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迷い

弥生とのアストラル体の交換を行ってから、すでに半年が過ぎていた。

何回かいつもの場所へ行ってみたけれど、何故か弥生にこの半年会う事が出来ないでいた。

前にも会えなくなった事はあったけれど、鈴を使うようになってからは順調に会う事が出来ていた為、この半年がとてつもなく長く感じるし、不安になる。

それでも今日は会えるかも…と、いつもの場所へ向かった。

弥生の事を考えながら、少しボーっとしながらフヨフヨと飛んでいたのは確かだと思う。でも、そんなに迷う程ではなかった。

なにに…たどり着いた場所は見た事もない場所だった。

いつもの何も無い空間に到着するはずが、今目の前に広がっているのは、ごつごつとした岩山と、丸裸の木々。まるで地獄を想わせるような景色…ご丁寧に遠くには誰かの墓まであった。でも、子供の頃時々弥生と遊びに行っていた地獄とは違った。

それに、先生に教えてもらった【夢の墓場】とも全然違う。あの場所は、一瞬で嫌な感じがするし、心を食べられてしまう。

でも…なにか不安に感じる部分がここにはある。それは何なのだろう?今まで関わってきたものと、何か関係している気もする。それでなくても、弥生の事を考えていて迷いこんでしまった場所。

ここが何だと言うのだろう…不安に駆られ、私は無意識に後ずさった。

「わかったわ…不安に思った原因。ここは人に…魔法によって意図的に作られた場所だからだわ」

周りに誰もいないのに私は、声に出してみる。自分に話しかけていないと、断続的に不安に襲われる。

これこそ魔法で作られた場所でもある証拠。魔法によって意図的に作られた場所は、限られた許可された者しか、基本的には進入できない。だからこそ、許可されていない者が足を踏み入れると、不安に苛まれる。

私は誰かの魔法の領域に、知らず知らずのうちに侵入してしまっていたと言うこと。

「まずい…早くここから離れた方がいいかも」

また誰かに話しかけるように口に出すと、私は、ここから出るために身体を反転させた。

どんどん不安が大きくなっている…と言う事は、作った人物がこの場所へ向かっていると言う事。このまま鉢合わせするわけにはいかなかった。

アストラル面で知らない人物と出会う事は極力避けた方がいい。

それも、先生が教えてくれたアストラル面においての処世術だから…。

そう思った途端だった。

「せっかく来られたのに帰るのですか?」

私の背後から声が掛かる。驚いて振り向くと、そこには知らない男が立っていた。

少し癖のある髪を癖が出ない程度に切り、それを自然に任せている感じの髪型に、グレーのスーツ。サラリーマンではなさそうな…スーツに違和感のあるすらりとした四十代半ばくらいの長身の男…そんなに強そうなイメージではないが、なにか眼の奥に怖いと感じるものがあった。

逃げないと…そう思ったのに、私のアストラル体は動く事ができなかった。

「あ…あなたは誰?」

かろうじてしゃべる事ができた。

「あなたと同じアストラル体になれるただの人間ですよ。坂田瑞樹さん」

自分の名前を呼ばれて一気に恐怖のメーターが上がった。

「なんで…私の名前を知っているの?」

私の事を知っている…でも、私はこの人を知らない。恐怖感がどんどん増してくる。ここにいては駄目だ。

そう思うのに、もがこうとしても身体が自由に動かない。

「そんなに私が怖いですか?」

「知らない人に知られているって普通でも結構怖いです…」

すこし睨むように強気意に出ながらも、私は少しでも離れようと…でも、やっぱり動かない。

金縛りにあったときよりも動かない…氷の中に閉じ込められている感じの方がしっくりくる様な感じ。

「知らない人?ああ、自己紹介もまだでしたね。私は羽島正人はしままさとと言います。名前くらいは知っていると思いますが…」

(羽島…!)

その名前は知っていた…そう、私の働いている会社の会長の名前だ。

会社でも名前しか皆知らない為、謎の会長として噂されていた人物…。

「知っています…『バードアイランド』、私の勤めている会社の会長の名前ですよね」

「よかった、知らないと言われたらどうしようかと思いましたよ。」

羽島は整った顔でにっこりと笑う。

「でも、顔を知らないので…本物かわからないですよね?」

羽島会長だと名乗る彼を睨むと、彼は「ひどいなあ、信用してくれないんですか?」とぶつぶつとつぶやいた。

「じゃあ、話を続ける上で一応信じるわ。で、その会長さんがこんな所にいるんですか?私になんか御用でしょうか?」

「アストラル面とはいえ、自分の会社の社員に挨拶してはいけませんか?」

「いけませんか?…って、私を動かなくしておいて、その上、こんな場所で。いけないも何も、怪しすぎです!」

馬鹿にされているとしか思えなかった…惚けたように笑う目の前の、『バードアイランド』の謎の会長。

「動けないんですか?私は何もしていませんよ。では…家までお送りしてあげましょうか?」

そう言うと、怪しく微笑んだ羽島会長は私のおでこを軽く押した。

その途端!私のアストラル体は引っ張られるように移動を始めた。

これは強制送還のいつもの感覚!

「まって!まだ、聞きたいことが…!!」

それでも、強制送還を開始した私のアストラル体は羽島会長からみるみる離れていく、向こうでは羽島会長がにっこりと手を振っていたが、すぐに見えなくなっていた。


「…。」

私はそのまま自分の身体に戻っていた。それも、すぐに取って返す様に戻ろうとしたけれど、アストラル離脱さえ、出来なくなっていた。

私の勤めている会社『バードアイランド』…そして、謎の会長『羽島正人』いったい何なのだろうか。

私は始めて自分の仕事場に疑念を持った。普通に鳥の研究をしている機関だと思っていた。でも…あの会長にあった後では、本当にそれだけなのか不安になってくる。

私と弥生を繋いだアストラル面、そして鳥の遺伝子…『バードアイランド』。全てにおいてあの会長が関わってくるのではないかと錯覚してしまう。

私達の世界は今どんな岐路に立っているんだろう…。

(一人で考えていても始まらないか、明日にでも、先生に相談して…大和は会長の事知っているだろうか…ううん、とにかく先に先生に相談)

そんな事を考えているうちに、私はアストラル離脱の疲れで眠ってしまっていた。

新しい登場人物来ました!

登場人物少ないなあ…私。

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