表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/90

新たな出会い

私と睦月は睦月の車で職場へと到着した。

「ねえ、こんなデートみたいな事やっていても、この世界では大丈夫なの?」

「デート?う~んデートと言うのはよく分からないけど、俺と弥生が休日に一緒に行動しても問題にはならないよ。弥生にどう聞いていたのか俺は知らないけれど、俺たちの行動に繁殖以外の制限はないよ。繁殖行動は全て管理されているけれど、他の行動は自由なんだ。誰が誰と居ようと、誰も気にしない」

意外に繁殖意外の事は監視がない事に、私は驚いた。弥生には繁殖関係の話しか聞いていなかったから、他の行動も同じように制限があると勝手に思い込んでいた様だ。

「だけど…まず最初に職場のメンバーの写真と名前だ。最低でも近い奴らの事は覚えていないと、この対面はおかしな事になる」

「そうよね…」

そう言うと、睦月は車のダッシュボードからタブレット端末を取り出すと、写真を表示する。

「こいつが『片山美奈』。弥生の研究グループのリーダーだ。弥生だけでなく、グループ皆が美奈を頼っている感じだ。で、こいつが『浅羽由里』。弥生とはいつもグループ内でペアを組んで研究している。つまり、弥生とは一番近い存在だ。気をつけた方がいいが、まあ意外に楽天的だから、おかしいと感じても気にしないとは思うけどな。あとは、こいつとこいつ『原川藍』と『泉涼子』この二人もペアだからいつも一緒にいる。わかりやすいと思うよ。で、呼び方はみんな名前で呼んでいるから、『美奈』『由里』『藍』『涼子』で呼べばいい。簡単だろ?」

「了解…なんとかやってみるわ。『美奈』『由里』『藍』『涼子』ね。四人くらいなら大丈夫そうね」

タブレット端末を受け取ると、私は名前と写真を見比べながら、名前と顔が完全に一致するように、顔の特徴や髪型などをしっかりと頭の中に刷り込んでいく。

「しかし…なんでまず最初に今日は職場なんだ?」

「ん、今回の為じゃなくて、これからの為かな?今回は全部休暇にしてくれてあるけど、これから来るたびに休暇取るのは大変でしょ?私の会社はその点は自由だから大丈夫だけど、こっちはそうは行きそうもないし、万が一って時には仕事に来ないとね」

私が首をすくめて説明すると、なるほどと睦月が笑った。

「なんで笑うのよ」

「そんな心配もしてくれているんだな。と思ってな…まあ、たしかにここの仕事なら、潜り込んでも問題はないな。そんなに忙しいわけでもないし、今日は資料整理の日とかにしておけば、知識がそんなになくてもやり過ごせるけど、なんだか本当に入れ替わりを計画してるみたいだな」

「そこまでは無理。それでもこちらの人達に会って、慣れておくこともしておかないとね」

「んじゃ、行きますか…えっと弥生」

「うん睦月」

私達は、まず第一段階に足を踏み出した。そうだ、ここからは私は瑞樹ではなく、『弥生』。姿形、アストラル体だけでなく、気持ちも弥生になる…

「ここで社員証を使ってドアを開けて入る。社員証が無いとここからは入れないからな。そして、この社員証を通す事によって入退室の記録にもなっているんだ」

「なるほど、これで社員の管理をしているって事ね。私達の世界の大企業と同じようなものか…」

「大企業?ここの世界は何処もこんな感じだぜ」

「ふ~ん」

つまり社会はこれで管理されているんだ。私はそのカードを裏返したりしながら眺める。やそんなに文化としては進化している部分は少ないらしい。未来って事で少し未来的なところがあると思っていたわりに、拍子抜けだった。それもこれも、やっぱり絶滅の危機を越えて世界が戻ってきたというところなんだろうか?

そんな事を考えながら、睦月についてエレベーターに乗り込み途中の階で降りる。

「睦月ここは?」

私が訊ねると、周りに聞こえないように睦月が私に耳打ちする。

「ここが弥生の研究室のある階だよ。ほらあそこがそうだ」

睦月の指し示す方向を見ると、一つのドアがあった。あそこが弥生の仕事場…胸がドキドキと急に高鳴りだす。

「弥生になりきれよ。先に俺が入る、それから手でも振りながら入れば大丈夫だろうぜ」

「うん」

私の返事と共に、睦月がドアを開ける。

「おーい。皆仕事がんばってるか~」

「やっほ~ちょっと遊びに来たよ」

私も睦月の後ろから手をひらひらと振りながら、軽い口調で入ってみた。

「お~めずらしいね。二人で休日に仕事場に来るなんて。今日って交配の最終日でしょ?」

ちょうど近くにいた由里が、にっこりと笑いながら近づいてくる。

「そっ。終わってなんとなく暇になったんで、二人でちょっと冷やかしに来たんだよ。皆がんばって働いてるかなあ~ってな」

「それなら差し入れは?ないの?」

「おいおい、そのまま直行だぞ。あるわけないだろ」

「む~けちっ」

そんな会話を他所に、私はその部屋を見渡した。結構広い職場だ。研究所と言うだけあって清潔感の漂う白い空間になっていた。それでも、いろいろな薬が戸棚には大量に入っている。

これが弥生の職場…自分の職場と比べてみて、なんて落ち着いた職場なんだろう。

そんな事を私は考えながら、睦月の後でキョロキョロとしてしまった。

「どうしたの弥生?なにキョロキョロしているのよ。なんか探し物?」

由里がそんな私の行動を不思議に思ったのか、覗き込んできた。

「あっ、うん。ちょっと忘れ物をしちゃって…」

とっさに私はごまかしてみると、それに睦月もあわせてくれた。

「ああ、そうだったな。ってそんなところで捜していたって仕方ないだろ。さっさと机の上を捜して帰ろうぜ」

そう言うと、睦月は自然に思われるような仕草で、弥生の机まで私を引っ張っていく。

机の上はしっかりと整頓され、何が何処にあるかが人目でわかるようになっていた。そんな弥生の机の引き出しをなんとなく開けてみる。

と、そこには一通の手紙があった。宛名は…『瑞樹へ』弥生が私がここへ来て、机の引き出しを開けると予想して入れていたのだろうか?

睦月もその手紙に少し驚きながらも、私の顔を見て頷いた。

その手紙を手に取ると、ポケットに仕舞いこむ。

「よかったな、目的のものがすぐに見つかって、さて、皆の邪魔をしても悪いし、帰るか?」

「うん。そうだね、皆お邪魔しました。あと、二日お休みするけどよろしくね」

私は四人に手を振ると、「了解。じゃあね~」と皆も私に手を振り返す。

「んじゃ、お邪魔様~」

睦月の声と共にドアを出て閉め、急いでエレベーターに乗り込んだ。

「はあ~ちょっとの事なのに結構疲れたなあ」

「うん、もうドキドキしっぱなしだった」

「なるべくなら、職場に来るのは控えた方がいいかもしれないなあ。やっぱり危険だよ」

「かもしれない…ね。まあ、顔合わせは最終手段の時の為にって事でね」

「そうだ、さっきの弥生の手紙ってなんだ?」

睦月の言葉で、私はようやく弥生の手紙の事を思い出した。あわてて、ポケットから取り出すと中の便箋を開いてみる。

【瑞樹へ~なんとなく届くかなあ~と思ってこの手紙を書いてみました。これを瑞樹が読んでくれていると言う事は、身体の交換が成功していると言う事だと思う。あと、横には睦月が居るのかな?ちょっとドキドキだったと思うなあ。そして、この手紙がある事にびっくりしているのかな?そうだと嬉しいな。で、この手紙を書いた理由。なんとなく書いてみたんだけど、一番書きたかった事。それは『瑞樹頑張りすぎないでね。頑張ってくれるのはとても嬉しいけど、無理しすぎて、瑞樹が危険に晒されたりするのは絶対に嫌だからね。』って言いたかったんだ。無理しないで、出来る事から少しずつでいいから、戻る時にお互い笑顔で会えます様に】

重要な手紙ではなかったけれど、すごく弥生の優しさが篭った手紙だった。

「弥生ってば…ありがとう。無理しないから安心してね」

私は向こうの世界に居る弥生に伝わるように、その手紙を胸に抱きしめた。

「明日からの行動は無理をするなって事だな。まあ、その位の言葉があった方が瑞樹にはちょうど良さそうだな」

「うん。危険にならない程度…弥生が心配しなくていいくらいに、頑張る」

私は頑張らないと!って、思いすぎていたかもしれない。少し肩の力が入りすぎていたかも…明日からは、自分が出来る範囲で頑張ってみよう。

「じゃあ、今日は疲れたし、明日に備える為にも帰るか?送るよ」

「うん、ありがとう。とにかく、後は明日だね。弥生に怒られない程度に頑張るね」

「ああ、そうしてくれ」

睦月はにっこりと笑うと、私の頭をくしゃりと撫でてくれた。

ゆっくり更新していきますのでよろしくお願いします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ