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アカデミーライフ  作者: 秋月 葵紗良
序章 『学園島へようこそ』
2/4

1.大人の姿に

 暗闇の中で、爽やかな風を感じた。

 同時に、揺れた草に頬をくすぐられてぼくは目を覚ました。


「!?」


 驚いて、勢いよく体を起こす。


 そして立ち上がり、大きな違和感を感じた。

 体が重い。 それに、前より視点が高い気がする。


「……?」


 草原にたったまま、困惑する。

 辺りを見渡し、とりあえず、遠くに見えた建物の方へ向かうことにした。


 しばらく歩いて、住宅街のようなところにやってきた。


 窓にうっすらと映る自分の姿を見て確信する。


「……大人だ」


 ぼくは、大人になっていた。


 トラックに突き飛ばされたはずだ。 一体何が起きた?


 ……考えていてもしかたない。 町の人に聞いてみよう。


 そう考えたときだった。


「きゃぁっ!」


 どこかから走ってきた中学生くらいの女の子とぶつかった。彼女は尻餅をついて、ぼくを見上げる。

 そして、顔を青ざめさせた。


「ご、ごめんなさい!」


 彼女は立ち上がって深々と頭を下げると、急いで走り去っていった。


 怯えていた……? 

 大人になっているとはいえ、そんなに怖い顔してるか?

 それとも、混乱していてひどい顔してたのか?


 どうあれ、申し訳ない。


ふと、財布のような物が目に入った。おそらく、さっきの女の子が落としたものだろう。


「……追いかけるか」


 ぼくは財布を拾って、駆け出した。













「イラッシャイマセ」

 

 彼女を追いかけて、コンビニに入った。ロボットが店員をしていて、驚くと同時にますます困惑したが、今は置いておこう。

 

 ぼくとぶつかった女の子はすぐに見つかった。その子は、高校生と思われるもう一人の女子と一緒にいた。どうやら姉妹のようだ。ぼくが近づいていくと、彼女らはすぐに気づいたようだった。


「わざわざ追いかけてきて、何の用ですか」

 

 姉が、もう一人をかばうように立つ。相当警戒されているみたいだ。


「さっきそのことぶつかったんだけど、その後これが落ちていたんだ。この財布、きみのじゃない?」


「へ?」


 ぼくの返事に妹が間の抜けた声を出す。


 自身のポケットを探って、財布がないことに気づいた。


 姉が、ぼくの手から財布を受け取り、中身を確認した。中身を取られたと思ったのだろうか。


 妹も中身を確かめ、ぼくが悪い人でないと認識してくれたらしい。


「誤解だったようです。すみません」


「いや、気にしないで。知らない人がここまでついてきたら怖いよね」

 

 それじゃ、と振り返り、店を出ようとする。


「アリガトウゴザイマシタ」

 

 その声を聴いて、店員がロボットだったことを思い出した。

 意思疎通はできるのかな。


「すみません、一つ訊いてもいいですか?」


「ハイ」


「ここってどこですか?」


「……コンビニデス」


 ちがう、そうじゃない。


「迷子なんですか?」


 ロボット店員と話していると、さっきの姉妹がやってきた。


「そのロボットはコンビニ店員として働くためだけに作られているので、うまく会話できませんよ」


「そ、そうなんだ」


 なんか、恥ずかしくなってきた……。


「道……というか、いろいろと、君たちに訊いていいかい?」


「いいですよ。財布のお礼です!」


 妹が、明るい声で返事をした。だいぶ信用してくれたようだ。


「ここは第二学区、松星学園の自治区です」

 

 松星……? 聞いたことないな。

 そもそも大人になっているわけだし、まさか、ここは未来の世界ってことか?


「そもそも、ここは都道府県でいうとどこに位置するんだ?」


「……そんなことも知らずに観光に来たんですか?」


 だって、いつの間にかいたんだもん。仕方ないだろう。


「一応、神奈川県に属しています。人工の島です」

 

 島なんだ……。海とか見えなかったし、結構大きな島なんだな。


「島の特徴とかは?」


「……なんでこの島に来たんですか?」

 

 その後も呆れられながら、いろいろと聞くことができた。














「ありがとう、助かったよ」


「いえ、こちらこそ。わざわざ届けてくれてありがとうございました」


「そういえば、君たちも松星の生徒なの?」


「いえ、私は第三学区の出雲学園に、妹は第一学区の桜ヶ丘学園に通ってます」


「あれ、違う学校なの?」


「はい、妹が桜ヶ丘に行きたいって言っていたので」


「……」

 

 その会話を聞いて、妹のほうはどこか不服そうに見えた。


 二人は、第三学区に一緒に住んでいるが、学校は別らしい。今日は、買い物に来ていただけだそうだ。

 そろそろ帰宅するというので、ぼくはもう一度お礼を言って、二人と別れた。



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