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授業再開

午後の授業は意外な程簡単に進んだ。

「予想より早く開いたな。生徒としては上出来だ」

先生も私達の成長に驚いている。この調子で先生も私達を信用してくれるといいのだけど、

「さあ、向こう側にはお前達の言う旧人類…羽根の無い人間たちがいる訳だが…このまま向こうへ行ってもアストラル体の俺たちは見えない。自由に動き回る事が出来ると思っているだろう」

「俺たちは今の生活になる前はよくアストラル体でこっちまで来てたから、大丈夫なんでは?」

睦月が答え、隣で弥生も頷いている。

「そのドアはアストラル体では開かないぞ」

「「「えっ⁉︎」」」

それを聞き、慌てて私達はドアを開けようとする。私達の手はスルッとドアノブをすり抜けた。

「先生〜どうするんですか?」

弥生が涙目で訴えてくる。

「瑞樹、俺たちが弥生達の住む空間に入る時どうしたか覚えてるな」

私は頷いて答える。

「先生が鹿に入って実体を手に入れてからあけました…」

「そうだな。だったら今回はどうする?それも開けた瞬間に向こうに人がいた場合、目の前に扉が出現する所を目の当たりにする事になる。目撃した人物によっては速やかに通報される」

「でも開けてみないと、本当に向こう側と繋がっているかもわからないです」

弥生が口を尖らせて答える。

「だったらどうする?通常家の中から外を見るにはお前達はいちいちドアを開けて見るのか?」

「窓?ドアを作るのではなくて窓を作ると言う事でいいのか?」

今度は睦月が答えると、先生がにやりと笑った。

「そう言う事だ。見るだけでいいなら、ドアを開ける危険を犯す事はない。窓から覗くなら安全にいくらでも見る事ができる。だったら最初から窓を創ればいいと思うだろうが、これからの練習を兼ねてだったから扉で練習して貰ったんだ。そう言う事で窓に作り直す」

「見るだけか…」

ちょっと残念だけど、アストラル体の場合でも触れられる訳ではないから、そこが妥協案だろう。

「どこでも自由に行けるドアだったらいいのにね」

「あっても一緒だ。他人に姿を見られてはダメだからな」

「そうだよな…俺達は陰からあいつを見守るんだからな。姿は絶対に見られてはダメなんだよ」

睦月が自分にいい聞かせる様に呟くと、弥生も頷いた。

「大丈夫そうだな。だったら早速窓をつくってみろ。簡単だろ?今のお前達には」

「「「はいっ!」」」

私達はそれぞれに自分用の窓を作った。

そして…

「あれが二人の…」

窓の向こう側には、すやすやとベビーベッドで眠る可愛い赤ん坊がいた。

「あぁ、間違いない。俺たちの子だ…」

「瑞樹、二人じゃないよ三人の子供なんだからね」

弥生が幸せそうに笑いながら、私も一緒だと…私の子供でもあると言う。

そんな事を言われると、私も満更ではない様で窓の向こうにいる赤ん坊がさっきより可愛く感じてくるから不思議だ。

「いつか抱き締める事が出来るといいね」

私が答えると、弥生は思ってもいなかったのか、弥生は目を大きく見開き、

「そうだね…」

と答えると、気持ちを新たにする様な顔をして、未来を見据えた様にもう一度赤ん坊を改めて眺めた。

「そろそろ帰るぞ。これからここは繋がっているからいつでも眺める事ができる。だが、抱き締める未来を目指すなら、ここで満足せずに動く覚悟はできたか?」

先生の言葉に弥生と睦月は首を縦に振った。


元の部屋へ帰ってくると、先生は次の段階の話へと移った。

「次は探索で必要な探査などの方法だ。いろいろな場所へ行っても、それが俺たちが求めている場所かどうかわからなければどうしようもない。そしてなにより探査が使える様になれば、敵味方の判断も容易になる。」

先生の言葉がどんどんファンタジーと言うか、魔法を使う様な感覚になってきているきがする。たしかにアストラル面自体がファンタジーっぽいし、そもそも私達がいるのは未来なのだから、もうファンタジーって言ってもいいのかもしれないけど…

「私達って…魔法使いを目指してるみたいだね」

私が思っていた様な事を弥生が言葉にしてくれた。同じ事考えてたんだ。

「魔法の物語の原点はアストラル面なんだよ。そう感じるのは当たり前だ。前に話したなあの世を創り出すのもアストラル面だと…」

「はい、信仰や国によってあの世の姿が違うのは、人間の想像によってあの世が創り出されているからって話ですよね」

「そうだ。すべての想像がアストラル面では現実になる。だから魔法もアストラル面で造られた想像の中の現実だ。そして、アストラル面を利用できる者にとっては魔法も使えると考えればいい」

先生が知っているアストラル面と言うのは私達の想像のかなり先を行っていると言う事に今更ながら気付く。

睦月なんて口をあけてポカンとしている。

先生ってできない事無いのではないかと思ってしまうよね…。先生も私達が追いついてきてないことに気付いたようで、ゴホンと咳払いをすると、話を改めて話し始めた。

「まあ、アストラル面の事はまた機会が有れば話す。で、今回探査に必要なのは『結界』だ」

それは良く知っている。先生の家は結界だらけだから、ついでに私のスマホにまで結界が貼られているから。

でも…

「結界が探査に必要なんですか?」

「結界にはいろいろな使い方が出来るんだよ。以前俺の家の結界で黒い影を弾いた事があっただろ。あの結界は味方には反応しないが、少しでも敵対心があれば反応する様になっていたんだ」

「へ〜便利な結界ですね」

「と言う事は、自分の身体に結界を張る事で、触れただけで敵味方がわかる」

睦月が先生の言葉に答えを出した。

「睦月、正解だ。だが今回は敵に勘付かれたら終わるからな、微弱な結界を張る。そうする事によって敵に触れた時に、相手は静電気だと思うくらいだから秘密裏に敵味方を振り分けられる訳だ」

そうだ。この2日間で白の空間を創り出す探索方法を身につけた。次は味方を作る。それが優先事項だった。

「微弱な結界を身体に纏わせるのは、部屋全体に結界を張るよりも簡単だから安心しろ」

先生が言う通り仲間探索の結界は簡単だった。あっという間に私達はマスターした。


「瑞樹、俺たちは一度帰るぞ」

結界が出来る様になった途端の先生言葉だった。

「えっ?3日はいる予定の筈じゃ…」

「3日はこっちに入れる限界値だ。1回目の情報は手に入れた。限界までいる必要は無い」

「そっか…身体を置いてきてあるんだものね。用事が済めばなるべく早く帰るのが正しいね」

弥生も先生の言葉に同意している。

「そうだ。俺は良しとして、お前は自分の身体を放置するのは初めてなんだ。最小限にしておいた方がいい」

「わかりました」

ようやく会えたのに帰らないとならないのは寂しいけど…弥生達も次のミッションがある。そして私達も帰って次の準備をする。1日でも貴重だ。

私と先生は瑞樹と睦月に挨拶をすると、最初に入っていた動物の中に入り込み、彼らの拠点を後にした。

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