修行
本日2話目です
上田先生に教えを請うてから数週間。教えてもらったと言っても、知識半分、実践半分といったところだった。それも実践の方はびっくりのしっぱなしだった。
古書店の地下に実践場みたいなものが作られていて、そこは擬似的なアストラル面が出来上がっていた。先生曰く、『ここはすべてのものが外から干渉できない空間になっているから、アストラル体を地上で一番安全に発動できる場所』らしい。何かおまじないがかかっているのか、生身の身体で入った途端に、私はアストラル体として身体から抜け出ていた。
先生はと言うと、簡単に抜け出てしまうその部屋の中で、私の身体を安全に移動させているのだから、もっと驚きだった。
そこでのアストラル体の変化は、安全な分安心して練習も出来たし、弥生の姿になったまま、本当のアストラル面に飛ぶ事もない。その上、生身の先生が、アストラル体のままの私を普通に指導するという。なんとも不思議な練習風景だろう。知らない人が見たら、どんな風に目に映るのだろう。そんな事を考えながらも、充実した練習ができたのは確かであった。
「ここでの練習のように、本当のアストラル面でもうまく行くのかしら?」
「もっと集中しろ、姿がぼやけてきているぞ。ここでの練習は全くの干渉なしだからな。向こうではこんなにうまくはいかないはずだ。だから、ここでなにをしても普通に姿を保てる様な、完璧な精神を作らないとならないんだよ。今みたいに、ちょっと話しただけで姿があやふやになっている様では、まだまだって言う事だ」
「自然体でこの姿を保てるようにって事かしら?」
「そうだ。集中しないと保てない様だと、何か行動を起こしたとたんに、彼女の中からはじき出されてしまう。それでは意味が無い。だから、通常の生活をするように姿を保てるくらいの、平常心を作り出すんだよ」
「それって難しいわね。なにをしてても、私は弥生って思っていないとって事でしょ?」
思わずそんな事を考え込んでしまう。その途端、私の姿は元の自分の姿に戻ってしまっていた。
「言った傍から元の姿に戻ってどうするんだ。考えるんじゃない。考えなくても姿を保っていられるようにするんだよ」
「考えなくても姿を保っていられる様に…えっ、それってどういうことです上田先生?考えないと弥生にはなれないですけど」
「君は毎日の生活をするのに、なにをしようかと考えて行動するか?朝起きるて、顔を洗って、服を着替えて、朝食を取って、仕事をして、昼を食べて…すべて自然にやっているだろう?それと一緒だ。習慣的に何も考えずともやれればいいんだ。食事をしたりするのとおんなじなんだよ」
「習慣的に…」
「自分のアストラル体って言うのは、習慣的に自分の姿を象っているという事なんだ。それと同じように習慣的に、その弥生って言う彼女の姿を象ればいいんだ」
「なるほど…それなら、向こうで三日間過ごす時も寝れるし、何があっても身体から弾き飛ばされないと言う事なのね」
「まずは慣れることだ。ここはいつでも自由に使っていいぞ。俺は店番があるから、そろそろ上に上がる。とにかく慣れろ。それと、自分自身の姿のアストラル体を見せるな。次の段階はそれが合格してからだ」
「はい!」
そんなこんなで、集中的に練習を重ねた結果。私から出てくるアストラル体は通常が弥生の姿になった。身体におさまっいる時は私の姿のアストラル体。でも、離脱した途端に私は弥生のアストラル体になるのだ。最初はそんな事ができるとは思ってもいなかった。でも、徐々にそれができるようになり、今では完璧に自分のアストラル体を、外に見せる事が無くなっていた。
すこし仕事は休みがちにはなっていたが、これからの事を考えれば、それは二の次。それでも忙しかった事もあって、最近大和ともすれ違っていた。これからの計画には、大和にも協力してもらう事が必要だろう。
そう思った私は、久しぶりに大和に連絡をして、夕食を一緒にとる事にした。




