表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/90

覚悟

睦月が頑張ります

三ヵ月後、とうとう決行の日がやってきた。そう、見事に卵が育っていたのだ。三人との交配はあったものの、何故か睦月も私も二人の卵だと確信していた。その為、自分達の卵の行方を見失わないように、今日この日まで綿密に計画を立ててきた。

この施設に入るのは、産卵の当日。それも産卵は今から一時間も経たない内に終了する。だから、睦月が追跡するのはなんとかなるだろうが、そもそも、睦月一人で大丈夫なのだろうか…私は、産卵後半日はこの施設で、色々な検査をしなければならない為、アストラル離脱が出来ない。一時間程の睡眠は許可されていても、その一時間で睦月のところへ行って戻ってくるなんて絶対に無理。

とにかくこの半日は睦月一人で頑張ってもらうしかないのだ。

「頑張ってね睦月…」

おそらく今この上空に、アストラル体で待機している睦月がいるはずだと思って、つぶやいてみた。

すると、微かに鈴の音が聞こえた気がした。その音は私に頑張れよと、言っているようだった。


その頃、睦月は弥生の予想通り上空にアストラル体で待機していた。

「産卵施設ってこんな所だったんだな…」

男の睦月にとってこの施設は初めて見る機材ばかりが並んでいた。

「こんなところで女は産卵しているのか…」

弥生の順番がまだと言う事もあり、少し産卵部屋などを見て回る。病院と言うより工場と言う印象だ。卵を乗せる皿が付いたベルトコンベアが置かれていて、産卵するとそこから別の部屋に移動させると言う事だろう。

「もう少し情緒のある所だと思っていたんだけどな。これなら確かに母親が愛情どころか、卵の行方さえ気にしなくなるな。」

そんな事を考えながら、そろそろかな?と弥生のいる場所へ戻ってみる。

『頑張ってね睦月…』

ちょうど戻った時、弥生がそんな事をつぶやいた。自分の事を気にしているんだなと思い、自分の身体を置いてきた部屋にある鈴をチリンと鳴らしてみた。

その音に弥生が反応する。周りの奴にも聞こえたかな?とドキリとしたが、他の人は反応していなかった事に安堵する。

すると弥生が呼ばれて移動を開始した。向かう部屋は産卵部屋だ。

「さあ、ここからが俺の出番だ」

自分に言い聞かせるように睦月はつぶやくと、弥生の卵が乗せられるベルトコンベアの皿の横にドカリと座り込んだ。

そう、卵と一緒にベルトコンベアで運ばれるという寸法だ。これなら何処まででも追いかけて行ける。そして危険は無いと…。

「あっ…!」

少しすると、向こうで弥生が苦しみだす。補助の者達がそれを手助けしながらちょこちょこと動いている。そして十分程で産卵は終了した。まだ大して大きくない卵に補助の者が番号を打っている。『0047857249』そんな十桁の番号が自分達の卵に付いていた。

そして、疲れて横たわっている弥生を置いて、皿に乗った卵は移動を始めた。

「安心しろ弥生、俺たちの卵は俺が見守る」

聞こえないのはわかっていたが、睦月は弥生に叫ばずにはいられなかった。

しばらく卵と共にベルトコンベアで移動した睦月は、産卵施設の隣りにあるインキュベーター施設(孵卵器施設)に入り込んでいた。しかし、そのままインキュベーターに入ると思っていたのだが、そこでは一度選別の部屋が存在していた。何かを確認しているのか、スキャナの様な機械を通り、ある卵は右へある卵は左へと、自動的に振り分けられていく。

「なんでこんな所で…何を調べて選別しているんだ?」

アストラル体という事もあり、睦月も一緒にその機械を通り抜けてみたが、何かは判らなかった。ただ、多くの卵が左に選別されるところを、彼らの卵は右に選別された。そのまま一緒に付いて行くと、卵はインキュベーター施設を通り抜けてトラックへと運び込まれた。

おそらくさっきの選別で左に行ったものは、ここのインキュベーターへ入ったのだろう。

だったら…

「この俺たちの卵はいったい何処へ運ばれると言うんだ。」

それにこのままでは弥生が施設から開放されてアストラル体になっても、追いつく術がなくなってしまう。

何か追いかけて来れる手掛かりでも残せれば…。

だが、そんな事をしている暇は無かった。すぐに卵を乗せたトラックは出発してしまった。

とにかく睦月は一緒にトラックに乗り込み、自分達の卵を捜す。

「あった…」

『0047857249』の番号の卵。

こいつの先を見届けるんだ。仕方がない…突き止めた後で弥生に報告する。睦月は自分だけで最後まで追いかける事を決めた。

しばらくトラックに揺られていたが、揺れが止まりエンジンも止まった。外を覗いてみると、トラックごと何かに乗せられたようだった。たくさんの同じようなトラックが狭い空間に並んでいる。

「これは横移動のエレベーターなのか?」

そうだった…確かに横にこの空間は移動していた。

訳がわからない。この卵たちは何処に向かっているんだろうか…。そう思っているうちに、ガタンと音がなり止った気配がする。再びエンジンがかかると、トラックは前に前進を始め、すぐに停車した。

睦月はごくりと唾を飲み込む…おそらくさっきと同じように自動で、トラックから降ろされる。人間と言う人間がこの移動には誰も携わっていない。全てがオートメーションで動かされていた。トラックにも人が乗っている気配はない。

つまり…極秘の場所へ運び込まれると言う事だ。

トラックのドアが開いた。やはり無人だ…さっきと同じようにベルトコンベアに乗せられ、移動を始める。が、そこはさっきの施設と同じような建物だった。つまり、インキュベーター施設…だろう。しかし、インキュベーター施設がもう一つあるとは聞いた事がない。

卵より先に施設内を確認すると、そこには以前瑞樹と見たインキュベーター(孵卵器)がたくさん並んでいた。そう、通常のインキュベーターと違い、液体の中に浮いた卵たち。養育施設にあったものと一緒だった。

とりあえず卵がインキュベーターに入るのを見届けると、一度弥生と合流するべきと睦月はもと来た道を戻る事にした。

さっきのトラックの通ってきた道を逆に移動すると、すぐにエレベーターらしきものを見つけた。移動の最短距離をとっているのがわかる。すぐに孵卵器に入れるように作られた、卵の移動の為のエレベーターなのだろう。その通路を通り抜け、エレベーターの通り道をアストラル体で飛んでみる。しかし、その距離はかなりあった。あのエレベーターに乗っていた時は感じなかったが、かなりのスピードで移動していたと言う事だろう。

なかなか到着しない長いトンネルのような道をヨタヨタと、睦月は飛び続けた。一時間程飛んだのではないかと思っていると、ようやく出口が見えてきた。

「遠かった…」

睦月はなんとか戻ってこれた事に安堵した。

とにかく一度自分の身体に戻りたかった。それ程体力を使ってしまっていた。

この距離なら一気に身体に戻れると、一瞬だけ意識を集中させて自分の部屋の鈴をチリンと鳴らした。身体に一気に吸い寄せられる。

(とにかく、まずは弥生に報告だ。それからこれからの事は考えよう…)

そんな事を考えながら、睦月は自分の身体に戻りながら、意識を失っていた。

卵の行方…大冒険になりました^_^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ