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第34話 アークシャインvs.ラウムvs.アビス!三つ巴の戦い!

「左舷よーし!」

「おいそっち、尾翼煽られてないか?」

「砂漠だもんな。細かい砂が入って動き鈍ってる」

「そろそろ武器の整備終わったか?」

「あいつら瞑想中か。今のうちにこっち片付けるぞ」

 サンダーボルト艦内では、操舵手、戦闘員、補給係といった役割に分かれたラウム兵達が忙しく動いていた。

「目的地まであと20分くらいだ。戦闘員は起きとけよー」

「……む、迷ってしまった」

 艦内通路にて、規律ある騎士のようなラウム兵とは違った風体の巨漢が頭を掻いていた。

「盟友どの」

「ハイ。甲板に出るにはどうしたらよい?」

 スーパーノヴァである。青と赤の特殊スーツを身に纏う大男。アメリカラウム所属である彼は、サンダーボルトの搭乗は初めてであった。

「それならあっちの階段から上がって、左の通路を行けば良いぞ」

「そうか。助かった」

「盟友どの、作戦は大丈夫か?」

「任せておけ。とにかく前線で暴れれば良いのだろう?」

 道を見付けたスーパーノヴァは、白い歯を出してにかっと笑った。

「!」

 そこへ、艦内に警報が響いた。緊急用の赤いランプが点灯している。

「なんだ?」

 キョロキョロと首を振るスーパーノヴァ。隣のラウム兵は手元の通信機器を確認する。

「……侵入者だ! 急げ、2号だぞ!」

 そして顔を上げ、慌てて走り去るのだった。

「ふむ」

 なおも響き渡る警報。想定より早く『始まった』のだと、スーパーノヴァは考えた。

「マッハで飛行するこの戦艦に、空中から飛び付いての『侵入』か……豪気な。わっはっは」

 そしてまだ笑みは消えていなかった。

「サンダーボルト2号か。ここは確か1号だったな。よもや、敵も私と同じ作戦とは」

 その笑みは、さらに狂暴性を増す。

「待ちわびたぞ!! この時を!!」

 次の瞬間、2号から響いていた警報は2倍になる。

「ラウム・コネクトォ!!」

 先ほど訊いた道はどこへやら、スーパーノヴァが天井や壁を突き破り、変身しながらサンダーボルト2号へ突撃したのだ。


――


 サンダーボルト2号の甲板は、既に凄惨な光景が拡がっていた。

「…………」

「……い……」

 死屍累々のラウム兵。その中心にぽつんと立つのはひとりの少女。

 少女は無表情のまま、残るラウム兵を見据える。

「いきなり『パニピュア』かよ! なんで! どうなってやがる!」

「……精神障壁」

「はっはっはァ!!」

 少女がぽつりと呟いた直後、スーパーノヴァの鉄拳が襲い掛かった。

「うおっ!?」

 だがそれは、少女の纏う圧倒的な精神力のオーラに防がれる。目に見える、純白の輝き。スーパーノヴァは仰天し、距離を取った。

「盟友どのっ!」

 生き残りのラウム兵がスーパーノヴァへすがる。

「わはは……特殊スーツ無しで私に匹敵する精神力。音速の攻撃を『見てから』防ぐ反応速度。噂通り『バケモノ』だな……パニピュア」

「取りあえず1隻撃沈。幹部が出てきたよ。撤退しようか?」

 きらびやかな舞台衣装を纏う少女……南原かりんはスーパーノヴァなど見向きもせず、仲間と通信する。

『いや、当初の作戦通り、「前線で暴れるだけ暴れ」て。かりんちゃん』

「分かった」

 通信を終え、かりんはスーパーノヴァに向き直る。対するスーパーノヴァは、くつくつと笑っていた。

「……はっはっ! ……まさか本当に私と同じ作戦とはな」

「……アメリカラウム。予想通りだね」

「そうら!」

 スーパーノヴァが肉薄する。だがその拳は、やはりかりんの障壁に防がれた。

「無駄だよ。血の『格』が違う。あなたに私の精神力は破れない」

「……いーや。逆境こそ燃えるのがヒーローだ」

 スーパーノヴァは右拳を強く握り直し、息を吐いた。

「……?」

「すうう……はぁあ……。"精神(マインド・コン)集中(セントレイション)"」

 瞬間、かりんは腹部に衝撃を受けた。

「!!?」

 動じない筈の精神障壁をぶち破り、その巨大な拳はかりんの鳩尾に深々と突き刺さる。女子中学生の小さな身体ではその衝撃に耐えきれず、ふわりと宙に浮いてしまう。

「!? ……ぁ、はぁっ!」

 胃から臓器から吐き出しそうな気持ち悪さと激痛を全身で感じ、苦痛に歪むかりん。

「確かに精神『力』では敵わない。だから『技』を磨いたのだ。君はパニピュアになってから、格闘技などはやらなかったのかね?」

「!」

 もう一撃。スーパーノヴァの鋭い蹴りにより、宙に浮いたかりんはサンダーボルトから叩き落とされる。

「私はこのまま降りて、アークシャイン基地に突っ込む! 良いな! サブリナ!」

『好きにしなさい。どうせそれしか、貴方には能が無い』

 素っ気なく返事をしたサブリナだが、『パニピュアの片割れを倒した』という喜びは表情に出ていた。


――


『かりんっ! かりんっ! 返事して!』

 中国山中に墜落したかりんは、数分気を失っていた。やがてよろよろと起き上がり、通信機を拾う。

「……けほっ。……大丈夫。無事だよ」

『どう見ても無事じゃないわよ! 動ける? すぐ救援を向かわせるから!』

「いや、大丈夫。それより、アメリカラウムの『ヒーロー』達が一緒に向かってる。お姉ちゃん達じゃ、荷が重いかも」

『……!』

「わたしもすぐ向かう。……覚えたから」

『覚えた?』

 かりんは手を広げたり握ったりして、精神を集中しようとしていた。

「『技』って言うんだね。確かに慢心してたかも。……スーパーノヴァを止めないと。りょーやお兄ちゃんに繋いでもらえる?」


――


『前方にミサイル確認! ……!?ミサイルじゃない! あれは……』

『戦闘機!? ……いや』

 アークシャイン基地に不穏な通信が入る。超低空で進む『それ』は、ミサイルの形をしてはいなかった。

『スーパーノヴァだ!! およそマッハ5で接近中!』

「へっ」

 驚愕の報告に、楽しそうに笑ったのは良夜だった。

「"変身"!」

「優月くんっ」

 出し惜しみ無く、良夜は腰のベルトに手を当て、溜め込んだ精神力を解放して変身した。彼の触覚とマフラーが、中国大陸の風に靡く。

「馬鹿みたいに真正面から突っ込んでくれるんだ。丁重にお迎えしねーとな」

 バイクから降りた良夜は、クラウチングスタートの体勢を取る。

 そして、彼の世界に音と色が消える。

 精神を落ち着かせ、両足にのみ意識を集中させる。

 それから爆発と共に炎の矢となり、軽々と音速の壁を突破し、迫るスーパーノヴァへ駆け出した。


――


 それから数秒後に、遠くの方で地響きと爆発が起きた。もうもうと立ち上る煙を見上げていると、『上空から』『何者か』が『降りてきた』。

「! 戦闘準備!」

 ひかりが叫ぶ。彼らの目の前には4人の『ヒーロー』が立っていた。

「もう射程範囲でしょう。砲撃班はサンダーボルトへ攻撃開始! 歩兵は一時後退! 銃撃班前へ!!」

 その合図と同時に、遥か遠方でイギリスからのミサイルとこちらの迎撃ミサイルが衝突し、黒煙が更に濃さを増した。

 巨大な爆発は、開戦の合図になった。


――


「光線銃撃班、よーい!」

「よーい!」

「よーい!」

 歩兵の背後に陣取る白い特殊スーツの『シャインジャー達』が、一列に並んで石垣の隙間から光線銃の銃口を覗かせる。

「撃ぇえ――――!!」

 太陽光をエネルギーとし、精神力で打ち出す『光の銃』。その掃射はたちまち戦場を蹂躙する。相手はたった4人。圧倒的な数を前に為す術も無い。……かに見えた。

「……!」

 4人の内、全身を鋼の様な鎧で包む大男が、他3人の前へ出て、その銃撃を一身に浴びていた。

「ははっ。痒い攻撃だ」

 鎧の男は光の弾を全て防ぎ、3人を守った。本人も、その鎧に傷ひとつ付いていない。

「フルメタル。そもそもここへじゃなくて、直接敵国へ飛びなさいな」

 その男へ、後ろに居た女性が文句を言う。

「アークシャインにはワープ妨害装置があるって言ったろ。ここでその装置を壊さないとこれ以上進めないんだよ」

「ふん」

「撃ぇぇぇえええ!!」

「!」

 話している間に、第二波が襲い来る。またしても鎧の男に防がれると思った矢先、その鎧の男はどとからか来た衝撃により、吹き飛んでしまう。

「はぁっ!?」

「ぐおお!?」

 突っ込んできたのがブラックライダーだと分かったのはこの数瞬後だが、とにかく、後ろの3人を守る壁が無くなってしまった。

「――ちぃっ!」

 直後に光の嵐が彼女らを襲う。

「散開だ! 各自好きに暴れろ! どうせイギリスが全部撃滅する!」

 ワープは使えない。彼らは彼ら自身の速度により、その場を離脱した。


――


「と思ったかい?」

「!!」

 女性のラウム兵の声が上空から聞こえた。気付けば、ひかりの首に、ロープのようなものが巻かれていた。

「なっ!」

「あんたがボスだろう? なにもこんな大勢相手せず、あんただけ殺せば良い。手柄はアタシのモンだよ」

「――!!」

 ロープが絞まる。ひかりは上から吊り上げられる形で、その場から離脱させられた。

「ひかり!!」

 浩太郎の叫びも虚しく、ひかりと女性は姿を消した。

「ぐおっ! 退避だ!」

 直後に爆発。銃撃班の右翼が崩壊した。

「うおお!」

 慌てて他のシャインジャーが『それ』へ射撃する。しかし『その男』には、やはり傷ひとつ付いていない。

「……私は『キャプテン・ラウム』。この戦争の特攻隊長と言ったところか。なあ日本人」

 男は青と赤の全身スーツを着込み、左腕に星のマークの入った巨大な盾を構えている。

「……アメリカが……『特攻』?ふざけやがって」

 その皮肉にカチンと来た修平(シャインマーキュリー)が、愛銃を向ける。

「ぶち殺す」

「来い」


――


「見付けた。案外早く見付かったな」

 その頃。

 別の場所でも、開戦の火蓋は切って落とされようとしていた。

「……サブリナって、実は相当賢いのかしら」

 ハルカはそのステルスが『能力頼り』であることを看破されたと考えた。戦争には巻き込まれまいとしていたのだが、『その男の眼』にはきちんと見えていた。

「コロナ」

「はいはーい」

 フィリップが手を差し出し、コロナがそれを取る。コロナは彼の手をまじまじと見詰めた。

「なんだよ手を繋ぐのが嫌か?俺もだ我慢しろ」

「……いや、接触してれば良いんだから、抱き合っても良いよねーって」

「勘弁してくれ。士気が下がる」

「キスでも良いよね。あっ。ロマンチック」

「もう黙ってくれ」

 そしてふたりが目を閉じると、彼らの精神力が高まっていく。

「「"精神統一(スピリット・ユニティ)"」」

 そう呟くと、地面がせり上がった。本来『砲台』の精製を能力とするフィリップの精神力が増幅され、『城塞』として発揮される。不毛の大地から、ミサイル砲台を多数兼ね備えた砦が、そこに出現した。

 その屋上に、ハルカが立つ。それを見据える眼が、城塞の前方10キロにあった。

「ここでお前ら『旧体制派』も討つ。そうすりゃアメリカラウムの天下だぜ」

 その男は『弓』と『矢』を持っていた。対するは城壁と城門と、長距離狙撃から近距離砲撃まで隙の無い『ミサイル基地』。まるで勝ち目が無いように見えるが、男はにやりと笑みを崩さない。

「『フェニックスアイ』。出撃する」

「――来い」

 ハルカもソーラーブレードを起動させた。

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