのに……』

『駄目?』

『い、いや、いいけどさ……フードコートに、社畜2人が行ってもいいのかなって……』

『社畜? ああ! 働いてる人のこと? だったら、別に行く人もいるんじゃない? それに、私はニートだから大丈夫だよ!』

『そ、そうだったね……』


 それから色々と話し、日曜日にミソギと会うことになった。

 ノナは当日を楽しみにして、通話を切った。

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