次への想い
少し送れました〜すいません
次も少し遅れるかもです
次の日、窓の外の鳥の声に私は目覚めた。白い天井に白いカーテン、そして白いベット。白いサイドテーブル。すべてが白で整えられた部屋。白いのに全然汚れもいつもの結界の部屋と同じような雰囲気…。でもいつもの部屋よりも少し柔らかい空気がある。
「ここって…」
運ばれる途中で眠ってしまったので、ここに運ばれた記憶は無い。この部屋は何処にあるんだろう?起き上がって窓の外を覗いてみる。建物に囲まれた丸い庭、たくさんの花が咲いている…たくさんの花?今の時期って…夏の時期を過ぎて秋へ向かっている。
それなのにここの庭は春の時期のように花々が咲き乱れている。空を見てみるが、屋根の様な物も無い。温室でもないようだし…
そんな事を考えていると、後で部屋のドアがノックされた。
「はい」
ドアの外から声が聞こえる。
「起きているなら朝食を取りに来い。」
それだけ言うと、先生は戻っていったみたいで、足音が遠ざかっていく。
慌てて私は身支度を始める。昨日はそのまま寝かされていた為、身なりを整えると部屋のドアを出た。
ドアの外は細い廊下だった。今まで何度もここを訪れていたけれど、こんな場所あっただろうか?あまり記憶が無かった。それでも、一本道の廊下だったので迷う事は無かった。長い廊下を歩くと、その先に見覚えのある場所が見えてくる。
「えっと、こんな所に廊下今まであったかしら?」
そう、見覚えのある場所には出たけれど、今出てきた廊下は今まであった記憶が無い。
そんな事を考えていると、フッとその廊下が壁に消えた。
「えっ…何?これって」
私は訳がわからなかった。確かにさっき見た中庭もあまり見たことが無い。
「おい、来たならさっさとこっちへ来い。」
先生が奥の部屋から顔を出す。
「先生!今の部屋って何なんですか?」
部屋に入り朝食の整っている席に座りながら聞いてみる。
「ちょっとした空間の接続だ」
「空間の接続?それって空間移動ができるって事ですか?」
「ああ、特定の設定されている場所だけだがな。気付いていないかもしれないが、この部屋もそうだ。古書店の裏の部屋ではなく、別の場所に存在している部屋なんだよ。」
今まで出入りしていた部屋が古書店の奥にあると思っていたのに…実は別の場所にあると言われても実感が湧かなかった。普通に奥にあるドアを開けると存在していたから、疑問を持つことも無かった。
「それって、本来なら別の部屋に繋がるんですか?」
「いや、本来はドアしか存在していない。ドアの向こうは隣りの家だよ。」
つまり、この古書店は店と小さい座敷しかない、本来なら小さなお店だって言うこと?
私が考えていると、先生はついて来いとわたしを誘った。
考え事で箸の止まっていた食事を中断すると、先生の後についていく。
部屋を出た廊下の突き当たりに、先生が手を当てると、ふっと壁が無くなり突然廊下が現れる。
「この空間は別の家の一部を空間で繋げているんだ。俺の思いひとつで繋げる空間を増やす事も可能なんだよ。」
そういって先生はその廊下の先に向かう。やはりと言うか、その先の部屋もすべてが白色で統一されている。
でも…窓の外を見ると、さっきのベットの部屋と同じでたくさんの緑と花々に溢れていた。
「綺麗…。先生、ここって季節が違いますよね?ここって何処なんですか?」
「南半球と言いたいが、ここはアストラル面なんだよ。」
「アストラル面!?だって私達アストラル体ではないですよ?」
「そうだな。その辺は企業秘密だよ。ただ、ここは安全な場所にしてあるから安心しろ。じゃあ、部屋に戻って朝食の続きだ。」
先生は、私の想像以上に凄い人らしい…おとなしく先生の言うことを聞かないと。と、改めて思ってしまった。
そのまま部屋に戻ると何事も無く朝食を再開する。今日は珍しく日本食ではなく、パンと目玉焼きとスープ。そしてサラダ。
「和食じゃないなんて珍しいですね。」
「珍しい訳じゃない。と、言うか珍しいと言える程ここで朝食を取っていないだろ?」
「あっ、そっか。なんかよく食べている気がしていたけど、片手でまだ足りますね。」
なんだか長く感じていたけれど、先生と行動するようになってからそんなに経っていない事に、いまさら気付く。
ここがアストラル面だからなんだろうか?時間の感覚が今までもおかしくなった事はあったけれど、今回程感覚がおかしく感じた事は無かった。
「確かに和食の方が多いが、紅茶を朝に飲みたい時は、パンにしているんだよ。」
「うん、和食には日本茶、洋食には紅茶やコーヒーですよね。でも、先生のご飯何でもおいしいです。」
茶化したつもりは無かったけれど、先生が顔を赤くする。
「一人で暮らしているんだ。食事くらい美味しく出来なかったら、寂しいだろ。」
「先生でも寂しいとか思うんだ…意外です」
「まあ、この年まで独身だからな。たまには思うもんだ。」
ちょっと意外な一面を見た気がした。
「そんな暢気な話をしている場合か?少しはこれからの事を考えろ。このまま奴らの自由にさせておくのか?」
朝ののんびりした時間を終わらせるように、先生は真面目な話に切り替える。
私も何も考えていなかったわけではない。でも…何をすれば弥生達を助ける事ができるんだろうか。羽根の無い人類と、羽根を持つ人類。共存ができれば一番いい。でも、今までの事を考えると、共存と言う事は難しいと思える。弥生達は自分たちの卵の行き先を知ってしまったから、反乱には至らなかった。でも、自分たちの卵に執着しない他の人々は?
自分たちが家畜同様に扱われてきた事を許せるのだろうか?
「少し様子を見たいかな。とにかく少し未来の変化を待ってから、弥生達に会いに行きたいです。」
それしか私には今は言えなかった。
「会いに行きたいか…それはアストラル面にか?それとも弥生達と言う事は、向こうの未来の世界へか?」
「会えればどちらでも…アストラル面で会えるなら、様子を聞くことが出来るし、アストラル面で会うことが出来なかったら、向こうへ行く手段を考えたいです。」
温かい紅茶を喉へ流し込む。パンを食べ、そして決心を口にした事で渇いていた口の中が一気に潤っていく。
「私はどうしても弥生に会いたいです」
「わかったよ。だったら行くか?あっちの世界へ」
食事を食べ終え、紅茶を優雅にすすりながら、先生はさらっと答えをくれた。
「えっ?行くって?」
「だから弥生の時代へ行きたいんだろ?だったら行けばいい」
だって今まで行けなかったから…弥生とアストラル体を交換するような事までして行ったのに。こんなに簡単に行くかってどういうこと?
考える力を上げる為に、私は紅茶に砂糖を追加した。
糖分を追加して脳をフル稼働させようとするが、やっぱり良くわからない。
「だから昨日言っただろ?同じ物が両方の世界にあれば移動は簡単だと。まったく、お前の頭は昨日の記憶を保っていられないのか?」
あっ、そう言えばそうだった。組織ではないから未来そのものを変える力は無くても、行く事は可能みたいな事を先生は言っていた様な…昨日は気の張りすぎと許容量以上の情報量で、頭に残っているのは半分くらいだった。それでも重要な事は頭に入れたつもりでいたが、零れ落ちていた。
「じゃあ、こっちも何か同じものを用意すれば?」
「いいや、それよりも簡単なものがあるんだよ。」
「簡単なもの?」
「ああ、石のブレスレットだよ。」
「これ?」
私は自分の腕にしている弥生の作ってくれたブレスレットを外してテーブルに置いた。
「これは弥生のブレスレットとは石や配列は違うが、同じところがある。それは何だと思う?」
「えっと、弥生が作ってくれた?」
私が答えると、先生は頷いてくれた。
「そうだ。これと弥生の持っているブレスレットは両方とも同じ時に弥生が直感で作ったものだ。つまり、対になっていると言う事だ。」
「対…人間で言えば双子の様なものだよ。だから同じものを持つ以上に引き合う。それが引き合う力を使えば、俺たちが向こうへ行くのも容易だ」
対という物はそれだけで力がある。聞いてはいたけれど、それ程の力があるとは思ってもいなかった。ブレスレットを手のひらの載せると、まじまじとそれを見つめた。
こんな身近なもので私と弥生は今も繋がっている。
「だったら、すぐにでも向こうへ行きたいです。」
私は先生に素直な気持ちを伝える。でも、先生は首を縦に振ることは無かった。
「焦るな、まだ向こうの世界が変化しているかもわからないんだ。計画を立ててからでも遅くは無い。無謀に突っ走ろうとするな」
先生は私を優しく諭してくれる。私が頷くと久しぶりに頭を撫でてくれた。
「よし、決行は3カ月後だそれまで計画を立てるぞ。」
「はい!」




