とりあえず近場から
突然碧流の部屋に現れた亜人の忍者の雪樹。
事情を説明するために二郎のところへと向かう。
許可がもらえるかどうかは別としても、話はしておくべきだ。
一階のラーメン屋の二郎を呼んで話をする事に。
「というわけなんだけど…」
「異世界から来たねぇ、それで碧流君の部屋を拠点にしたいと」
「駄目か?」
駄目と言われるかと思いきや、反応は意外なものだった。
ただし条件付きという事らしいが。
「流石に家賃を払えっていうのは無理だから、代わりに何かやってもらえればいいよ」
「何かとはなんだ、何をすればいい」
「そうだねぇ、ならとりあえず僕の代わりに水餃子のタレを仕込んでもらえるかな」
「それでいいんですか?」
「うん、一度作れば一週間は持つから、週に一度作ってくればいいよ」
家賃は免除してくれる代わりに店で出している水餃子のタレを仕込んでくれとの事。
作り方は二郎の秘伝だが、特別なものではないという。
週に一度それを仕込んでくれれば碧流の部屋に住んでもいいという事だ。
「分かった、ではそれで手を打とう」
「ありがとね、可愛い猫耳のお嬢さん」
「あっ、今日用事があるんですよ、俺はそろそろ…」
「はいはい、とりあえず雪樹ちゃんだったね、碧流君の部屋の合鍵はあとで渡すから」
「すまない」
話はとりあえずまとまり雪樹は住まわせてもらえる事になった。
碧流は用事があるとの事で、その足でそのまま出かけていく。
雪樹は一旦碧流の部屋に戻る事に。
「あれ?碧流君は?」
「お前はさっきの、用事があるとかでどこかへ行ってしまったぞ」
「そういえば近いうちに発表があるって言ってたっけ、それの材料かな」
「それよりなんだが」
「ああ、そうだね、私は卯咲子だよ、よろしくね」
碧流の部屋にちゃっかり居着いている卯咲子。
結構よく入り浸っているのだが、自分の部屋はお隣りにある。
雪樹も自己紹介をした上でとりあえず話はする事に。
「雪樹って本名なの?」
「それについては機密事項だ」
「ふーん、でも確かに不思議な素材の服だね、それに本物の耳と尻尾か」
「あまりジロジロ見るな」
「それで雪樹はこの世界に何をしに来たのかな」
事情なんかも説明する。
卯咲子は技術を持ち帰るという事について、どうやって持ち帰るのかと思う。
それはそれとして少し近くに散歩にでも行かないかと誘う。
「近所に散歩に行くのか?」
「そう、技術を持ち帰るにしてもまずは近所からってね」
「ふむ、それもいいか、なら案内をしてくれ」
「分かった、服は…あとでなんとかすればいいかな」
「早く行くぞ」
とりあえずはアパートの近所に出向く事に。
ここは出版社が多くある街だ。
鉄道のある駅までも少し歩く必要がある。
「これは…どうやって動いているのだ」
「電気だよ、あとは化石燃料とか」
「電気?雷の事か?」
「まあそんな感じ、上手くは説明出来ないけど」
「むぅ、雷の力で動くとは、そんな技術が当たり前にあるのか」
とりあえずは近所を適当にふらつく事に。
卯咲子はそういえばと思い、近くのコンビニへ。
ネットで買ったもののコンビニ決済に行くようだ。
「なんだここは、ここは商店なのか?」
「うん、少し待っててね」
「こんなに物に溢れているのか、僕の世界とは本当に違うな」
「気になるものがあったら少しなら買ってあげるよ」
「ふむ、少し見てからでいいか」
雪樹が見ている間に卯咲子はコンビニ決済を済ませる。
卯咲子はネット通販などの支払いは基本的にコンビニ決済を使っている。
手数料などが取られないという事が理由ではある。
「これをいいか」
「牛乳なんだ、まあいいけど、それじゃ私もついでに」
「卯咲子は何を買うんだ」
「ハッシュドポテトだけど」
「ふむ、こういうものもあるのだな」
とりあえず牛乳とハッシュドポテトを電子マネーでお買い上げ。
その支払い方にも雪樹は興味を示した様子。
店を出てその場でそれをいただく事に。
「さっきのはなんだ?カードのようなもので払っていたが」
「交通系電子マネーだよ、これで買い物も電車とかバスにも乗れるんだよ」
「そんなものまであるのか」
「それについても説明かな、次に行くよ」
「分かった」
そうして卯咲子に近場を案内してもらった雪樹。
夕方には碧流も帰ってきて、夜を過ごす事に。
他の住民についてもいる時に紹介する事にした。
雪樹にとってのこの世界はまさに未知なる世界である。