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平民のち怪盗  作者: 参
17/63

17話 お目当てを頂く

「お待ち下さい。何かメッセージが」

「え?!」


 そんなことしてないし、今までもしたことない。いつも怪盗参上しか書いてないよ。コメントなんて普段しないし。


「偽物はお返しします、と?」

「どういうことだ?!」

「そんなことは」


 伯爵が慌ててカードの当てられた商品を奪う。途端、顔が青く染まる。少しは隠そうとしないの。

 そして急にざわつきはじめる場内。

 一つ言っておこう。私は何一つメッセージを加えていないし、今日はカードをどこにも置いていない。

 どういうことだって、むしろ私が問いたい。どういうことよ。


「私にも同じメッセージが!」

「私にも!」


 怪盗のカードがある貴族たちが慌てて主張し始める。

 オークションに参加していた鑑定士がカードがあった商品を見て、贋作だと声を上げた。伯爵は震えていた。


「ドリンヘントゥ伯爵。これはどういう事か、ご説明頂けますか?」


 ニウが落ち着きながらも響く声を通した。他の貴族がずいずい伯爵に迫っている。

 彼は手に持つ書類を一旦、机の上に置いた。よりにもよって私の目の前の受取り用の机だ。

 ラッキーすぎる。伯爵ありがとう。

 ささっとすり替えた。

 伯爵はいつの間にか囲まれ、オークション会場の中心に移動している。会場の視線も全て持って行ってくれてありがとう。


「か、怪盗がすり替えたんだ!」

「怪盗は返すと書いているし、本物しか盗まない主義のはずだ」


 え、そうなの? 確かに本物ぽいのしか持って帰ってなかった気はしたけど。主義とかそういうのはない。

 でもこの騒動はチャンスだ。持ち場から離れて壁伝いをゆっくり進む。と、聴き慣れた声に呼び止められた。


「ヴィール」

「ニウ」


 これ絶対ニウ絡んでるでしょ。文句の一つでも言ってやろうと睨み上げると、さらに奥の壁際に追いやられた。

 裏側につながる壁だ。


「怪盗としてここから去るんだ」

「え?」

「屋根から行けば警備も薄い」

「なんで怪盗」

「怪盗の姿を出した方が真実味がある」


 やっぱりニウ絡んでるんじゃん。文句は後で聞くと言われ、私は壁の裏へ押しやられた。

 腹立つわ。せめてそういう作戦でやるって言ってよ。

 仕方なく、壁裏を通って屋敷の裏側へ戻る。


「怪盗が出たらしい!」


 裏側もバタバタ騒がしい。裏オークションの私兵も表側へ集まるようで大勢が廊下を走っている。

 粗方人が去るのを待って廊下に出た。対面の壁から屋根の上に出られるので、ここの移動はちょっとした手間。

 けど、これもラッキーなのか探ってた中で開けて入れなかった部屋が無造作に開いていた。


「うっわ、無防備」


 視界に入った部屋にはお金がびっしり。なにこれ、自力で金庫作ったの? 開けっ放しはどうかと思う。あ、でもさっきの私兵が見張っていたのかな。

 開いているなら折角なので中をチェックだ。この場合、この大金の中に何か隠してる可能性が高い。


「あったり~」


 書類の入った箱。書類の中身は硬貨のデザイン画と作る装置の設計図かな? んー、普通この手のものって王室管理のはずだったと思うけど。ひとまず持っていこう。

 再び主張激しく足音が聞こえた。少しばかりお金を頂いて書類と共に壁の裏側へ。


「中は無事か」


 間一髪。誰か一人でも残しておきなよと思いつつ、素早く上へ逃げた。

 手早く服を着替え屋根に登る。

 途端光が私に集まった。


「え?」

「怪盗だ!」

「まさかニウ」


 彼は怪盗がいると真実味がと言った。つまり私がこっそり怪盗として屋敷から去ることは、はなから選択肢にない。人に認識されてから去れと。わざと光当ててるの、本当ひどい。


「もう!」


 ラートステ仕込みのロープやらを使って逃げるとしよう。貴族の屋敷は庭に木々を植えているのが大半だから、その木々の間を使うのが慣れた手段。私兵も騎士団も木登りなんてできないから余裕で逃げられる。

 にしてもニウめ、後で覚えてろだ。

 騒がしい中、妙に敵意は薄かったような気がしたけど無視した。伯爵の敷地を抜け、屋根の上を飛び移動しながら悪態しか出なかった。

たくさんの小説の中からお読み頂きありがとうございます。


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