幸か不幸か…
もう一つのヒントも悩む所だ。
私は両親からどんな風にいろいろな事を学んだのか…
両親を正面から見つめた。相変わらずニコニコと私を愛しむ様に見つめているだけで、何も話そうとはしてくれない。
私が作り出したなら話してくれそうなものなのに…って言うか、これからの作戦にはそれが必要なんだけど。
そんな事を考えていると、ふわりと景色が変化する。そうだ覚えてる、ここは…昔家族で暮らしていた家。
小さい家ながらも私達家族は幸せに暮らしていた。いろいろな話をして沢山笑って沢山泣いた家…目の前の両親が昔のように動き始めた。そして、そこには両親と幼い頃の私もいた。
『なんでピーちゃん死んじゃったの?』
お母さんに抱きしめられた私は泣きじゃくりながら、小さな手のひらに動かなくなったインコをのせていた。
インコのピーちゃんが死んだのは小学4年生位だった。
お母さんはそんなわたしの頭をなでながら、困った様な表情をしている。
すると、隣にいたお父さんが私の顔を覗き込んだ。
『瑞樹…ピーちゃんもそうだが、生きている全てのものに死と言うものがある。ピーちゃんだけじゃ無い、我々人間にも平等に死と言うものが待っている。だが瑞樹はそれが不幸だと思うか?』
お父さんは幼い私になかなかの難しい事を言っている。だけど、小さな私は首を横に振った。
『みんないつかは死んじゃうなら違うと思うよ。だってピーちゃんはいっぱい私と遊んだもの!なのにピーちゃんが幸せじゃなかったら悲しいもの』
幼いながらもなんと言う返事を私は返しているのだろう?でも今の私でも同じ事を思うだろう。
お父さんは私の返答に満足したのか、私の頭をガシガシと撫でる。
『そうだ。死は平等だからこそ、その死が不幸で無いと証明する事が大切なんだ。命には短いものから長いものまでいろいろだ。だからこそ生きている今を大切にして、精一杯の生を全うする。それがわかれば命の大切さに気付ける。お父さんはそう思うよ』
『うん!ピーちゃんは絶対幸せだったよ』
私はお父さんとお母さんを交互に見ると涙を拭った。
だんだんと昔の私達は目の前から消えて、白い空間に私は一人になっていた。
そうだった…私はお父さんの言葉があっから二人が事故で死んだ時も二人は不幸じゃ無い。短くても家族で沢山の思い出を作ってきたんだと、私は動かなくなった両親の前で思う事にしたんだ。
幸せな思い出をいっぱい話して話して話して…
悲しくなかったと言ったら嘘になる。当時私はいっぱい泣いたし、落ち込みもした。
でも…両親を不幸だと思う事は無かった。
私の考えがあっていれば、彼等が浄化出来ないのは戦争による洗脳と死を受け入れないと言う共通点がある。
日本は負けないと言う洗脳からの不条理に加えて、負けないから自分が死ぬはずが無いと言う思い込みから自分が不幸だと思った事だろう。だからこそこんなに長く死を受け入れていないのだ。
通常でも自分の死を受け入れない場合があるけれど、それに戦争による洗脳がプラスされるだけで、考えが更に凝り固まると言った所なんだろう。
だったら何処を崩せばいいか…そう一点集中で『洗脳を解く』が正解だと私は思う。
それには…みんなのお父さんやお母さんが必要だよね。
さあ!ヒントは見つけた。あとは出口に向かうだけだ。
私は出口の鳥居を探す事にした。
そんな訳で私が静音さんの所で四苦八苦している時、先生はご両親相手に噛みついていた。
「なんで唐突にあいつを静音の所に飛ばした!あいつは俺の弟子みたいな奴であって、嫁候補なんかじゃ無い!」
いつもの冷静な先生と違い、私が突然飛ばされて…たぶん両親と言う事もあるとは思うけれど、かなり怒っていたみたいだ。
「正嗣さん、怒ってないでちゃんとお父様のお話聞きなさい。さっきアストラルの鍵の話には条件があるって言っていたでしょ」
芹さんがいつもの調子で話しながらも、真面目に先生を落ち着かせてくれている。
先生自身も慌て過ぎたと思ったのか、机の上に半分乗せていた身体を座布団に沈めてから深呼吸をする。
「落ち着いたな」
「ああ、話せ」
ぶっきらぼうながらも先生は聴く側にまわった。
だけど…
「話しは彼女が戻ってきてからだ。戻ってきた時条件を満たしていれば『アストラルの鍵』の話をしよう。だが、条件を満たさない場合は話す事は出来ない」
先生のお父様は頑なだった。つまり話すかどうかは私に完全に委ねられたと言う事だった。
「つまり瑞樹が鍵かどうかの試練を静音から受けていると言うことか…」
先生はお父様から話を聞くまでもなく、答えを出したようだ。が、お父様は否定する。
「鍵かどうかの試練では無い。単なる伊豆家の嫁になれるかどうかの試練だ」
「だから、そんな事の為に連れてきた訳では無いと言っているだろう!だいたい俺がもう伊豆を名乗っていないんだ。伊豆家の嫁もなにも無いだろう」
先生が机を両手で叩く。なんとなくいたちごっこを見ているみたいだ。
「いつものお前なら今の会話だけで大体の予想がつくのではないか?」
あくまでもお父様は冷静で、それに先生がいつもの冷静さを狂わされているみたいだ。
そこで先生がハッとする。
「そういうことか…」
先生も答えにたどり着いたようだ。大きなため息をつくと、胡座をかいた膝の上に肘をつき、拗ねたように横を向いて私を待つ事にしたようだった。
私に全てが託された事も知らずに、私は出口を探し始めていた。
ヒントが掴めれば出口が現れると思っていたんだけど…現れなかった。
赤い大きな鳥居は目立つし、静音さんも分かりやすいと言っていた。なのに、
「さっきからいろいろ場面転換してるのに鳥居が無いんですけど!」
寂しくなって叫ぶように独り言ちたりしてみたけれど、やっぱり鳥居は現れない…つまり、まだ何かがあるという事だろうか?
目の前で変っていく景色を眺めながら、近くにあった椅子を引き寄せ座ってみる。
景色はぐるぐると変っていくけれど、よく見ると同じ景色が何度も現れては消えている。
「つまり、まだヒントがあるって事ね…見つけてみようじゃない」
確認する為に私は声にして、まだ終わらないヒント探しに集中する事にした。
完全に書き貯めていたものが無くなりました( ̄∀ ̄)
なるべく間隔が空かないように頑張ります!




