異なる世界
異世界ではないです…似て非なる世界ですかね❓
私が慌てて振り返ると、一人の少女が私と同じように宙に浮いていた。
「あなたは…えっと、もしかしてカプセルで寝ている中の子?」
「うん、そうだよ。で、お姉さんは?」
「えっと…」
言っても良いのか悪いのか…でも、何も言わないわけにも行かない。
「お姉さんね、ちょっと身体から魂が浮いちゃったから、少しお散歩してたの。貴方も身体から魂が浮いちゃったみたいね」
「えっ?」
その子は驚いたように回りを見渡した。そして自分の身体を見つけたらしく、不安な表情を見せた。
「大丈夫よ。私もそうだけど、貴方もちょっと身体から魂がお散歩しちゃっただけだから、ゆっくり自分の身体に近づいて戻りたいって思えば戻れるわ」
「本当?」
首をかしげながら私を見上げてくる。たぶんまだ不安なんだろう。私はにっこりと笑うと、女の子の背中を押した。
ゆっくりと女の子は頷くと、自分の身体に近づき、そのまま身体の中に戻っていった。私は息を吐くと、その部屋を後にした。睦月が言っていた事は本当だった。
カプセルで過ごす子供たちに起こっていること。アストラル体に無意識になってしまう現象。自分もそうだったけれど、子供がアストラル体で抜け出てしまうのは、命の危機による影響が大きい。それだけこのカプセルを使っての養育は、危険な養育方法だと言うことではないだろうか?今の子だけではない。弥生も睦月もそうだし、まだまだアストラル体になった事がある子供が多数いるはずだ。
人間は愛情が無ければ死んでしまう生き物だという事は、過去の実験で実証済みだ。それがここの子供たちに出ている現象の一部ではないだろうか?死と隣り合わせの養育方法。社会に出る子供の数と、産み落とされた卵の数の違い。どう考えても、愛情の不足で死んでいった子供たちの数なのではないだろうか?
でも…弥生や睦月の話では、カプセルで死んだ仲間は年五・六人…そんなに多い人数ではないと思う。それでもこんな短時間の浮遊でアストラル体になった子に出会うなんて…ここでは死なないまでも、死に直面する子供たちが多いという事だ。
「そろそろ時間ね。入り口へ向かわなくちゃ」
一人で行動すると、どうしても独り言が増える。たぶん自分の中では平気だと思っていても、どこかで不安があるんだろう。ましてや、ここは自分の知らない世界。でも…独り言だけで気が紛れるなら、いいんじゃないかと私は思う。スルリとその部屋の壁を抜ける。
すぐに入り口玄関は見つかった。そんなに複雑な建物じゃない事に私は感謝する。
なのに…なかなか睦月が待ち合わせ場所に現れなかった。約束の時間はもう過ぎている。何かあったのか…それとも、時間を忘れて何かを調べているんだろうか…
そこまで考えて私は心臓がドキンと鳴った。彼は私のアンクを首から掛けている。と言うことは、もしかして今無事なのは、彼の方かもしれない。私が待ち合わせだと思っていたここは、もしかしたら…違う?
(私が彼を待たせている…かも知れない)
ぞくりと鳥肌が立った。さっきの子供に出会ったのが合図だったのかもしれない。急いで元の世界に戻らないとだめだ。自分の事もあるけれど、それよりも待っている睦月の方が心配だ。さっきの時点でも、だいぶアストラル体が疲れていた。待ち合わせの時間が限界だとしたら、今彼は曖昧な状態になりつつあるかもしれない。
戻りたいと思えば簡単に戻る事は出来る。でも、私が約束の場所にいなければ、待ち続けている可能性が高い。そうなれば、アストラル体が曖昧になり自分の体に戻れなくなる可能性もある。
私達みたいにアストラル体に慣れている訳ではない。早く戻らないと…落ち着いて何処で空間が変化したのか考えないと。さっき子供にあった時はまだ向こうの世界だった…と思う。だとしたら…。
帰ろうとしてあの部屋から壁を抜けたあの瞬間。だとしたら、あの部屋に戻れば元の場所へ戻れるはずだ。とにかくその可能性に掛けるしかない。
私は急いでさっきの部屋…子供と出合った部屋へと今度はドアから戻った。
「やっぱり…ここが原因だ」
そこにはさっきと違いカプセルはあっても、子供たちが存在していない。あるのはもぬけの殻のカプセル。それはここが…私のいる世界がさっきと違うという事だ。
「さっきと違う所。それは何処?落ち着いて、考えてみるのよさっきは何処の壁を出たの?そして、通った時違和感があったはず」
ひとつひとつ確認していく。さっき子供のアストラル体が浮いていたのが、右の角の方だった。そしてその子供が戻っていったのが、反対側の角、左にあったカプセルだ。
子供がそのカプセルに戻るのを確認してから、一度180度振り向いた。そしてドアを確認して…
そうだ、なにか違和感を感じたのはドアだ。
一番最初はドアを抜けたのに、帰りは何故かドアを通るのに抵抗を感じて、その隣りの壁を通り抜けたんだ。そして今またドアを抜けた。
それだったら…今度はドアを通り抜けて廊下に出て、壁から部屋に入ってもう一度ドアから出ればいいんだ。
私の中で、すべての私の意見が一致した。ドアを抜ける。次に壁から頭を部屋に入れてみると今度はカプセルに子供たちがいた!
(戻った)
私は確信した。ふうっと息を吐く、次にドア抜けると目の前にさっきと同じような廊下が見えた。でも、さっきと違った。
「瑞樹!!」
私の名前が廊下に出た途端呼ばれた。当たりだ!
「睦月!良かった~会えた」
出会えた事で、大きく一つ安堵の息を吐いた。
「睦月まだアストラル体大丈夫?」
ペタペタと私は睦月のアストラル体を触った。大丈夫みたいだ。少しぼやけてはいるけれど、戻れなくなる程の状態ではない。
「俺よりも瑞樹が大丈夫なのか?なかなか待ち合わせ場所に来ないから、どうしたかと思ったぞ」
「ごめん。訳は身体に戻ってから話しましょ。手を出して、一気に身体に戻るわよ」
差し出された睦月の手を取ると、私は遠くの部屋にある鈴を連想する。そして、それに風を送った。
(チリン…)
二人の耳に微かな鈴の音が届く。その瞬間私達の意識は、自分の身体に引っ張られる様に引き戻されていた。
ペースが落ちましたが、少しずつ更新続けます
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