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結界とお茶

「先生、この部屋の外ではなくて家の外でないと駄目なの?」

大和の気配が完全に消えてから、私は先生に確認する。

「この部屋以外も簡易だが結界が張ってあるからな。下手をすると、ここへ直接アストラル体で進入される可能性があるからな。」

そうなんだ…でも、私は時々ここから電話をした記憶が?

あれ?

「先生、私何度もここから大和に電話していたけど…大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ。お前の携帯には俺の結界が張ってあるからな。」

さらっと、先生がびっくりすることを言った。私の携帯に結界?!

「えっと、いつ私の携帯に結界を?」

恐る恐る聞くと、先生は悪びれもせずに答えた。

「お前がここへ通うようになった頃だな。お前が席を外した時に、携帯があったから結界用のプログラミングをインストールしたんだよ。」

それって…勝手に携帯弄ってるって。まあ、中身見たわけじゃないし、いいけど。教えて欲しかったと言うか…先生らしいと言うか。

「って、結界ってプログラミングであるの?」

「機械が溢れている世の中だぞ。なくてどうする?コンピュータという物は便利な半面、簡単に見ず知らずの人と接触できるものだ。通常でもコンピュータウィルスなんかがそこかしこで動いている。だったら、アストラル体もそこから行き来出来ると思わないか?そう、できるんだよ。通信機器を使えば、離れた場所にもアストラル体を飛ばす事ができるんだ。だからこそ、機械には…いや、通信ができる機器には結界用のプログラミングフィルターが必要なんだよ。」

先生の言っている事はわかりやすかった。私は、今まで考えもしなかった事を反省する。そうか…私は、アストラル体の事を調べる時に、現代の事を考えずに調べていた。人間の生活が機械化と共に変わってきたのを考えれば、アストラル面のことについても、現代の機械化のことを考えていかなければならないんだ。

そろそろ携帯からスマホに替えようかな…

交渉のことで手間取っているのか、まだ大和は外から戻ってきていない。

先生は、一通り私に話し終わると、お茶を淹れにTeaコーナーに向かった。

そんな先生の後姿を見ながら、私は先生に話しかける。

「大和が古書店の中で電話をかけるとどうなるの?」

「奴らの通信網が進入できる穴があく。前に黒い影が中に入って来れなかっただろう?あれが、入れるようになる。」

「そうなんだ。でも、先生ならすぐに閉じれるんじゃないの?」

「結界は簡単に張りなおせるが、向こうに結界のパスを知られた場合、結界を張りなおすだけではなく、色々な設定も全て設定しなおさないとならなくなるんだ。面倒なんだよそれが、面倒はいやだから外で電話しろと言ったんだ。俺に負担をかけるなとな。あいつは俺のその言葉がわかったから、外へ行ったんだ。」

あれだけの大和との会話に、そんな内容が詰まっていたとは驚きだった。と、言うか大和も相当アストラル面の事に詳しいと言う事になる。私以上に…。

「まったく、大和の惚けっぷりにはびっくりよ…。完全に私騙されていたって事よね」

もう、悲しいを通り越して、自分の鈍感さに呆れた。

「だったら…私が先生に出会う前から私と居たんだから、その前に引き込んじゃえば良かったのにね。」

「まあ、お前の性格を見極めていたんだろうな。そのあいだに、俺とお前が繋がってしまった。向こうは焦ったんじゃないか?しくじったってね。まあ、その前に引き込もうとしても、お前の性格では無理だったんじゃないか?だからこそ、引き込む為のきっかけを捜していた。って所だろうな。」

「まあ、たしかに…弥生と繋がっていたのはもっと前からだし、その弥生達を苦しめている元凶が『ナチュラルバード』だって知ったら。私は、説得されても無理だったかも…」

「お前を引き込むなら、真実は言わずに弥生を助ける為の組織だと言えば簡単だ。だがお前を必要とするのは『ナチュラルバード』じゃない。羽島正人本人だ。そうなると、騙して引き入れてもお前を利用できなければ意味が無い。真実を知っても協力するような、きっかけが欲しかったんだろうな。」

「きっかけ…か。」

そんなに都合のいいきっかけなんてあるんだろうか?私は真実を知れば、絶対に断る自信があるのに…。

先生がそこでお茶を淹れ終わり、戻ってくる。ふわりと紅茶のいい香りが広がる。

そんなに紅茶は詳しいわけではないけれど、ここで色々な紅茶を飲ませてもらってから、少しは紅茶の違いがわかるようになってきた。と言っても、特殊な香りのあるものや、少しの味の違いだけ。でも、ここで知ったのは、先生の淹れるお茶が他で飲む紅茶より、かなりおいしいと言う事。

でも、今日の紅茶は今まで飲んだものとは違って、少し独特の香りがした。

「今度は何処の紅茶なんですか?」

「ん、これは、何処のと言うよりもブレンドだよ。」

「ブレンド?色々な紅茶を?」

「ああ、地方別で飲むのもいいが、オリジナルで好きな味にするのも楽しいからな。今日はアッサムに少し中国紅茶をブレンドしたんだ。」

受け取った紅茶を一口コクリと口に含んでみる。それはいつもの紅茶の香りに絡まって煙の香りがした。

「なんだか煙の香りがする…」

「おっ、よくわかったな。そうだブレンドした中国紅茶は燻製紅茶なんだよ。実はこの紅茶は単独だと強すぎてなかなか好まれないんだ。でも、こうやってアッサムなんかに少しブレンドすると上品な香りに変わる。好き嫌いが激しい紅茶だから、本当はストレートでなくミルクティーがいいんだが、今回は敵陣に乗り込む為の準備だ。つまり、薫製茶だから飲むだけで魔除けになる。」

「お香がわり?」

「そんな所だな。身体の中に煙を取り込むには、お香よりも簡単な方法だ」

確かに私もお香はアストラル離脱の時に使ったりするけれど、煙が強かったりと、少し苦手感がある。でも、紅茶なら煙が強かったりも無く、簡単に離脱した身体を護りやすい。

「いいかも。先生今度少し紅茶分けてもらえます?」

「いいが…茶器は家にあるのか?」

そういえば家で紅茶なんてティーパックくらいしか飲んだこともなかったことに気付いた。

「確かどこかに急須と…あとはマグカップならあるかな…?」

先生は私の言葉にふうと息を吐いたけれど、そのままにっこりと笑った。

「それがあれば大丈夫だ。紅茶なんてものは飲むことを楽しむものだ。わざわざ紅茶専用の茶器をそろえて、工程を楽しむ人たちもいるが、それよりもおいしい紅茶が淹れられる技だけ覚えておけばいいんだよ。」

「そうなんですか?」

「ああ、ティーパックだってマグカップに皿で蓋をするだけで、充分においしく淹れられる」

「そうなんだ。紅茶をおいしく簡単に淹れるコツか…」

弥生の世界を変えるのもそんなコツがあればいいのにな。と私は思いつつ、ゆっくりと口の中に紅茶をふたたび流しいれた。

そこに大和が帰ってきた。入ってくるなり、本題に入る。

「大丈夫だ。羽島氏が会ってくれるそうだ。」

「そうか…で、いつだ?出来れば今からがいいのだが」

「さすが羽島氏だな…今からがいいと言い出すだろうからと、今からで大丈夫だと言っていた。」

大和の発言に先生はニヤリと笑った。

「向こうもこっちの考えはわかっているようだな。だったら交渉もやりやすい。瑞樹、お前も一緒に行って大丈夫だが、おとなしく俺の後ろに控えていろよ。俺が羽島とやりあうからな」

私にそんな忠告をしながらも、すでに今から会う羽島という人に対峙しているようなそんな目を、先生はしていた。

燻製の紅茶…ラプサンスーチョン^_^

単品だと強いですが、ブレンドすると良いお茶です


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