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外道

いよいよ50話を突破しつつ敵も本格的に登場です。

お付き合いをお願いいたします

声に続いて何もない場所から本人が姿を現した。

「また会いましたね酒田瑞樹さん。そしてはじめましてですね上田正嗣さん。」

「ああ、はじめましてだ。と、言いたいところだが…初めてではない。お前は知らないかもしれないが、昔顔を合わせている。まあ、それはそれとして、今日はこんな特等席へのお招き心から感謝する」

先生が牽制するように、羽島へ挨拶をする。

だけど羽島は先生の言葉をあえてスルーする様に私に視線を向けニヤリと笑った。

その視線にぞくりとした私は、先生の拡げた腕の後ろへ少し隠れる様に移動する。

すると、私とは逆に、今度は羽島の背後から現れるように大和が姿を現した。

「大和も一緒にいたのか」

「それはいますよ。これは僕がセッティングしたんですから、上田さん先ほども言った様に、例の交渉以外は駄目ですよ。」

「ああ、わかってる…」

そう言いながら後からでもわかる位に、先生の声は戦闘体勢に入っている。いつもの先生の声より、かなり声のトーンが低い。

「大体の話は大和君から聞いています。それで、私に直接交渉とはどういう真意があってのことなんでしょう?この程度の交渉でしたら、大和君でも事足りたのでは?」

「まあな、大和でも交渉成立はしただろうな。その位の権限を与えているのはわかったからな。」

さっき大和に言った事とは逆の事を言っている…さっきは大和では駄目だって言って、ここまで案内させた気が…。そう思っていると、大和がそれを先生に指摘してくる。

「さっきとは逆の事言っていますね上田さん。僕には権限が無い、だから羽島氏に会わせろと言っていた気がするのですが?」

大和が先生を睨む、こんな表情の大和を見ると、本当に敵になってしまったんだと思わざるおえない。でも、もう過去に戻る事は出来ないんだ。そう、もう私と大和の道は二つに分かれてしまったから。

「大和君落ち着きなさい。彼は私に会いたかったんだと思いますよ。と言うよりも、宣戦布告と言うか、挨拶をしにきてくれたんです。ですよね?だからこそ大和君を利用した」

「ほんとにカマトトだなあんた。さっきは直接交渉の真意は?とか言っていたのに、俺の真意わかっているじゃないか。まったく喰えたもんじゃないな…そうだよ。あんたの顔を拝みにきたのさ、今までお互い存在自体は知っていても会った事は無かったからな。それに、瑞樹が世話になったみたいだからな、それの礼も兼ねてな」

「なるほど、それは失礼しました。本当ならあなたにご挨拶に行かなくてはならないのは、私の方でしたね。それをこちらまで出向いていただきましてありがとうございます。それにしては…瑞樹さんの事を大切にしているようですね。大和くんがイライラするのがわかりました」

羽島正人は先生の言葉をのらりくらりとかわしながら、小憎らしげに返事を返していく。

それに対して、先生は挑発に乗らないように慎重に対話している。

「あんたが俺のところにあいさつをしに来ない事くらいわかっている。俺に今までの計画の邪魔をされたくないからだろ。会わずとも、これまで色々邪魔させてもらったからな」

えっ…先生の言葉に、私は耳を疑った。私に手を出すなとか言っていたのに、先生はいろいろ手を出していたの?

「先生、邪魔したって…色々って?」

「瑞樹には関係ないところの話だよ。俺はこの世界に干渉するようになってから、すでに30年程は生きているからな。今までも関わりはあったって事さ。」

私の方を向かずに、相変わらず羽島正人の方を睨みながら先生は答える。

「だって!色々教えてくれた時にもそんなこと教えてくれなかったじゃないですか!」

「俺がやっていたからって、お前に真似されても困るだろ。命に関わる事もいくつかあった。だからこそ話せない事もある。その辺はスルーしておけ」

先生はいつも勝手だと思う。でも…それも私の事を心配してだとはわかっているから、話してくれないのは、私の為では無いと言う事。それをあえて私の前で言ったのは、目の前にいる羽島という人物が、先生にとっても大物と言う事なんだろうか…

「頼む。今は後ろで見学していてくれ」

「わかりました。今はスルーします。」

そう言うと、先生は少しこっちを向いてニヤリと笑って、再び向き合う。

「いい子だ。そんな訳で、今はこいつはいないことにして、思う存分話しても大丈夫だ。あんたも俺に言いたい事たくさんあるんだろ?」

「ええ、もちろん。何度か未来を操作しようとしたのを止められましたからね。でも、感謝もしているんですよ。止められたからこそ、今の未来が出来あがったのですから。最近まで、あの未来は確定していなかった。だからこそ、模索しつつも私は色々なアクションを起こしていました。それをあなたにいくつか止められましたが、そのお陰で今の未来が確定したと言っても過言ではありません。これまでいろいろな過程において未来がありましたが、枝分かれしすぎて、確定した未来が存在する事は無かった。それを確定してくれたのがあなた方なのです。ですから今日会う事にしたのはお礼ですよ。そしてもう一つ、例の提案も全て呑みましょう」

にっこりと笑い羽島は人差し指を1本立てた。今度は羽島正人の言葉に、私が愕然とする。私達のせいで今の未来が確定した?

「そうだな、それは俺の失敗だ。ここまで確実な未来の確定なんて今まで無かった。それを阻止できなかったのは俺の責任だろうな。確定していなければまだ簡単に未来を変える事は出来た。だが、ここまで確定した未来が存在してしまうと、小さな変更は可能でも大きな未来の変更は出来ない。」

スルーしろとは言われたけれど、話を聞いていると、果てしなく混乱してくる。私達が何かをした事で、未来が確定したと言う事なんだろうか?でも、今は私は口を挟めない。

「だからこそ、未来を少しでも変更できる存在の私達に、今回の提案をしてきた。そうですよね?」

「わかっているなら聞くな。そうだよ。ここまで来れば、もう後は何も出来ない。あんた達組織に頼むしかないと言う事だ。」

「わかってくださって嬉しいですね。そう、あの世界に干渉するにはもはや私達組織しか出来ない。それが唯一の真実です。」

そんな…でも、私達には何も出来ないんだろうか…。あれっ?でも、私は未来のあの世界に弥生になって入った。それなら少しは未来だって変えられるような…??

「瑞樹、今はあんまり考えるな。考えても混乱するだけだからな、後で俺が話してやる。」

先生には人の考えを読む能力があるのだろうか、私が混乱していたのを簡単に当てていく。それも私の方をまったく見ずに…って、読まなくても、私の考えなんてわかっていると言う事だとは思うけど。それでも、今の一言で、私の頭は軽くなった。

「その返答からすると、俺たちがわかっていない真実もまだたくさんあると言う事だな。わかった、今日はこれで帰る。だが、何もできないまま俺たちがいるとは思うな。必ずあんたの野望はひっくり返してやるよ。」

そう言うと、先生はくるりときびすを返すと、私の腕を取った。

「行くぞ瑞樹。話は終わったからな。」

「えっ、先生!まだ途中じゃないの?」

「終わったよ。もう話すことは何も無い。長居は無用だ」

「そ、それじゃあ、失礼します!」

引っ張られながらも、私は羽島正人と大和にぺこりと頭を下げつつあいさつをすると、そのまま先生に連れ去られるようについて行く。後ろを振り返れば羽島が笑顔で手を振り、大和が呆然とした様子で立っている…と、急に先生が止まった。

「おい!ぼけっとしてないで俺たちを元の場所まで戻せ!」

「あっ、はい!」

あっけに取られていた大和が、その言葉で動き出す。すっかり大和も先生のペースに乗せられているようだ。

「目隠しするなら早くしろ!」

「先生、なぜそんなに急に急ぐの?」

先生の大声に、バタバタとしだした周囲を他所に、私は先生に聞いてみる。

「話が終わったら、早々に退散する。それが危険を回避する手段だ。下手にだらだらとここにいると、何されるかわからないからな。」

「そうなの?」

「そうなんだよ!お前も帰るからって油断するなよ。緊張は解くな。わかったな!」

「あっ、はい!」

私も先生の声に背筋を伸ばしながら答える。そうだった、帰ると言っても、まだここは敵地。そして、また目隠しをされたまま、移動させられるんだった。その時間が一番危険だった。

「気をつけろよ。まあ、俺が気をつけているから大丈夫だと思うが、万が一という事もある。特にアストラル体にはなるな。何があっても」

「了解です。気をつけます」

そう言うと、先生はうんと頷いてくれた。

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