出会い
書き始めてしまいました〜
ホラージャンルにしましたが、怖くありません。
頑張って投稿したいと思いますのでよろしくお願いします
あれは、十八歳になってまもなくの頃、もともと体の弱かった私は高熱を出し、意識がはっきりしない日が数日間続いた。体全体が熱く長くうなされていた気がする、そして気付くと私は何も無い真っ白い空間に、ふわふわと一人浮いていた。少し息苦しく感じ大きく息を吸い込むと、なかなか空気が肺に入ってこない…空気が薄いのだろうか。ふと重い頭を少し動かして自らの足元を見ると、なにやら足から紐のようなものが出て、どこかに繋がっている。
(この足の紐みたいなものはなんだろう…私は死んでしまったの?)
そう思った瞬間、私の体は足の紐の先とは逆の方向へ、何か強い力に引っ張られると、ものすごいスピードで移動を始めた。
早すぎて何かはよく見えないが、走馬灯の様にいろいろな景色が私の周りを流れていく…もしかしてこれが本当に走馬灯と言うものなのだろうか?などと、思わず物思いに耽っていると、突然投げ出されるように私の体は止まり、どさりと落ちた。
「イタタ…んっ、ここは?」
私は体を起こしながら、きょろきょろと周りを見渡したが、やはりここも先程と同じく何も無い世界が広がっているだけだった。
(あの世って…イメージしてたのとぜんぜん違うわね。賽の河原が最初にあるんじゃないの?それとも、ここはあの世に行く前の場所なの?)
そんな事を考えていると、一人の人物がかなり遠くに座っているのが見えた。
(生きているの?)
などと考えてみたが、自分が死んでいるのなら、向こうにいる人物も死んでいるのだろう。そんな事を考えながらも、私はその人物に近づかずにいられなかった。
膝を抱えて座っていた人物に近づいていくと、私と同じくらいの少女だと言う事と、彼女が私とは明らかに違うことに気付いた。
「背中に羽がある…」
そう、彼女の背中には大きいとは言えない位のきれいな白い羽がついていた。いや、白と言うより透明に近いだろう。これは見えていいものなのか、それとも見えてはいけない羽なのだろうか?
しかし、背中に羽から私に連想できたのは、やはりそれしかなかった。
「あの…こんにちは。あなたはもしかして天使?」
そんな私の言葉に、膝を抱えて座っていた彼女が顔を上げる。なんとも可愛らしい顔立ちで、ダークブルーの瞳を持った少女だった。
羽のある少女は、わたしの顔を覗き込むようにしてびっくりしていたが、しばらくして首を横に振る。
「どうしてここにいるのかわからないの。さっきまでカプセルの中の私を見上げていたのに…ここはどこなの?」
彼女も私と同じように、どこからかここに引っ張られてきたと言うことなのだろう。ここはどこなんだろう、私もわからなかった。
「ごめんなさい。私もあなたと同じだと思う。ここが何処なのかわからないの」
その言葉で、再び彼女は抱えた膝に頭を埋め、しくしくと泣き始めた。
「あっ、あの泣かないで。私もいるから大丈夫よ、なんとかなるよ。そうだ!お話しようよ、その方が気も紛れるし、もしかしたらここがどこかのヒントが見つかるかもしれないよ」
わたしは困ってしまい。自分の状態を放り出して彼女の顔をあげることに必死になるが、彼女はイヤイヤと首を振るばかりだった。
「そうだ!自己紹介もまだだったよね。私は坂田瑞樹、18歳になったばかりよ。さっきまで高熱で苦しんでいたんだけど…あなたの名前は?そういえばさっきカプセルがどうとか言ってなかった?」
あたふたと私は、思いつくままに彼女に話しかけた。
すると、カプセルの言葉に反応したのか、イヤイヤをしていた彼女の頭が止まり、ゆっくりと持ち上がった。
(助かった…)
彼女の口が動く…しかし、なかなか声にならない。
「大丈夫よ、ゆっくり話してくれればいいから。カプセルって?」
こくりと彼女がうなずき、一度息を整える。
「私は…私たちは生まれたときから、生活の殆どをカプセルの中で過ごしているの」
「カプセルの中で過ごす…?」
「うん。でもある日気付いたら、私はカプセルで寝ている私を上から見下ろしていたの」
私は、何が何だか判らない彼女の話をうなずきながら聞いていた。
「そんな日が何日かあって、最近はその事がいつもの事の様になっていたんだけど…さっき突然何かに引っ張られるように、ここに飛ばされてきちゃって…何が起こったのかもわからないし、ここが何かも…だから帰り方もわからない」
そこまで話すと涙をながしながら、今度は私に縋り付いてきた。
「あなたは羽が無いわ…私死んじゃったんじゃないの?だから私を迎えにきてくれたとばっかり思っていたの。違うの?」
先程とは逆に、私が間違えられるとは思っていなかった。
「ごめんね。ちがうのよ、私も同じようにここに飛ばされてきたの。死神でもなければ天使でもないわ。私も死んだのかもしれないけど…」
「羽が無いから…てっきりご先祖様かと…」
彼女は少し安心したように、息を吐いた。
私はと言うと、彼女の言葉に少し興味を抱いていた。
「私は、私達の世界では普通の人間よ。でもあなたの世界では羽がついているのが普通の人間なのね。でもって、ご先祖様って言うことは、昔の人には羽が無かったと…」
「えっ…あなたの世界ではみんな羽が無いの?」
「無いわよ。羽は鳥とかにしか無いわね。後は…天使とか悪魔?」
天使と悪魔の自分の発言に、内心笑えてくる。私は天使や悪魔なんて信じていたのだろうかと。
「それじゃあ、えっと…坂田さんの住む世界と私の住む世界は違うということなの?」
苗字のほうで呼ばれるとなにかむず痒い感じがした。
「瑞樹でいいわよ。あなた名前は?」
「あっ、増井弥生…私も弥生でいいです」
「了解、弥生。そうね、今までの話をまとめると、私の世界と、あなたの世界は全然違うみたいね」
「でも、ここで今友達になったのは現実よね?」
考え込みながらも、弥生は次の瞬間にはにっこりと笑っていた。
しかしその時、私にはその笑顔がなにか普通と違う様に見えた。
その事を確認したくなった私は、弥生に聞こうと思った瞬間。またも、何かに引っ張られるように私達はそれぞれの方向へ動き始めた。
「今度は、どこへいくのかしら…」
そんな事を私は暢気につぶやいていると、目の前が光りでいっぱいになり気付けば自分の寝ていたベットに戻っていた。
「夢じゃないわよね…」
ベットの上に起き上がった私は、自分の手のひらをじっと見つめてみる。気付くと熱は下がり、体調が戻っている。しかし、さっきまで感じていた弥生の身体の感触…ただの夢な訳がない。あの感覚とあの空間はなんだったんだろう。
明日は図書館に行ってみよう…調べようが無いとは思うが、調べてみないと気が済まなくなってきている自分がいる。『夢・空間・幽体離脱』そんな検索で何かが引っかかるかは分からないが。
そう思いながら、体力を少しでも取り戻すためにも、私は朝までもう一度眠ることにした。
(弥生の羽触ってみたかったなあ…今度会えたら触らせてもらおう)
そんな事を思いつつ、私は目を瞑った。