座敷牢の弥生
だいぶ間が空いてしまいました(>人<;)
今年もよろしくお願いします
「誰か…助けて…」
何処からか微かに声が聞こえて来る。
私…弥生がここに捕まってどのくらい月日が経ったのだろう。
菜摘ちゃんが目の前で殺されたのを目の当たりにした私は、怒りと共に意識を飛ばした。
そして気がついたらここにいた…そう、座敷牢だ。
何度か抜け出せないか試してみたけど、本体はもちろんアストラル体もダメだった。
たぶん特殊な牢屋なんだろう。
今聞こえている声も、また私に不安を抱かせる為の一つなんだと思う。
その証拠にいろいろな事があるたび、私は今まで色んな事案に携わって来たせいで、私の精神は傷付き、すり減ってしまっていた。
ある時なんて、隣の牢屋に入って来た親子と仲良くなった途端に目の前で惨殺された。
本当に目の前で行われている事が現実なのか幻なのか…それすらもわからなくなってきている。
今回はどんな罠なんだろう…まあ、いいや。
今回は声を無視しておけば、通り過ぎていくと思う。だから寝て過ごせば…
そう思っていたのに、気がつけば罠は私の目の前にあった。
訳がわからない。無視して私は寝ていたはずだ。なのに…
私は件の声の主であろう少女を背中に隠し、アストラル面の底辺で見た事のある悪魔と対峙している。
夢の中なのか、アストラル面なのか、なんなのかすらわからない。
武器も持たずに私は何をさせられているんだろう…
とりあえず私の背中に隠れて震えている少女に声をかけてみる。
「あなたは誰?ここは何処か知ってる?」
「私は菜摘です。ここは何処か知りません。あなたはお母さんですか?」
またか…今度はかなり成長している。
今まで何度も菜摘ちゃんが登場している。
何かの実験なんだろうか。
「そんな大きな娘はいないよ…」
いろいろ試しているんだろう。でも今回は失敗だと思うよ。
だって、菜摘ちゃんて名乗られても実感が湧かない。
「私はね、今回関わるつもりはないの!みんな消えて!」
私は思いっきり叫ぶと、耳を塞ぎ、目を瞑り、しゃがみ込んで30秒数える。
「1…2…3…4………29…30」
私はゆっくり目を開ける。
期待としては全てが消えて元通りの座敷牢。が、理想的だった。
でも。
悪魔に引き裂かれて動かなくなった先程の少女と目の前に迫った悪魔だった。
私も引き裂かれて、そこでようやく意識がフェイドアウトした。
「………」
私は引き裂かれた感覚を未だ身体に感じながら目覚めた…
これでこんな経験も何度目だろう。
目の前で人が命を散らすのもたくさん見て来たけど、自分が死ぬ事もたびたび経験した。
私は何をさせられているんだろう…
これならいっその事本当に殺された方がマシだと思う。
だけど、それを訴える相手が現れてくれない。
たぶんこれは羽島の仕業だ。
だから瑞樹や睦月達が迎えに来てくれる…そんな淡い希望を最初は持っていた。
でもあれから数年経った今では諦めた。
助けてくれるならこんなにかかるはずがない…もう待ちくたびれた。
座敷牢にある布団に私は倒れ込む。
そう…助けは来ない。
私が約束を守らなかったから、私が素直にならなかったから…だからみんなは来ない。
私の心に段々と黒い靄のようなものが広がっていく。
私はもう考える事を止めた。
みんなごめんなさい。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ことり、と言う音に私は微かな覚醒を促された。
「んっ…」
自分の声が頭の中に響く。次に目覚める気はなかった…でも、まだ私の心が何かを感じたのだろう。
ただ、まだ目の前は真っ暗。瞼が重く、目を開けるのだけでも億劫だ。
それでも私は目をゆっくりと開けた。
薄暗く、やはり目を開けても大して変わらない。さっきの音は牢の前に置かれた食事の音だったみたいだ。食事と言ってもお椀が一つあるだけの質素なもの。スープだろうか?だだ…目を凝らして見ればまだ湯気があがっている。温かい食事なんて最近無かったのに。
身をなんとか起こすと、私はそれを手に取って口に運んだ。
温かい…中に麦や野菜が入っているお粥に近いスープ。一気に私は胃に流し込んだ。
心が少し落ち着く。
お椀をあった場所に戻した時だった。
「ずっと暴れるばかりで食事も摂らないと聞いていたのですが、間違いだったのですかね?」
気づかなかった!振り向くと、声の先には憎き奴がいた。
「羽島‼︎」
「久々に会いに来てみれば、意外にもまだ心が折れてない様ですね…そろそろ壊れてみませんか?」
憎き羽島が目の前にいる事で、私の視界が赤く染まっていく。
「ここから出せっ‼︎」
叫んでも私の腕は羽島に届かない。
「今日はお友達を連れてきたんですよ。誰だと思いますか?」
「友達⁉︎私には瑞樹と睦月と先生しかいない‼︎友達なんているわけない!」
冷静になれ、冷静になれ、冷静になれ!
私を迎えに来てくれるのは彼等だけだ…
「そうですか…ではこの子はそのまま廃棄でいいですかね」
そう言うと羽島は私の目の前にドサリと動かなくなっている誰かを放り投げた。
それは浅羽由里…私がかつて地下で働いていた時にペアを組んでいた同僚だった。
「由里!」
呼びかけてみてもピクリとも動かない。
廃棄だと言った。まだ生きている筈だ。
「由里は元同僚で友達じゃない!地下に帰して!私とは関係ないから…」
私は牢から手を伸ばして、由里の生死を探ろうとしたけど、微妙な位置で触れる事も出来ない。
そのまま膝を着くと私は頭を地につけた。
「お願いします…由里に危害を加えないで…ください」
縋るようにお願いした。なのに…
「いいですね〜そのお願いにはゾクゾクしますね。わかりました。ではこうしましょう」
助けてくれるかもしれないと、私が思った瞬間だった。
由里の身体に羽島が銃を突きつけ、ニタリと笑うとそのまま…
パンッ!と地下牢に銃声が響き渡った。
由里の身体から大量の血が流れた。
そこまでだった。もう私には私を制御する術はなくなっていた。羽島には届かない事は心の奥底ではわかっていても、牢に身体ごと何度もぶつかっていく私。
「羽島‼︎‼︎殺す‼︎」
身体中が痛いでも止まらない。
結局私は気を失うまで牢に身体を打ちつけ続け、叫び続けたのだった。
今回は少し弥生サイドを入れてみました
ご感想等ありましたらよろしくお願いします(*´ω`*)
少しずつですが、頑張ります




