TRPG的、物語の作り方と考察
物語を書く時の、『何かの足し』になれたら嬉しいです。
『初めまして』な方も、『お久しぶり』な方も、本日は拙作をご覧頂きありがとうございます。
『小説家になろう』さまには、様々な作品があると思います。
その中で私が『物語』を書くに当たって、ベースになったと思われるTRPGを通して、少しでも参考になればと短編を書いてみました。
冗長にならないように、短く面白く表現できたら嬉しく思います。
まず『TRPGとは何か?』を説明するよりも、実例を出した方が分かりやすいと思いますので、そちらを短く書いてみましょう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ここは織田家のリビング。そこに集まったのは、男女2名ずつの元同級生達だ。
久しぶりに近況を話そうと飲みに誘ったところ、昔懐かしいTRPGで遊ぼうという話になった。
休みの日程が合った本日、各々は自慢のダイスを持って、飲み物と食料品を買い込んできた。
Aくん「この面子、久しぶりだな」
Bさん「カラオケに、よく行ったメンバーだよね」
Cくん「懐かしすぎて、ルールとか忘れてるよな」
Dさん「私、このゲーム初めてなんだけど大丈夫?」
現在の時間は午前10時頃。ヤカンに火をかけ、人数分のグラスを用意する。
ここで酒を出しても問題ないが、TRPGとは頭を使うゲームだ。
可能な限り頭が回る状態にしておきたいので、それぞれが落ち着くまでシナリオの確認をする。
Aくん「織田、割り箸と紙皿もらっていい?」
歴戦のネカマもとい、女性キャラ好きなAがみんなのサポートに回ってくれるようだ。
二人して環境を整えるていると、三人のプレイヤーはキャラクターメイキングを始めた。
織田「はい、みなさん。作りながらで良いから聞いてね」
ABCD「「「「はーい」」」」
TRPGとは、『テーブルトーク アールピージー』の略である。
テーブルトーク……机を囲んで話す、アールピージー……役割を演じるゲームという意味になる。
RPGはビッグネームがたくさんあり、DQ・FFなど一回も触ったことがない人間の方が少ないだろう。
では役割を演じるとは、どういうことか?
サッカーに例えてみよう。「俺、フォワード」×11人…………。
キーパーいないわ、オフサイド引っかかりまくりだわ、勝てる気がしませんよね。
最近は分業が進み、盾(壁)役・アタッカー・補助・ヒーラー・魔法使い・その他など、一つの仲間に同じ職業を入れないのが、流行となっているようです。
織田「Dさん、大丈夫?」
Dさん「みんなが戦士をやってみたらって。私もやってみたいけど、どうやるのかな?」
織田「じゃあ、まず種族を決めよう。この中から選んで。適正もあるから、ある程度有利になる……」
Aくん「おいおい。それじゃあ、つまらないだろ? GMなんだから、公平な立場で見ないと」
織田「OK、調整役はAに任せた」
もつべきものは歴戦の女性キャラ使いである。
選べるのは、人間・ドワーフ・エルフ・ハーフエルフ・小人族かな?
あるキーワードを出すと、すぐにシステムが分かっちゃうし、この話を二次にしたくないので隠しておこう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ここはファンタジーの世界。
神々が争い眠りにつき、人々の暮らしは豊かになるも、モンスターに脅かされていた。
そんな中、いつしか『冒険者』と呼ばれる人々が現れ、『何でも屋』として活躍するようになる。
ある時はダンジョンに潜りお宝探し、ある時はモンスターを討伐し名声を得る。
その最たるものが国王であり、英雄王と呼ばれる可能性まであった。
Aくん「説明ありがとう」
織田「ご清聴、感謝します。みんな出来たー?」
ABCD「「「「はーい」」」」
織田「じゃあ、自己紹介をお願いします」
Dさん「えーっと、立花 茜 17歳の高校生。タピオカドリンクが好きです」
織田「あ、いや……。どこから突っ込んで良いか……」
Bさん「茜、こういう時は、キャラクターの種族・職業を言うの。というか私達、同級生だったよね?」
Cくん「上司のモラハラを嘆いて、赤提灯で焼酎飲んでたよな?」
Aくん「Dさんの事について、やけに詳しいな」
Cくん「た、たまたまだよ」
話が盛り上がるのは嬉しいが、夕方にはエンディングにたどり着きたいところだ。
初めて参加するDさんに、「面白かった」と言って貰えるようGMを頑張りたい。
Aくん「じゃあ、俺から見本な。種族はエルフで女性。精霊使い/狩人だ」
Dさん「次行ってみる。私の種族はドワーフ? 戦士で一般技能ってのもあるみたい」
Cくん「ドワーフって言うのは、ずんぐりむっくりな樽」
Dさん「樽?」
Cくん「とにかく頑健で、手先が器用な種族って覚えておけば良いよ。身長は低いけど力がある」
Dさん「だから樽?」
Cくん「お酒好きで、『肺胞―、肺胞―♪』って歌ってる」
Aくん「分かりにくい説明乙」
Bさん「じゃあ時間も押してるし、簡単に済ませるね。私は人間で神官/戦士ね」
Cくん「どの神様にしたの?」
Bさん「脱線は短めに。おマイリーを欠かさない所の神官よ」
Cくん「らじゃ。僕は小人族で盗賊/賢者」
キャラクターメイキングと、自己紹介が終わったので旅に出たいと思う。
さあ、冒険の始まりだ!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
織田「君達がいるのはファーストという村で、『旅立ちの夕食』という宿屋に泊まっている」
Aくん「俺達は、もう組んでるのか?」
織田「初めてパーティーを組んでから、三回目くらいの冒険だよ。組んだ理由は、たまたま同じ時期にギルドに登録したからで」
Dさん「ギルドって?」
Cくん「ここで言うギルドは『冒険者ギルド』だね。本来のギルドの意味とはちょっと違うけど、同じような職業の集団だよ」
Aくん「冒険者ギルドに盗賊ギルド。別に宝石商でも漁師でも、同じような組合を作ったらギルドって覚え方で良いよ」
織田「説明ありがとう。それで君達は仲間になったんだ。今回は、切迫した問題にぶち当たっている」
Bさん「もしかして、隕石が落ちてくるとか?」
織田「そうそう。地球滅亡まで後○○日……ってちゃうわー。世界観も違うし、隕石も落ちてこない」
Dさん「みんな凄い……。話すこと、全部決まってるの?」
Aくん「いいや、アドリブ。何でも思ったこと言ってごらん。大抵のことは織田が答えてくれるから」
織田「そこはGMでお願いね。ジーエムでもマスターでも良いから」
Dさん「はーい。ジーエム、その問題って何ですか?」
GM「それはね……」
Bさん「『宿屋に払うお金がない』でしょ?」
GM「ハイ、ソノ通リデス」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
キャラクターシートには二回分の冒険の報酬と、今までの掛かった費用を相殺して貰っている。
『毎日働くのが当たり前』という考えと、『冒険をしたら適度に休まないと』という考え方がある。
これはキャラクターを作るにあたって、個人で考える事とパーティーとしての行動がある。
装備も整えないといけないし、お金はいくらあっても足りないのが新人冒険者達だった。
Aくん「それで今回は、がっつり稼げるんだよな」
GM「ロールプレイング、ロールプレイング。女エルフだったよね?」
女エルフ「オホン。それで今回は、ちゃんと利益が出るんでしょうね」
GM「申し訳ございません。それが、今回これだけしか……」
ギルド職員が提示した金額は、相場よりかなり低いものだった。
村が緊急用に集めたお金が相場より低いのは、元々貧しい農村ということもあり、『残りは現物支給でどうにかならないか?』という相談もあったからだ。
断ろうとした所、その村の出身だったBさんが「助けて欲しい」と言ったのだ。
神官戦士「私、そんなこと言わないわよ」
GM「リピートアフターミー。助けて欲しい」
神官戦士「助けて欲しい」
GM「はい、言ったね」
神官戦士「はい、言ったね」
GM「もういいよ」
神官戦士「もういいよ」
GM「あなたは素敵ですね」
神官戦士「それほどでもないよ」
そんな事を言いながら依頼を受けたパーティーは、村長に話を聞きに行くことにした。
事前に聞いた話だと、羊が盗まれるらしい。ゴブリンの影も見たということで、討伐及び事件の解決を依頼された。
インテリ盗賊「その村まで、どのくらい?」
GM「徒歩で二日だよ。途中で野営出来る場所はあるし、冒険者は能力的にはエリートだからね」
樽戦士「エリートなのに、その日暮らしなの?」
GM「自由業だからね。毎日働かなくても暮らせるなんて、普通の人じゃ無理だよ」
女エルフ「これだけ多種多様な人が、一緒に仕事出来るのが特別なのよ。万馬券を当てれば、遊んで暮らせるわ」
GM「万馬券なら、パーセンテージダイスを二回振って、二回連続01が出たら考えるよ」
インテリ盗賊「それ、良いな」
GM「そんなシナリオで遊びたい?」
旅の描写をし、野営をしながら一泊して雰囲気を出す。
どうやら狼も出なかったようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
お昼近くなったので、五人は早めの食事を取ることにした。
やかんのお湯も、ポットのお湯も総動員だ。頼むから、カップ焼きソバは止めて欲しい。
暴力的な匂いが残るし、そこで追いマヨネーズは止めるんだ。
女性二人は、宅配ピザのお兄さんにお金を払っていた。ここ、俺の部屋なんだけど……。
GM「はいはい、食べながらで良いから進めるよ!」
女エルフ・神官戦士・インテリ盗賊・樽戦士「「「「はーい」」」」
GM「どこにでもある村です。羊を飼っているのは、ミルクと毛皮目的かな?」
樽戦士「羊ミルク? どんな味?」
GM「うっ……。その辺は、ご想像にお任せしま……」
女エルフ「あまり突っ込んじゃ可哀想なところもあるから、適度に流してあげて」
樽戦士「はーい。それで、敵はどこですか?」
女エルフとインテリ盗賊の聞き込みにより、ゴブリンの影を村の狩人が見たという証言を得た。
村長は報酬の他に、村特産のチーズを約束してくれた。
この村出身の神官戦士に言わせると、年に一度の祭りの時でさえ、薄い薄いスライスしか貰えないが味は絶品らしい。
樽戦士「絶品って?」
神官戦士「絶品って?」
GM「えーっと。半円に切って、どろっと落とすアレくらいの豪華さで」
神官戦士「ラクレットか! この依頼受けた」
GM「この茂みの向こうに、洞窟があるんです」
女エルフ「いきなりだな。足跡とかはないの?」
GM「じゃあ見つけられるか、サイコロで判定ね」
女エルフ「オラァ、クリットォ」
インテリ盗賊「大成功とでも思えば良いよ。クリティカル……会心の一撃みたいな」
GM「さんくす。この足跡は、複数の二足歩行の生物だね」
女エルフ「人間大?」
GM「少し小さいかな?」
村の狩人は「ちゃんと案内したぞ」とばかりに、足音を極力抑えて村の方に戻っていった。
茂みには獣道程度に抜けられる先があり、こちらのパーティーを隠すには十分だった。
GM「どうする?」
女エルフ「今何時くらい?」
樽戦士「まだ1時だよ」
インテリ盗賊「現実時間じゃなくてね」
神官戦士「ちらっと先の状況も見てみるから、どんな感じか教えて」
時間は現実世界と同じくらいで、お昼ちょっと過ぎ。
茂みの向こうには、ヒト2人が両手を広げて、悠々と通れるくらいの洞窟がある。
そして緑色で小さい二足歩行の生物がいた。
女エルフ「普通のゴブリン?」
GM「何をもって普通とするの?」
インテリ盗賊「そういう時は、持ってる武器を聞くんだよ」
樽戦士「ねえねえ、ゴブリンって何?」
GM「そこからか!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
はい。キリがないので、TRPGの話はここまでとしましょう。
物語を作るというのは孤独な作業です。でも、その先には読者がいるということを、忘れてはいけません。
世界設定もキャラクター作りも、イベントも描写も全ては作者の中にあるのです。
情報が少なすぎれば読者には届かないし、『僕の作る最強の世界設定』なんかを長々と語られたら興醒めです。
書きながら俯瞰で見て、その言葉が読者に本当に届くかを感じて、キャラクターとしてどう動くのかに反映させてもらえたらと思います。でもモンスターを見たからって、すぐに「SANチェッッッック」と叫んじゃダメだよ。
以上、違った角度からの『物語の作り方』でした。