初めての未来
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私は気付くと、無事に弥生の身体に入っていた。目の前に見たことも無い天井が広がっている。横を向くと、まだ気付いていないのか、天井を仰いだままの男性が同じベットに横たわっていた。
えっと、この人が弥生が言っていた『睦月さん』よね?私は、恐る恐る声をかけてみる。
「あの…睦月さんですよね?」
「んっ…弥生じゃないな。って事は例の瑞樹さんか?」
「はい。瑞樹です」
「お~成功したんだ」
そう言ってがばっと勢いよくベットから起き上がった。って…
「きゃ~~~~~」
思わず私は悲鳴を上げていた。その悲鳴に、睦月がおろおろする。
「なになに?何かあった?」
「だって貴方裸!」
「ああ、そういうことか…って瑞樹さんあんたもそうなんだけど?」
「えっ…」
彼に指摘され、私は入り込んだ弥生の身体も裸だった事にようやく気付く。
「いや~~~~~。なになに?これってどういうことなの!」
私は完全にパニックになっていた。だって、入った弥生の身体が裸って…その上、目の前の睦月さんも裸。もうどうなっているのかよくわからなかった。
「ごめんな…弥生が何にも話していなかったみたいだな。あいつちょっと悪戯好きなところあるから。今日は交配日だったんだよ。その日じゃないと、俺が近くに居れないからな…ちゃんと言っておけよって弥生には言っておいたんだが、遊び心がちょっと出たみたいだな。瑞樹さんって言うよりも、俺に対しての悪戯だと思うけどな」
頭を掻きながら、びっくりしている私に困っている。そんな睦月さんを見て、私は思わず笑ってしまった。
「あっ、なんなんだよ。今度は笑ってるし…」
「ふふっ、ごめんなさい。弥生の悪戯に困っている睦月さんがおかしくて…」
「せっかくの初対面が台無しだな。まっ、瑞樹さんも落ち着いたみたいだし、良しとしておくか。改めて自己紹介だ。俺の名前は相沢睦月。よろしく瑞樹さん」
「坂田瑞樹です。こちらこそこれから三日間よろしくお願いします。あと、私の事は瑞樹でいいです。っと、それとも弥生の名前で呼んでもらった方がいいのかしら?」
「俺も睦月で呼んでくれ。弥生がそう呼んでいるからな…って、そうだよな。それ弥生の身体だもんな、俺が違う名前で呼んでいたらおかしいか。でもなあ、弥生って通常で呼んでると、俺がこんがらがりそうなんだよなあ…弥生の名前で呼ぶのは人前だけでいいんじゃないか?」
「そっか、そうよね。弥生なのか私なのかの区別は必要ね。じゃあ、人が居ないところは瑞樹でよんでね。じゃあ、改めてよろしくお願いします」
私が手を差し出すと、彼…睦月も差し出し握手を交わす。
と、突然握手と共に私は睦月の方に引っ張られ、気付くと私は、睦月の腕の中にすっぽりと納まっていた。
「えっ…」
「ごめんな瑞樹。来て早々申し訳ないけど、今日はさっきも言ったように性交日なんだ。一応済ませておかないと問題になるんでね…って言うか、ここから済ませないと出られないから」
「えっ、うそ。ちょっ、ちょっとまって…」
私は突然の展開に戸惑ってしまった。こっちに来て早々、そんな展開になるなんて思ってもみなかった…それよりもなによりも、大和が。
「ごめんって、先に済ませておけばよかったんだけど…俺たちすっかり忘れていて。でも、動くにはこれしかないんだ」
そう言っている間に、私は簡単に押し倒されてしまっていた。
「大丈夫。その身体は弥生のものだから。俺たちはこれが仕事の一つなんでね」
そうか…これが弥生の言っていた産卵の為の行為。心ではなく身体なんだ…それに仕事として行なっている。
「わかったわ…私は弥生だと思って、抱かれていればいいのね」
「ん、そうしてもらえると助かるよ」
そう言うと、睦月は私に優しいキスをして、そのまま唇を首から下へと下ろしていく。
私は、そんな睦月の行為を黙って客観視しながら、マグロの様に寝たままでいたが、感じてしまう私を感じずにはいられなかった。
私達の世界と同じようにいろいろな場所に愛撫していく。仕事だと言っても、動物のように交尾だけと言う感じではない様子に、私はすこし安心した。
「よかった…」
思わず私は声に出してしまった。その言葉に睦月が反応する。
「んっ、よかった?どうしてだい?」
「弥生の話を聞いた時は、もっと作業的だと思ってたから」
私の素直な感想に、睦月は鼻の頭を掻きながら苦笑し、そのまま私の腕を押さえ込み、顔を近づける。
「つまり、こんな風にもっと動物的だと?」
「うん。ごめんなさい」
私はちょっと自己嫌悪に陥る。自分で決め付けて、こっちの世界に関する考えが、だいぶ偏っていた様な罪悪感がある。
「いいよ。まあ、弥生とか慣れた連中とは、ちゃんとするけど、あんまり知らない奴の時は、そんな時もあるからな…」
「そうなの?」
「そりゃあ…知らない奴だと会話もそんなにないし、さっさと終わらせて寝る」
睦月はそう言うと、にかっと笑った。その笑顔につられて私も笑った。
「んじゃ、さっさと済ませてこの後の事考えないとな」
「そうね。三日間よろしくお願いします」
弥生の姿の私は、思わず睦月の首に抱きついていた。そのまま私達はキスを交わすと、先程とは違いお互いの身体を求め合いながら、ベットにと戻っていった。
とりあえず…最後のほうは雰囲気に呑まれた感じもあったが、私達は事を済ませると、話し合いに入った。
「こっちは何回か来た事あるのか?」
「ううん。今回が初めてよ…本当は何回か短時間でも交代して慣らしておいた方が良かったかもしれないけど、時間がなかったから」
「そっか…、んじゃとりあえず、今回はこっちの世界を把握するのが目的でいいのか?三日間だ、皆に入れ替わっているのが気づかれない様になるのが、一日目。後の二日間はこの世界のシステムの把握と、ちょっとした俺の情報収集への協力って感じでいいか?」
「情報収集?」
弥生との話ではそんな話は無かった様な…。
「弥生には内緒の話だ。ちょっと内容的に危険だからな。あいつは知らない方がいい情報の収集を手伝って欲しい」
そういう事か…確かに情報と言う物は時として危険を伴う。弥生の世界を調べたいと思ってはいたが、それによって弥生が危険に晒されるのは駄目だ。
「わかったわ。弥生には内緒でなら弥生に危険が及ぶ事も少ないと思うし…万が一の時は睦月が護ってくれるんでしょ?」
「ああ、それは約束する。俺の単独で弥生には関係ないと証明するから」
「わかったわ。それなら協力は惜しまないわ」
「OK!それなら最初は職場から…いや、先に飯か?」
「そうね、私もおなか空いたわ。おいしいお店教えてくれるかしら?」
「んじゃ、ここから出たらまず最初にうまいCafeに連れて行くよ」
「楽しみにしているわ」
こっちの世界を調べるだけじゃなく、自分としても楽しまなくちゃね。瑞樹も向こうで楽しんでくれたらいいなあ…と思う。私もこっちでなんとかなってるから、大和そっちはよろしくお願いね。
「で、その後職場に行って、俺たちの仕事内容の説明と社会のシステム。人間関係を学ぶって感じでいいか?」
「OKよ。すべて教えて頂戴。記憶力とその場の対応力はすこしは自信あるから」
私はこの時の為に、順応力を鍛えてきた。そして今、私は本当に弥生としてここにいる。目の前に睦月がいて、弥生の中の私を知っている。
でも、彼は私がこれから何をしようとしているのか知っているのだろうか?
私はそんな事を考えながらも、心の中で首を振る。
これはもう決定した事。もう迷ってなんかいられない。私はこの世界の根本を調べて、人間らしいお互いを愛し合うことを知ってもらい。だから進むしかないんだ。




