第35話 スーパーノヴァ撃破!登場、新たなる敵!
「……一体なんだったのだ、今のやつは」
スーパーノヴァがマントに付いた埃を払う。そして周囲の気配を察知した。
「……リベンジ、か。その回復力も流石バケモノだな」
スーパーノヴァは、前線へ向かう最中にブラックライダーによる足止めを喰らっていた。しかし既に彼は居ない。かりんの要望で一瞬止めるためだけに来たのだ。
見据えるひとりは、かりん。既に衣装もボロボロだが、凛と立ち、左手を出した。
「?」
その左手を取ったのは、もうひとり。
「ごめんかりん。遅くなっちゃった」
「……もう、遅刻だよ」
五十嵐らいち。ワープにより現れた隻腕の彼女は、残る右手をかりんの左手の上に重ねた。既に変身済みである。
「……ライチ・イガラシ。こんなところに居て良いのか? 国はどうした。ワープだと? 妨害装置は……一瞬だけ切ったか」
スーパーノヴァは警戒しつつ、訊ねる。
「良いに決まってるじゃん。『私たち』は最強の戦力だよ?王座でふんぞり返ってないで、前線に出るべきでしょ」
ふたりでパニピュア。らいちとかりんは、重ねた掌をスーパーノヴァへ向ける。
「「弧を描く、純粋なる光の神罰」」
『まずいっ! スーパーノヴァ! 退避しなさい!』
ふたりの、金と白の精神力が混ざり合う。慌ててサブリナの通信がスーパーノヴァへ入った。当初、パニピュアの『その技』への対策は、ふたりを一緒にしないことだった。それでも発動したのなら、ワープで退避すること。妨害装置がある上で、ふたりが別行動しているならそもそも放ってこない。ワープでふたり一緒になったなら、こちらもワープで逃げるだけだ。
「ああ。だが――」
スーパーノヴァは、らいちがワープでここへ来たことを見て、妨害装置は使用していないと判断する。しかし、結果的に、スーパーノヴァはワープができなかった。予想通り、タイミングを合わせてオンオフの連携をしているのだろう。
「退避できん。真っ向からぶつかるしかないようだ、サブリナ」
『~~! くそっ! 武運を!』
「ははっ。任せろ。私は超! 新! 星! だ」
スーパーノヴァは身構え、その精神を集中させる。最悪、それを食らうことになっても、スーパーノヴァの精神力でどうにか防げれば、後は消耗したふたりを狩るだけである。
「"精神集中"――フルパワーだっ!!」
「「アーク・シャイニング・パニッシュメント!!」」
巨大な光の奔流が、スーパーノヴァを呑み込んだ。
――
「おおらあ!」
「ぬ!」
火花が散る。黒い騎士の炎の蹴りが、鋼の鎧を打つ。鎧の男はよろめくが、すぐに立て直し、騎士へ殴り掛かる。
「へ! スーパーノヴァにビビって逃げ出したへっぴり野郎が、俺に勝てるか!」
「適材適所って奴な。この戦争、俺個人の勝利より優先すべきモンが山ほどある」
「じゃ負けてくたばれ!」
何度かの衝突の後、互いに距離を取る。ブラックライダーの攻撃は大したダメージにはならず、フルメタルの攻撃は避けられる。
膠着状態である。
「俺だけが相手じゃないぜ?」
「は?」
ブラックライダーが笑った。直後、フルメタルの居た場所が燃え盛る。
「!!」
轟音と衝撃。アークシャイン基地からの『援護爆撃』である。音速を越える無音のミサイルは、相手に気付かれることすらなく塵と灰に変える。
『……ザザ……どう? 黙視できる? 良夜くん』
ブラックライダーへ、衝撃の余波でややノイズがかったゆりからの通信が入る。
「……ああ直撃だ。これを防ぐなら直接蹴り殺さねーといけねえ」
『うん』
「なんか嬉しそうだなゆり。戦争だぞ?」
『……うん。ごめん。貴方と戦えるのが、少し嬉しくて』
通信は、音を伝えるだけ。だから良夜も嬉しそうに笑ったのは、ゆりには伝わらない。
「そうだな。前へ進むことだけが、俺達のできることだ。この戦い、勝つぞ」
『ええ』
――
「――ぐぅっ!」
もがき、どうにかロープのようなものから脱したひかり。見ると、基地内であった。
「あははっ。簡単に侵入できたわよ?」
「どこだっ!」
ひかりは光線銃を抜き、構える。しかし敵の姿は見えない。
「アタシは『スパイダーレディ』。特殊な精神力を吐き出し、形にする能力」
「……!」
「このままワープ妨害装置を壊してやるわ」
そのまま声は聞こえなくなった。
「マズイ……! 敵の侵入っ! 狙いは妨害装置!」
ひかりは駆け出した。
――
彼女は考える。
……何故、ワタシはここに居るのか。
神を失い、何もかも失い、生きる気力さえ無くなったワタシが……再び、この大地を踏めている。
「……あらあ?」
自我を得た。それは、とても寂しく、辛いものだった。そうだ。子供のように、全ての判断を誰かに委ねていれば、それほど楽なことは無い。だがひとたび自由になると、自分の判断に対して責任が生まれてくる。……ワタシの責任とは何か。
「貴女、中国ラウムの兵よねえ? 確か日本に捕まった……」
分かりきっている。
「見付けたっ! スパイダーレディ!!」
バンと荒々しく扉を開けられた。光が差した。正に光だ。この女性は、ワタシに自我を与えてくれたひとりなのだから。
「……シャンヤオっ! 貴女――」
魔法が解けたように。今なら分かる。
「分かてます」
ワタシの責任とは。
「ふふん。それで追い詰めたつもり?」
こんな事態を招いた全てだ。
「ラウム・コネクト……!」
打ち倒そう。我が祖国の敵を。
――
サンダーボルトは3隻となっても、その攻撃力が落ちることは無かった。雨のように毎秒、ミサイルを発射している。そしてその全てが、アークシャイン基地とラウム王国へ注がれる。
敵の幹部を各個撃破しようと、最終的にこの戦艦をどうにかしなければ、いずれじり貧になる。周到に準備してきたイギリスラウムと違い、こちらは1ヶ月の即席なのだ。
せめてあと1隻沈められれば。各地で散開している敵幹部への援護に余裕ができるのに。こちらの迎撃により、向こうも下手に前進できないのが幸いだった。膠着である。
「…………」
通常、『共闘』とは。『手を組む』とは。利害の一致から結論付けられる。普段は相容れない相手でも、共通の敵が出現し、さらに強大であったとき、一時的に共同戦線を張ることはよくある。
『イギリスとアメリカをここで叩ければ、「王」へより近付く。ライチ・イガラシの国とはそれから交渉に入れば良いでしょう』
アークシャイン基地の屋上。この場に似つかわしくないふたつの影が、そこにあった。
「……『空』に戦艦。……私の攻撃範囲にまんまと……ね」
『ええ。パニピュアやスーパーノヴァなど、所詮「生き物」の枠から出ない。……最強はやはり貴女です。カラリエーヴァ』
薄着の女性と、翼を拡げるラウムアビス。わざわざこの戦争の為に、遙々『ロシア』からやってきた共闘相手。
「……ラウム・コネクト……」
不毛の大地に、白い粉が舞った。天候が書き換えられる。天が塗り変わるかのように、黒く分厚い雲が重なっていく。
『イギリスの穏やかな気候でしか使わなかったひ弱な戦艦は、嵐吹く北の大地と大空に対処できるのでしょうかね』
「……」
だがその時、集まった雲を貫く一筋の光が、帯を引いて大地に突き刺さった。
『?』
それはダクトリーナにも予想できなかったことだった。
雷ではない。黒い光に見えた。まるで巨大な槍のように見えた。
「……なに?」
カラリエーヴァ本人も分からない。取り合えず、様子を見てみることにする。
――
「!」
「!?」
――
アメリカラウム勢も、イギリスラウム兵も、アークシャインの面々も。
屋外で戦っていた全ての者が、その光の槍を目撃した。一番初めに『被害』に遭ったのは、サンダーボルトであった。
「うおお! なんだ!? なにか攻撃か!?」
「分からん! だが動力炉に直撃だ! もう4号は放棄しろ! 1号へ避難だ!」
「こんな……簡単に落ちるのか!? サンダーボルトが! イギリスの最先端が!」
槍は上空を進むサンダーボルトの1隻を貫き、一撃で撃沈させた。ミサイルの雨が弱まり、アークシャインの勢いが増す。
その槍の墜ちた先は。
――
「……が……はあっ! ……ぐう……生き……残ったか」
自慢のスーツも仮面も、切れ端しか残っていない。だがスーパーノヴァはどうにか、パニピュア最高の攻撃を凌ぎきった。
『――!! ……!』
通信機も奇跡的に無事だが、恐らくサブリナからであろう声が聞こえない。
「……耳をやられたか。だがまだ、戦えるぞ」
見据える先に、同じく疲労困憊のパニピュアが迫っていた。
「……とどめを、かりん」
「うん。だけど……」
「わっはっは。ここからは純粋な殴り合いだな、パニピュアよ」
「……!」
心身共にボロボロのかりんとスーパーノヴァ。最後の戦いを決意したところだった。
「行くぞぉ!」
【邪魔だ】
「ぐぅあっ!」
光の槍が、天から墜ちてきた。それはスーパーノヴァの身体を貫き、その巨体を地面へ縫い留める。
「何っ!?」
【漸くだ。随分と時間が掛かってしまった】
重い。パニピュアのふたりからの印象は、そのひとことだった。とにかく重い。声も存在も、何もかも。
その重さに押さえ付けられたように、ふたりは動けなかった。『それ』が姿を現した時、はっきりと恐怖を自覚した。
【……先ずは部下の手伝いからか】
『それ』はふたりに一瞥もくれず、その場から消え去った。その後もしばらく、ふたりは動けなかった。
「……え?」
ただ、スーパーノヴァは死んだ。そして残っていた精神力は、『それ』に奪われた。理解できた事実はそれだけだった。
墜落の衝撃が遅れて来た。大地が揺れ、空気の波が拡がっていく。
――
戦況は随時、日本にも伝わっている。アークシャイン本部基地の内部では、その男が眠っている。
「……池上さん。お体拭く時間ですよ」
職員が部屋へ入る。その男は2ヶ月以上眼を覚まさないが、衰弱もせず、筋力も衰えていない。それが不思議であるが、命に別状は無いので普通の検査以上の調査はされていなかった。
毎日決まった時間に身体を拭き。
決まった時間になるとメンバーがお見舞いに来て。
だがこの日。
「……あら?」
ベッドは空になっていた。
「池上さん? まさか……?」
職員は困った表情になる。いつものように、眠る太陽が居る筈だからだ。
その時、基地内に警報が鳴った。
「な、なに!?」
『落ち着け! 良いか、落ち着け!』
即座に南原博士の放送が流れる。彼は日本に残り、日本のアークシャインを支えていた。
『原因不明じゃが……ワープ妨害装置が一時不能になった。現在は復旧しておる。落ち着け』
「…………」
不穏な空気が、基地内に漂っていた。
――人物紹介⑧――
・スーパーノヴァ
本名不明。
アメリカ出身。
元ラガーマン。身長200㎝、体重125kg。
ミサイルだ! 戦闘機だ! いやあれは……!
アホみたいな強度を誇る最強のラウム兵。健全な精神は健全な肉体に宿る。つまり童貞。
しかし透視能力は無く、悪意の感知もできず、恋人も居ない。
「正義のヒーロー」に憧れ、念願の夢が叶った。だが気付かずに実現しようとしていたのは「サブリナの正義」であり、アメリカや人類の正義ではなかった。
精神力を巧みに扱う、真面目な好青年である。
享年22歳。




