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アカデミーライフ  作者: 秋月 葵紗良
序章 『学園島へようこそ』
3/4

2.突然の事件

 さて、どうするかな。

 

 ここがどこか、とかは分かったものの、どうしようもない。


 一応、スマホと財布は持っている。お金は使えそうなので安心したが。

 

 ……一旦、状況を整理してみよう。


 高校生だったぼくはトラックにひかれて意識を失い、目が覚めたら大人の姿になって、この島にやって来ていた。

 

 この島は「学園島」という人工の島で、六つの学区からなる。

 在住しているのはおよそ三千人の学生と少数の大人。この大人たちが、各学園の理事長を行っている。

 

 もともと、高齢化や人口減少による経済の弱体化を抑えるため、子どもに早くから様々な経験をさせる目的でつくられた島だそうだ。

 

 学生たちが島を離れることはほとんどないので、スーパーやコンビニはもちろん、遊園地などのレジャー施設まであるらしい。そのため、観光客も多いのだとか。


 そんな島が造られたなら、ニュースになりそうなものだ。だが、聞いたことがない。


 やはり、ここが未来だというのはありえそうだ。

 だが、大人の姿になっている以上、タイムスリップなどではなく、今日まで意識がなかっただけの可能性もある。

 でも、だとしたらなぜ、草原に倒れていた?


「あの、すみません」


「えっ、あ、はい」


 突然、背後から声をかけられた。

 

 振り向くと、女子高生が立っていた。

 金髪でありながら、整った顔立ちと落ち着いた声が清楚さを感じさせる。

 

 どこか大人っぽい彼女と向かい合うと、とっさに敬語が出ていた。

 まあ、ぼく中身は高一だしな。

 さっきの二人は初対面なのについタメ口で話していたけど、それも年が同じくらいと感じたからだろう。


「違っていたらすみません。……マスターの方ですか?」


「……はい?」


「失礼。言葉が足りませんでした。本日より学園島理事会会長、そして全学区総合管理者をお務めに  なる方ではありませんか?」


「違いま……違うと思います」


 何かすごい言葉が聞こえてきたが、何も知らないぼくがそれに該当することはまずないだろう。


「そうですか……。しかし理事長に見せていただいた写真と似て……」


「すみません!」


 突然、大声が響いた。見ると、さっきの姉妹のうち、姉だけが走って近づいてきていた。


「雪乃ちゃん、どうしたの?休日に舞依ちゃんと一緒じゃないのは珍しいね」

 

 そういえば、姉妹の名前を聞いていなかった。

 いや、あの状況で尋ねたらますます怪しまれたか。


 姉は雪乃、妹は舞依というらしい。

 

 ふと雪乃の顔を見ると、悔しそうな、悲しそうな表情をしていた。


「何があった?」


ただ事でない様子を見て尋ねると、雪乃は息を整えないまま告げた。


「妹が、誘拐された」













「どういうことだ?ぼくと別れた後に何が起きた?」


「いつもみたいに二人で帰っていたんです。その時、走ってきた車が私たちの隣で止まって、降りて  きた大人の男の人たちに突然取り押さえられて……神様だ、神様だって言って、舞依だけ連れてい  かれて……」

 

 神様……?


「宗教団体か何かか……?」

 

 つぶやくと、話を聞いていた金髪の高校生もうなずいた。


「観光客のふりをして入ってきたのかもしれませんね」


「会長はどうしてここに?」

 

 雪乃は、目の前の高校生を『会長』と呼んだ。


「私は、この方を探していたの」

 

 人違いだったみたいだけどね。


「会長というのは?」


「あ、自己紹介がまだでした。わたしは七雲奏なぐもかなでといいます。桜ヶ丘学園の生徒会長  なんです。ほら、雪乃ちゃんも自己紹介して」


「い、今はそんな場合じゃ……」


「まずは落ち着くこと」

 

 奏が真剣な顔で言ったので、雪乃は口をつぐんだ。


「……わたしは白星雪乃しらほしゆきのです。出雲学園の高等部二年生です」


「ぼくは篠宮凪です。よろしく……?」

 

 言っている途中で、雪乃が頭を下げた。どうしたんだ?


「会ったばかりの、それも大人に頼むのはおかしいかもしれません。でも……舞依を助けてくれませ  んか?」


「……」

 

 大人なのは見た目だけだ。中身が子どものぼくにできることは限られている。

 何でもある程度こなせることが自分の長所だと思っているが、誘拐犯に立ち向かった経験など、あるはずもない。

 

 それでも、答えは決まっていた。


「ああ、協力させてくれ。必ず舞依を助けだそう」

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