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もう少し更新続きます

次の日私は大和に昨日の出来事を話した。

「それってアンクが君を護ったって事なのかなあ?だったら君にそのペンダントを渡しておいて正解だったって事だよね?」

「そうか…そうかもしれないわね。今まで気付かなかったわ。ありがとう」

「いや、かもしれないだけだから」

以外に大和は遠慮深い、私が素直にお礼を言っても何かと理由をつけてお礼自体を遠慮してしまう。もっと素直に受け止めてくれてもいいのにと、私は思ってしまう。

「それはそうと、身体の方は大丈夫かい?これからの実験とはいえ、アストラル体を自分の意思で変化させてみたんだから」

「大丈夫よ。それに関してはなにも異常はないわ」

安心したのか大和は大きな息を一つ吐いたと思うと、表情が一気に緩む。

「でも、変化を持続させるのが大変みたいなのね。自分の姿を考えちゃうだけで、すぐに元の姿に戻っちゃうのよ。私は私じゃないって思っていても駄目なのよね」

「そうだね。通常自分の姿は意識しなくても、自分と思っているだけで形成されているからね。それを無理やり他人に変化させるんだから通常の考え方では大変だよね」

「そう、無意識と意識することは正反対だし、無意識は慣れって事だものね」

大和は顎に指を当て少しの間考えていたけれど、何か思いついたのか口を開く。

「催眠術なんてのはどうだい?」

「催眠術?」

「あれは掛けると自分が自分で無いと錯覚してしまうだろ?それはアストラル体自体に勘違いを起こさせているんだ。その時のアストラル体を見てみれば、おそらく自分の姿ではなく、自分でない他人に変化しているはずなんだ」

たしかにそれは正解なんだろう。自分ではないと思ってしまうってことは、器とアストラル体が拒否反応を起こしている状態。でも…それだと、本来の目的が果たせない。

「ごめん…それは無理。私が私であることは変えてはいけないの。じゃないと、弥生の世界を知ることも変えることも出来なくなる気がする」

「君が君であること?」

「そう、それは変えてはいけないと思うの。自分自身でいないと、私はこっちに戻って来れなくなるかもしれない」

「そうか…戻って来れなくなったら、俺が困るな」

やっぱり大和にばかり頼ってはいられない。自分でいろいろ試して持続させる方法を実践で探し出すしかないかもしれない。

アストラル面にはいろいろなレベルがある。いつも私が弥生と会うアストラル面。そこは時空と空間を超越する場所なのだが、それよりも下のレベルにもいろいろな面があるのだ。

このレベルにある場所の多くは意識が作り上げたもので、臨死体験をした人が訪れるのがこの面らしい。

「もしかしたら…」

「どうしたんだ?もしかしたらってなにかいいアイデアでも?」

「いつも私と弥生が会っていたアストラル面があるんだけど、それより下のレベルに意識が作り上げた無限のアストラル面と言うのがあるの。そこなら自分の意識を操りやすいかもしれない…」

「無限のアストラル面?」

「うん。たぶん通常で言う”天国と地獄”が一番わかりやすいかな?あれも人間が信仰によって意識的に作られたアストラル面なのよ。だからこそ、”キリスト教の天国と地獄”もあるし、”仏教の天国と地獄”もあるのよ」

「なるほど、それが無限のアストラル面ということか」

私が頷くと、大和はまたも考え込んでしまう。

「そこって安全なのか?」

「今までいたところよりは、安全とは言い難いわ。非人間的存在もたくさんいるけど、ちゃんと知性は持っているから意思疎通は出来るし。危険なのは下層区域にいるデーモン的存在だけ…たぶん最下層区域に行かなければ、それは大丈夫」

安全だとか危険だとか考えなかった頃、何度か弥生と二人で、冒険と称してその場所へは足を運んでいる。そこで私達は自分が考えた事がいろいろと現実になる経験をした。おなかが空けば目の前にご馳走が現れたり、疲れたと思えば目の前に家が現れると言うようなものなのだけど、あの頃の私達は夢のような場所ではしゃいでいた気がする。

でも、今がその場所の使うべき時なんじゃないかと思う。

「あそこは意識が強ければ何でもかなう場所なの。だからあそこでアストラル体を変化させれば大丈夫なんじゃないかって…」

「それならもしかしたら鏡のある場所もあるかもしれないな」

大和の言葉に私は首を横に振った。

「ううん。自分で鏡を作る事も可能な場所だから、探さなくても大丈夫なの。でも…あの世界で鏡を見たことが無いのがちょっと不安要素かもしれないな」

「どうして?」

「いろいろな場所に二人で遊びに行ったわ。でも、記憶を辿るとどこにも鏡があった記憶が無いのよ。もしかしたら、あの場所に鏡は存在してはいけないのかもしれない」

まだ私の予想でしかない。でも、あの世界は普通の世界と同じように考えてはいけないような気がする。特に鏡はアストラル面と大きくかかわっているものが多いからだ。

「鏡ってアストラル面において通過門として使われたり、透視や未来予想なんかも鏡を使ってアストラル面から情報を得るものが多いのよ。つまりこちらの世界から、アストラル面へアクセスする道具みたいなものね。それが向こうの世界にあれば、もしかしたらもっとすごい事が出来てしまうかもしれない」

「駄目なのか?」

「アストラル面は情報が少なすぎるのよ。それがもし、危険で禁忌とされていたら?」

「知らなかったじゃ駄目なのか?」

「私が帰って来れなくなったらどうするの?それでも大和はいい?」

「そうか…そうだよな。俺がそれは困る。それに瑞樹の身の安全の事を忘れていたよ…ごめんな」

「大丈夫よ。言い出したのは私だし…いままでアストラル面について危険だと感じた事も無かったんだもの。でも、考え出すと危険だって感じてしまって。やっぱり自分の精神力を鍛えて、長く持続できるようにしないと駄目ってことかしらね」

結局なんにも答えが出ないまま、私達の話し合いは終了してしまった。帰り際に大和が、また何か探すなり考えるなりしておくよ。と、行ってくれたのが私の支えになってくれたのは言うまでもない。

私は大和と別れると、その足で一つ思い当たる場所へと向かった。そこは私の情報源であり、情報の宝庫。それは一軒の古書店だった。

いつもの様にその古書店に入ると、自分の欲しい情報を求めていろいろな本をぱらぱらと読み漁る。そこには日本の古い伝記や海外の魔法書にいたるまで、なんでも取り揃っていて、私は自分専用の図書館の様に利用していた。

アストラル面の本はあらかた把握していた。その中に鏡の記述が無いかどうかを確認するが、アストラル面の通過門関連の記述はあるものの、無限のアストラル面で利用するなどの事はどこにも無かった。

「だめか…」

独り言を言いながら、私が持っていた本を閉めると同時に、後に気配を感じる。とっさに身構えながら後を振り返ると、いつもはカウンターで座っているだけの店主が立っていた。

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