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信頼

瑞樹は帰ってしまったので、次は弥生ですね

最終日。私と大和は街に出て、普通の恋人たちがすると言うデートと言うものをしていた。昨日の遊園地もそこそこ楽しかったけれど、今日のデートと言うものの方が楽しいかもしれない。遊園地はすべてが非現実的な空間だったけれど、今日のデートは日常生活の中の場所だからかもしれない。見るものすべてが私達の世界と違って色とりどりの物が所狭しと並べられ、溢れ返っていた。

同じものが無い程のさまざまなデザインの服に、カラフルな色が揃った雑貨、家電製品に見たことも無いような食べ物の数々。見るものすべてが私にとって新鮮だった。

「ねえねえ、なんでこんなに色々な物が揃っているの?」

「えっ、なんでって…う~んデパートだからかなあ。何でも揃ってないとならないと言うか、弥生の世界にはデパートって無いのかい?」

「ある事はあるけど、こんなにカラフルでもないし、同じものの種類がここまで豊富ではないよ。特に服の量!こんなにたくさんの服見たことがないもの」

「そうか…君たちの世界では、こんなに服のデザインが無いのか」

「うん。みんな似たような服着ているわよ。あるのは用途別の服の違いかな?仕事で着る服に、家で着る服とか…あとは季節別ってくらいよ」

そこまで私が話したところで大和が反応し、突然私に顔を近づけてきた。

「どうしたの?」

「季節って地下でもあるのか?」

予想とはかなりずれた大和の反応に、私は少し肩を落としながら答える。

「あるわよ…地上の温度とはいかないけど、暑さ寒さはちゃんとあるわ」

「そっか、地下って一年通して温度が一定だって聞いていたから、君の世界も温度は一定だと思っていたよ。そうかちゃんと季節があるんだな。暑さや寒さって苦手だけど、それでも人間季節感って言うものが必要なんだよな」

そんな事を言いながら、大和は私の前を歩いていく。でも、その言葉で私は逆に疑問をまた一つ抱えてしまったと思った。

私達は季節と言うものを普通に受けとめていたけれど…考えてみれば地下の私達の世界に、本当に季節はあった?

私達が知らないだけで、季節も作られていたものだとしたら?特に支障は無いとは思うけど、自分達の生活のすべてが自然のものではなく作られたものなのかもしれない。

こんなにいろいろな事に疑問を持つようになったのも、やっぱり先生に鍛えられたお陰なのよね。

今までの自分だったら…こんな疑問を季節の一言だけで持つ事は無かったのに、今は大和の何気ない一言だけでこんなに疑問を感じてしまう。

これはいい事なの?それとも…ううん、たぶんいい事なんだと思う。でも、危険な思想になる可能性も大きい。先生も言っていた

『自分の生きている世界をすべて否定してしまったら、そこで生きていけなくなる。真実を知ることは悪い事ではないが、自分に跳ね返ってくるリスクも考えながら行動しろ。生きていく上で知ってはならない事も多々あるからな』

「自分に跳ね返ってくるリスクか…難しいこと言うなあ」

「ん、何か言ったかい?」

前を歩いていた大和が、思わず声に出してしまった私の呟きに振り返る。あわてて私は首を横に振り、にっこりと笑ってごまかした。

「ううん、なんでもないよ。服が欲しいなあって思ったけど、考えてみたら今の私は瑞樹の姿だったなあ…って思っただけ」

「そうだなあ、せっかくこの世界を体験しているんだ、服選んだらいいよ。確かに瑞樹の姿だけど、今の自分にあうと思った服を選んでみるのも、経験としては楽しいと思うし、いいことだと思うよ。瑞樹の趣味の服装ではなくて、弥生の趣味で選んだ瑞樹と言うのを見るのも、僕としても楽しそうだしね」

そんな事を言って大和は悪戯っ子の様に笑った。

「それって瑞樹だけど、瑞樹じゃない。私としての瑞樹の姿を見たいって事?」

「ややこしい言い回しだなあ…でも、そういう事になるのかな?でも、この二日間一緒にいたけど、瑞樹でなく弥生だって感じていたよ。姿は一緒だとしても、魂は違うからな…全体のオーラと言うか、雰囲気が違うんだよ。別人だからこそ、自分の好きな服を選んだ弥生を見てみたいって所かな?」

「あはっ、そう言う事にしておくね。って本当に服買っていいの?」

「ああ、男に二言は無いよ。好きな服を選ぶといいよ」

「ありがとう。それなら遠慮なく選ばせて貰うね。あっ、でもどのお店がいいのかわからないんだけど…」

「色々な店を覗いて決めればいいよ。今日はこっちの世界の体験が目的なんだ。余分な事考えずに楽しめばいい」

「うん!じゃあ最初はあのお店から!」

私は大和の優しさを感じつつ私の好みの店を指差すと、二人でその店に向かった。


「ねえ…本当にこんなに買っちゃって大丈夫だった?」

買い物が終わり、近くの喫茶店へ入った私達は、コーヒーを片手にくつろぎながら、私は買った服の量に少し後悔していた。

「大丈夫だよ。弥生の選んだ服はそんなに高い物でもなかったし、この位の量なら問題ないよ」

「そうじゃなくて、私が選んだ服だけど瑞樹の身体に合わせた服だから、瑞樹の服がこんなに増えちゃって大丈夫かな?って事よ」

「ああ、そう言う事か」

私の心配を他所に、大和はコーヒーを口に選びながら笑っている。

「ねえってば」

その澄ましたような様子に私がもう一度迫ると、ようやくコーヒーから手を離して私の方を向いてくれた。

「瑞樹に弥生の事を頼まれたって言っただろ?その時、こっちの弥生の事は全部俺に任せるって瑞樹に言われているんだ。だからそんな心配は必要ないんだよ。それに、今回一度きりって訳ではないんだろ?これからもこっちに来る事があるなら瑞樹の服でなく、弥生の服も用意しておくべきだと思うよ。俺としても、雰囲気は違うといっても、やっぱり瑞樹と弥生の違いがあった方が接しやすいしね」

「ふ~ん。大和って結構瑞樹に信頼されているんだ」

私は、肘をつきながら冷やかすように言ってみたけれど、大和はコーヒーを口に運びながら普通に答える。

「一応彼氏だからね」

「彼氏か…まだ少ししかそのシステムは分からないけど、瑞樹と大和の間に信頼があるのはわかったわ。そんな信頼関係が彼氏彼女って事でいいの?」

「そうだな、その表現がしっくりくるかも知れないな。愛し合うとか言っても、よく分からなそうだしな。愛し合う=信頼なら理解しやすいかもしれないね」

「うん。それなら私にも判るかな」

私も信頼関係というものは少しは理解できるようになった。先生の指導もあるけど、瑞樹がいた事が一番なんだと思う。そして、昨日の遊園地に今日のデート。そこにはたくさんの親子、そして恋人たちがいた。最初は皆が一緒に時間を過ごす事に疑問を持った。でも、自分自身が楽しむ事によって少し分かるような気がしてきたのだ。まだ親子というものは分かりにくいけれど、恋人…彼氏、彼女と言うのはここへ来た時よりも理解出来るような気がしている。一緒に信頼関係の中で楽しく時間を過ごす。私達の世界には無いけれど、こっちの世界ではそれが大切だって。

子孫を残す為に大切な事…それが私達の世界では繁殖に重きを置き、よりよい遺伝子を残す為のものになり、お互いの信頼関係が必要でなくなり、交配だけになった。元来鳥と言うものは、繁殖の為にメスは何匹ものオスの遺伝子の卵を産む種類が多い。だからこそ、私達は毎回三人の男性との交配に疑問も持たなかった。

でも、この色とりどりの世界で暮らす人たちを見ていると、楽しそうで何も無い私達とは違うと感じてしまう。

「ねえ…もう帰ろっか」

なんだかもう楽しむ気分では無くなっていた。

なんとなくだらだら?

ご感想等あればお願いいたします。

頑張って更新します

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