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平民のち怪盗  作者: 参
47/63

47話 子爵令嬢(偽)うっかり落ちる、のちバレる

 魔石とまじない言葉で開いた金庫の底から手紙が出てきた。

 二重底になっていて、それは父から私に宛てたものだった。

 一枚目は箱の開け方。


「パパったら」


 もう開けてしまったものの開け方を書かれても。

 せめて信用金庫の方の開け方を教えてほしかったのに、よりよって目の前の箱の開錠条件なんて。


 箱は魔力の宿る魔石で最初の鍵が開く。

 次にまじない言葉。

 そして、時間場所を問わず、ナチュータンを第三者に明け渡すことという条件があった。

 ナチュータンの保護と維持を目的にし、信頼のおける人間に預けると、この箱は開く条件を満たすと。


「私に信頼の置ける人間がいるか、か」


 そんな細かい条件組み込めるのか疑問だったけど、それは続きに書いてあった。


 この箱はそもそも母の国のもので、母が最初に魔法をかけている。父は閉め方を知っているだけ。

 母は強い魔力を持つ人間で、魔法も自在だったという。

 箱に簡単に魔法を仕掛けられられるように。

 そして、強い力故に先のことも少し分かっていたらしい。

 元婚約者がナチュータンに目を付けることから、ニウが助けてくれるところも母は知っていた。それを父に伝えていた。

 多くの選択の中で、どんな方法であれ、ニウが私の味方をする未来は揺るがなかったらしい。そこを基軸に箱に条件をかけたと。


「ナチュータンを守ってくれるって分かってたの」


 ニウは確かにあの地の生き物のことを考えた上で保護し維持すべきと言ってくれた。今では正式な手続きを進めているはず。

 それなら、開錠条件はニウを指名してもよかったのに。


「まあ、今なら分からなくもないけど」


 いくら予知で見えていてもニウ個人を条件にしなかったのは、魔法にそういう条件をかけられないか、もしくはニウと私が信頼関係を築かないと意味がないと考えたからか。

 そこは書いてないから分からないけど、母ならそういうことを考えなくもない。



* * *



「すまない、開かなかった」

「そっか」


 ニウがおさえていた国立信用金庫の箱は開かなかった。

 当初、こちらが開けば同条件か、それ以下で開くと踏んでいたけど。私も一緒に行って片っ端からまじない言葉を言ってみたけどだめだった。魔石で第一段階は開いたから、仕組みは同じのようだけど、おそらく開ける為の条件がそもそも違うのだろうとニウは言う。

 ナチュータンの保護みたい条件だろうか。

 けど、その箱の中身がなんであれ、既にこちらが持つ手札としては充分に元婚約者を捕らえるに値した。

 だから、信用金庫の箱は元婚約者と義理母をどうにかしてから、ゆっくり考えるということに至る。


「怒られるだろうな」


 そして今、私はニウに内緒で元婚約者が活動の拠点にしている社交場の天井にいる。

 もちろん私の勝手で。

 どうしてもかんざしが諦められなくて来てしまった。

 私の真下に元婚約者と義理母がいる。


「王印を早々に取り返さねば……しかしどこに」

「私は触っていません」

「分かっている」


 この前こっそり頂いた王印がなくて焦るのは仕方ないだろう。

 元婚約者と義理母を見下ろしながら考える。

 義理母の髪には今日も簪が。


「にしても動きづらい」


 怪盗服は着てなく、今日は社交界の服だ。ニウの目を盗んで裏側に来て怪盗している。

 散々げえげえ言ってたけど、ラートステの作る怪盗服じゃないとしっくりこないんだから、だいぶ私も焼きが回っているなと感じた。


「あれは指紋対策をしていないし、私以外が乱用すれば計画がさらに狂う」


 推しにお願いしてニウの足止めしてもらっているとはいえ、早く戻らないと。

 いつも側にいるのは心強いけど、こういうとき不自由だから困る。あんまり裏側に長居しても汚れるのもあるから、ばれないためにもさっさと終わらせないと。


「ん?」


 嫌な音がしたな。

 みしりと軋む音。これは知ってる。ちょっとやばいやつ。


「やっぱやめ」


 戻ろう。これは危険。

 と、一歩下がろうとしたところで、私の足元は盛大な音を立てて崩れ落ちた。


「な?!」

「え?!」


 着地に成功したので痛みはないけど、破片でいくらか手を切ったかな。多少血が滲んでるけど仕方ない。それよりも落ちた場所がよくなかった。

 元婚約者と義理母の目の前だなんて。

 当然驚きに染まる二人。けど、存外相手側は冷静そうだ。


「フォントンディフ子爵令嬢が、なぜ……天井?」


 迷いましたの言い訳はきかなそうだし、どう言えば。何も暴動起きてないし、天井裏へ行く必要がない。


「……ヴィール?」

「!」


 がばっと見上げると義理母が信じられないものを見る目で私を見下ろしている。

 なんで分かったの。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


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