油断
弥生は二人が帰ってから何度も子供の様子を窓越しに見に来ていた。
そう。私は何度も何度も…
「なあ、また見てるのか?」
後ろから声がする。
「睦月…」
振り向くと、子供の父親にあたる睦月が立っていた。
「見るだけならいいでしょ」
そう答えると私はもう一度子供の姿を目で追う。
「いい訳ないだろ。瑞樹達が戻って来るまでにやる事がたくさんあるんだ。俺だけでやれって言うのはおかしいだろ」
「敵対する人はもう判明してるでしょ。あとは仲間を作って、一緒に穴を探すだけじゃない。睦月に任せるわよ」
「だから、それがおかしいて言っているだろう。二人が帰ってから変だぞ」
睦月の言っている事はわかる。でも、今の私は気持ちがついて行ってない感じなんだ。
そう…なんか心の中がモヤモヤする。
二人が帰る時、なんか遠く感じたと言うか、なんか先生に瑞樹を取られる様な寂しさと言うか…よく分からない気持ちでいっぱいになった。取られるも何も最初から先生は、瑞樹の先生なのに。
「なあ、なんか悩み事あるのか?まあ、こんな世界で悩み事がない訳がないが、俺はお前のパートナーだと思ってるんだぞ。なんでも話してくれよ」
睦月が悲しい顔で私を見つめる。
わかってる…こんな事ではダメだって。
でも…
「大丈夫なんでもないよ。少しだけ時間もらえる?」
「わかった。少しだけだぞ二人が帰って来たらまた忙しくなる。それまでに終わらせる事がまだまだあるんだからな」
「うん。わかった」
私が素直に返事をすると、睦月は普段の仕事に戻って行った。
その後ろ姿を見送りながら、不思議に思う。
「なんで私達の子供なのに、眺めるだけで満足してるんだろう…」
独り言が口から飛び出す。
そうなんだ…瑞樹だって睦月だってそうだ。あの子は三人の子供だって言っていたのに、この窓からテレビの様に観るだけで二人は満足している。目の前で仮の母親に甘えている光景をみても、楽しそうに遊んでいるのをみても、幸せそうで良かったねと言葉にして笑うだけだ。
でも私は違う…そんな光景を見る度に心が張り裂けそうになる。なんでかはわからないけどそうなんだ。
しばらく眺めていると、仮の母親が寝かしつけて部屋を暗くして出て行った。
多分この時間からしばらくは、誰の出入りもない。だったら…
私はダメだと思いつつも、目の前の窓を扉に変化させてドアノブに手をかけた。
ガチャリとドアが開くと同時に子供部屋にドアが出現する。
起こさない様に静かに部屋に入ると、寝ている子供の頬にふわりと触れる。
体温を感じて私は嬉しくなった。
と、顔を覗くと予想に反して目が開いていた。
ヤバいと思った時には遅かった。
「誰?」
言葉は私に向けられていた。
頬から手を離すと、私は慌て誤魔化す。
「えっと、これはあなたの夢よ。私は夢の中の住人なの。ちょっと夢の中で遊ぼうと思って遊びに来ちゃった」
誤魔化しきれるかわからないまま、変な答えをしてしまった。内心焦りながらも笑顔で返す。
「凄いね〜お姉ちゃん。夢の中の人なんだ!」
「そうそう、私は弥生って言うの。あなたは?」
「私はね。菜摘って言うの!」
「菜摘ちゃんか可愛い名前ね」
よしっ!誤魔化せたと思った。
「夢の中ならまだ遊べるね!弥生ちゃん遊ぼうよ!」
彼女は遊び足りなかったらしく、そんなことを言い出した。
でも…私は今日は戻ることにした。これ以上の長居は危険だと思ったから。
「ごめんね菜摘ちゃん。今日は挨拶に来ただけだから帰るね。また今度遊ぼうね」
「え〜つまんないの。約束!明日遊ぼうね」
彼女の言葉に私は指切りをして、ドアを通り閉めた。
「ふう…」
まだドキドキしている…私はドアに背中を預けながら座りこんだ。
「瑞樹ごめん…約束破っちゃった。でももう一度だけ…お願い」
私は止める事が無理になっていた。
最近月一になってしまってます|・ω・`)コッショリ
スピードUPしなくては(*≧ω≦*)




