不完全燃焼❓
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私達はアストラル離脱を行なった睦月の部屋に戻ってきていた。
でも…今までと違って戻ってもすぐに身体が動く状態ではなかった。初めてアストラル離脱を行なった時でも、こんなに疲れたことは無い。では何故…?
「動けねえ…少しこのまま寝てようぜ…」
弱ったと言った感じの睦月の声が隣からする。でも、その声の方に頭を動かす事さえ億劫な程だ。とりあえず声を出すのも大変だが、なんとか返事だけは返した。
「うん、動けるまで少し寝ましょ…」
そう答えた途端私は意識を手放していた。
次に意識を取り戻したのは、睦月の声によってだった。
「えっ…!」
がばっと飛び起きた私は、すっかり体力を取り戻していた事に安堵する。自分の手を見つめながら今までの事を思い返した。
でも…ここまでの体力を消耗した原因は思いつかなかった。異空間に行ってしまった事が関係しているなら、睦月までが消耗するはずはないし…。
そこまで考えた所で睦月が思考を遮ってきた。
「瑞樹…何か考えている所悪いんだが…時間だ」
「えっ?時間??って何かあるの?」
私が意味が判らずきょとんとしていると、少し申し訳なさそうに睦月が視線を外して再び口を開いた。
「あんたが向こうの世界にいる弥生と交代する時間なんだよ」
「ちょ、ちょっと待って…帰る時間って、もう一日あったはずよ!えっ?どういうことなの?」
「俺もよく分からないんだよ。さっきあんたを起こす前に確認したんだが、今日が戻る予定の日なんだ。ここへ戻ってきてから眠り続けていたのか…それとも、戻ってきたときにはすでに一日が経過していたのか、確認の仕様が無くてな。戻ってきた時点で少しでも動けていたら何か分かったんだろうけど、俺もあんたもそのまま寝てしまったし、目が覚めたらもう今日だったんだ」
確かに近くにあった電子時計をよく見てみれば約束の日付を示していた。
「中途半端な調査になっちゃったわね。もう少しいろいろ調べたかったんだけど…」
「仕方ないさ。二泊三日だって言っても時間的には四十八時間な訳だし」
落ち込んでいた私を励ます様な睦月の言葉に、私は一度深呼吸をして百八十度気持ちを切り替えた。
「そうね。今回の疑問は向こうへ持ち帰って先生と検討するわ。睦月も向こうで先生に出会った弥生といろいろ意見交換をしてみて、たぶん弥生がこっちの世界を動けるようになっていると思うし」
「そうだったな。向こうで修行をした弥生が戻ってくるんだ。俺も一緒に動ければ手助けも出来るしな」
「頼りにしてます。弥生をよろしくね、私の一番の友達…ううん一番の親友だから」
「親友か、いいなその言葉。今まで言葉としては知っていたけど、実際にはどんなのが親友なのか知らなかったからな」
睦月はしみじみと私の言葉を心に刻み込むようにつぶやいた。私は少しこの世界の歪みの修復の手がかりを掴んだような気がした。
「そうだ、睦月。そのペンダントあなたにプレゼントするわ。貰ってくれるかしら?」
睦月の首に掛けたままになっていたアンクのペンダントを指差すと、私は睦月に提案してみた。
「これを俺に?」
睦月はペンダントを手にしてまじまじと覗き込む。
「ええ、これは『アンク』と言って古代エジプトのお守りで、それに先生が安全を込めた水晶とラピスラズリをはめ込んでくれたものなの。今回睦月のアストラル体を護ってくれたし、それに私のアストラル体と一緒に、こっちの世界に一緒に来れたって事は、何かの暗示だと思うの。だから貴方に持っていて欲しいの、弥生と睦月あなたを護る為に」
「大切なものなんだろ?これは俺たちを護る為でなく、あんたを護る為に一緒に来たんじゃないのか?」
睦月の不安そうな言葉に私は強く首を振った。
「確かに私も何度か助けられたわ。でも…向こうの世界よりアストラル体で起こる現象は、こっちの世界の方が明らかに多いと感じたの」
「だけど…」
「たぶんだけど、今まで弥生がこっちの世界をアストラル体で動けなかったのは、その危険が大きいと、アストラル体が判断していたからだと思う。だからこそ、私でなく二人にこれが必要だと思うの」
私の言葉を真剣に聞いていた睦月が、降参と言う様な表情で少し力無く笑うと、両手を挙げた。
「わかった。これはありがたく受け取らせてもらう」
私自身にも安堵が広がった。これで少しは安心して、二人にこちらの世界を任せられる。
「あっ、でも気をつけてね。今回の施設とか行ってみて判ったわ、アストラル体にとってあの場所は危険すぎる。あそこには何かがある…慣れていないあなた達二人であの場所へ行くのは絶対にやめて、すぐ戻ってこれる近場だけにしておいて。それと、ペンダントを持っていない弥生だけのアストラル体での調べ事も。私でも睦月が居なかったら危なかった事があったのを説明して、二人で離脱時のルールを作って、お願いよ」
少し命令みたいになってしまった為、私は最後のルールは二人に任せる事にした。たぶん今の二人なら大丈夫だと思う。
最初にこの世界に来た時は、自分がこの世界をなんとかしないとと思っていた。でも、確実に二人の考え方はこの世界の人達とは違ってきている。だからこそこの世界の事は、二人が中心になって調べていかなくちゃならないと思う。私はその手助けだけ…。
「さてと、そろそろ本当に時間ね。向こうの世界に帰らなくちゃ」
私の言葉で睦月が時計に視線を送る。
「時間だな…一日損した気分ではあるけど、帰らないとな」
「うん。本当は弥生の生活をもっと体験したかったんだけど、それは次回のお楽しみにしておくわ」
そんな事を言いながら首をすくめて見せると、睦月はにっこりと笑って親指を立てた。
「了解。次はもっといろいろな場所へ行こう。それと、また交配もしようぜ」
「もう駄目だって言ったでしょ」
「嫌だったか?」
睦月が少し寂しそうな顔をする。
「えっ、嫌って訳ではないけど…えっと、私の身体じゃないし私には大和がいるし…その辺は弥生に任せるわ。って、何言わせるのよ!弥生の身体なんだから弥生に聞いてください!」
そう言い残すと、私はアストラル離脱の準備に入った。少し顔が熱かった気がした。でも睦月は、そんな私を横で見ながら笑っていた。そして最後に私が
「またね」
と、言葉を掛けて離脱した瞬間。睦月は笑いながら何かを言っていた気がした。その言葉は一歩届かず、私は聞く事が出来なかった。
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