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私のアストラル

私は静音さんの言葉にかなり焦った。

待って待って待って!今の状態って、先生が恐れていた状況って事じゃないの?

「えっと…静音さん。嫁ってどう言うことですか?それも伊豆家いとうけって?」

初めて聞く名前だ。先生は上田で…⁈そうだ、先生養子に入ったって言ってた!私が一人でぐちゃぐちゃ考えていると、静音さんが大きなため息をついた。

「正臣はその話も省きおったのか…伊豆家も知らないとは。まあ、それは正嗣の責任か」

静音さんはぶつぶつと呟きながら、ついて来いと歩き出した。幽霊たちは静音さんが歩き出すと二つに別れ道を作り出した。私は慌ててその後ろを追いかける。

「いいか、伊豆家と言うのは今でこそ拝み屋と名乗っているが、かつては陰陽師に繋がる家系じゃった。だが、そこから枝分かれし幽世かくりよに特化した今の立ち位置を得た家じゃ」

たぶん幽世と言うのがアストラル面のことだと思う。陰陽師と言う人たちがいるのは知っていたけれど、先生の家はそんな家系に繋がる家だったんだ…拝み屋とはなにが違うのかはよく判らないけど、だから幽霊たちを成仏させるのが条件?でも先生ではなく、なんで私なんだろう?

「静音さん、それって…もしかして嫁になるのがアストラルの鍵の事を話す条件なの?」

「話してやりたいが、それでは妾が正臣に怒られるからの。先ずはこの試練を乗り越えてからじゃ」

そう言って静音さんは腕を振り翳すと、目の前に一つの赤い鳥居が現れた。

「お前一人でこの先に進むのじゃ。出口にもこれと同じ鳥居がある。目印としてはわかりやすくなっておるぞ。中には皆を成仏させる為のヒントが沢山あるからな、それを探してくればよい。そうじゃな…帰ってきたら全てを話してやってもよかろう」

「えっと…他には選択肢が無いと言う事ですか?」

この先生に怒られそうな状態を回避出来る抜け道はないだろうか?そんな気持ちで確認してみるが、あっさりと返事がくる。

「これ以外になにがある」

はい…行くしか無い様です。先生にごめんなさい!と謝りながら、私は鳥居を飛び越えた。


鳥居の中に飛び込むと、そこにはたくさんの子供たちが公園で遊んでいた。

ブランコで遊ぶ子供もいれば、砂場で山を作っている子供もいる…でもこれは何なのだろう?

しばらく私は見惚れる様にその光景をぼんやりと眺めていた。

でもその光景は何処かで見たことがある様な無いような不思議な感覚だ…その答えが出ないまま、なんとなく私は公園を一周してから一歩外に出てみる。と、突然景色が一転した。

今度は学校だ。教室で皆で授業を受けている光景だ。全員一心不乱に机に向かっている。

内容は平和について先生が説明するのを聞きながらノートに書き留めている。

その後もいくつかの場面が変わりいろいろな勉強や遊び、そして体験が目の前に広がっていく。

あの霊達の浄化に必要なものなのだろうか?

静音さんはさっきなんて言っていた?たしか浄化させる為のヒントが沢山あると言っていた。でもなんだろう…学生時代の思い出といった感じでヒントらしいヒントが見つからない。

見つからないどころか第三者として見た景色は自分達が経験した思い出とは違うなにか違和感みたいなものがある。ふと、昔に聞いた記憶が蘇る。

「そうだ。この景色…弥生に聞いたカプセルの中の経験に似てるんだ」

親と言うものを知らずに、みんな一律の情報を記憶にみせ、考え方などを同じ方向に向かわせる。家畜の様な教育…

戦時中の教育と弥生達の教育は似た所がある。そう、押し付けの様な教育…ううん違うあれは洗脳と言っていいと思う。

教育と言う皮を被った洗脳。あの洗脳を振り切って真実と向き合う。相当難しい気がするけど、ここにどんなヒントがあるのだろう?

でも…今、未来の世界と戦時中の彼等になんの接点も無いはずだし、大切なのはアストラルの鍵のはずだ。

なのに私の頭の中は接点を探してしまう。

そんな中でも周りの景色は変化していく…早くヒントを探し出さないと。

そうなのだ。こう言う体験は焦れば焦るほど、ヒントや真実から遠のいてしまうのが常だ。こう言う時は切り替えが必要だ。

私は目を瞑ると、大きく深呼吸をして身体中に酸素を行き渡らせる。気持ちに変化が現れるのを感じて私は一気に眼を開いた。

見事に景色は一変していた。

そこに広がっていたのは…

私の頬に涙が流れる。

「お父さん…お母さん…」

私の両親は昔事故で亡くなっている。

そう、弥生に出会う少し前に。

そんな二人が私の前に立って優しく微笑んでいる。

「なんで二人が…ここに…」

二人は何を話すでも無く優しく微笑み、そして愛情に満ちた眼で私を見つめる。

そうか…両親が現れると言う事は、

ここは私の記憶で作られた、私だけのアストラル面なんだ。そして私の中に彼等を浄化させる為のヒントが眠っていると言う事だ。

だったらヒントは私の中にある。

まず両親が現れた事から検証だ。私は彼等を浄化させるにあたって洗脳を解く事が必要だと思った。それは子供の頃からの教育をやり直さないとなかなか無理だとも…弥生達の場合は話をする事によって、私達との違いを少しずつ知っていったけど、今すぐに浄化するには時間が足りないし、対象が多すぎる。

だったらでき得る方法は?

意外に難しいかも知れない…一度で全員を納得させて浄化すると言うのは。

神様だってそうだ。日本にはいろいろな神様がいて一人一人が信仰も違う。アストラルはそんな信仰の数だけいろいろな姿に変化する…んっ?

そうだ!アストラルの世界は人々の想像の数だけいろいろな世界が広がっている。そう、アストラル面は無限の世界。

そしてここが私のアストラル面だとしたら、送り出した静音さんがいたあの場所もアストラル面…。だったらこの方法は有効だ。

あとは…内容だ。

私はもう一度目の前にいる両親に向き合うことにした。

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