ギャルという生き物
雪樹もこちらの世界に適応するためにいろいろ見て回る。
そんな今日は碧流や卯咲子は大学や仕事で留守にしている。
夏花や凛音も仕事で今日は帰りは夜になるそうな。
暇そうな雪樹を見つけたのは今日はオフの人だった。
「暇だ、勝手に出歩いても土地勘などない」
「お、そこのキミ、話に聞いてる雪樹って人だよね?」
「…何だお前は」
彼女の名前は愛依、上の階に住むアイドルバンドのドラムスだ。
今日はオフではあるが、少し仕事で使う買い物に行こうとしたところらしい。
「うちは愛依っていうんだけど」
「ああ、上の階の住民か」
「もしかして暇にしてる?」
「そんな事は…ある」
「ならうちの買い物に付き合ってよ、仕事で使う服選びに行くから」
どうやら仕事で使う服を選びに行くとの事。
暇なら一緒に来ないかというお誘いのようだ。
どうせ暇なら他の街なども見て回れるという事もあり、承諾する。
「そう来なきゃね、んじゃ行こうか」
「一つ聞いていいか、どこに行くんだ」
「とりあえず今回は新宿かな」
「そのシンジュクという街で服選びか、分かった」
「そんじゃいざしゅっぱーつ」
そのまま駅に移動して鉄道を使う事に。
愛依は交通系電子マネーがあるが、雪樹は切符を買う事に。
あとで相談して雪樹にも交通系電子マネーを用意してもらうか考える。
「鉄道というのは凄いな、こんな大量に輸送出来るとは」
「雪樹の世界ってこっちに比べるとあれなんだっけ」
「ああ、輸送手段はあるが、こんなに大量は無理だ」
「技術を持ち帰るっていうのも大変だもんね」
「そうだな、だが僕はそれを成し遂げねばならない」
そんな話をしていると目的の駅に到着する。
日本一のターミナルステーションがこの新宿。
とりあえず人混みではぐれないようにしつつ愛依についていく。
「さてっと、予算はもらってるし何にしようか」
「こっちの世界は服だけでもこんなに華やかなのだな」
「ねえ、どっちがいい」
「…こっちの方が似合うと思うぞ」
「こっちね、あと三着ぐらいかな」
そんな調子で服選びが終わる。
帰りに小腹を満たすという名目でハンバーガーでも食べていく事に。
街にある店にそのまま入っていく。
「うちはダブチとアップルパイ、あとはポテトとフルーリーとジュースかな、雪樹は?」
「何を選べばいいのかよく分からん」
「そっか、ならまずは無難なところからかな、うちに任せて」
「なら頼む」
「そんじゃ席取っといてね」
そんなこんなで愛依に任せる事に。
雪樹に頼んだのはダブチとポテト、オレンジジュースとフルーリーだった。
デザートまできっちり頼むのは愛依らしさである。
「はい、どうぞ」
「すまない、それとこれはどうやって食べるんだ」
「こうやって紙を剥いで、こぼれないようにこんな感じね」
「ああ、それとこの芋は手掴みでいいんだな」
「うん、あとフルーリーはスプーンで飲み物はストロー使ってね」
「分かった」
そんなわけで二人でダブチとポテトを食べていく。
愛依はアップルパイやフルーリーまであり、小腹と言う割にはガッツリである。
その割には意外とスタイルがいいのが雪樹には不思議に映っていた。
「こちらの世界は本当に豊かな世界なんだな」
「そうだね、でも平和っていうのは戦うから手に入るんだよ、丸腰で平和は訪れないよね」
「お前、馬鹿そうに見えて意外な事を言うんだな」
「確かにうちはそんな賢くないけど、それぐらいは分かってるつもりなんだけど」
「だがそれはそうだろうな、丸腰の人間など真っ先に殺されるのが現実だ」
この世界の豊かさを噛み締めつつ綺麗に平らげる。
食べ終わったものをゴミ箱に入れて店を出る。
駅に向かう途中で迷っている人を見た。
「少し待ってて」
「分かった」
「あの人かな」
「あいつお人好しなんだな」
「確かこの近くに交番があったはず…」
愛依が道に迷っている様子の初老の女性に声をかける。
そのまま話を聞いてその人を交番に案内する。
どうやらやはり道に迷っていたようで、その人はそのあと無事に目的地に行けた様子。
「お前、お人好しなんだな」
「一応人助けはするようにしてるから、あとうちより交番とかに頼るのもやり方だよ」
「土地に詳しい人間に頼る、それは正しいぞ」
「それじゃ帰りますか」
そんなこんなでアパートへと無事に帰還した。
雪樹はお世辞にも頭のよくなさそうな彼女の人のよさを見た雪樹。
この世界の豊かさは自分の世界にはないもの。
だからこそ任務は必ず果たすのだと改めて思う。