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騎士団長子息の俺は『イケメンすぎる』という理由で勇者のパーティから追放され恋人が悪役令嬢だったことを知り婚約破棄したのだが

作者: 桜草 野和

「ラディーン、お前をこのパーティから追放する」


 勇者ミデルが、宿屋の部屋からラウンジに降りて来た俺に告げる。


「ミデル、どうして俺が追放されないといけないのだ? 俺は十分戦力になっているだろ?」


「ああ、ラディーンは頼もしい仲間だ。しかし、毎朝お前が部屋から出てくるのを待っているせいで、冒険がおそろしく進んでいない!」



 朝方まで俺を求めていた四つ子の娘たちが、


「また、この村に来てね」


と言って、宿屋から出て行く。




「ラディーン、お前はイケメンすぎる。はっきり言って魔王討伐の邪魔だ。女がパーティに入ったらすぐに手を出して、また違う女ともやってしまうから、いつからか俺のパーティは野郎だけになってしまった。だいたい、お前には美しい婚約者がいるのだろう? さっさと婚約者のもとに帰るんだな」



 俺は伯爵令嬢のレレッシュと婚約していた。確かに美しい。あっちのほうも凄い。ただ、束縛が強いのが難点だ。



「さらばだ。友よ」



 勇者ミデル、魔法使いグリン、召喚士ビードのむさ苦しい、野郎だけのパーティが、俺を残して宿屋から去って行った。




 俺は銀食器にうつる自分の顔をまじまじと見る。




 イケメンなのは生まれつきなのだから、仕方ないではないか。それに、俺から女たちを口説くことはない。言い寄ってくる女たちが悪い。




 俺はこの遅い朝食のように、




「どうぞ、召し上がれ」




と言われたものを、おいしく食べているだけだ。俺に罪はない。




 しかし、勇者のパーティを追放されるとは困ったことになった。


 騎士団長子息の俺は、修行のために勇者のパーティに入っていた。


 追放されたことがバレると、面倒なことになる。もしかしたら、レレッシュに婚約破棄されてしまうかもしれない。



 それは困る。あんなにいい女は他にはいない。冒険に出て、あらためてそう思っていた。



 俺が他の女たちの相手をしているのも、レレッシュとできない寂しさを紛らわせるためでもある。





 朝食を食べ終えて、宿屋から出ると、大勢の女たちが俺を出待ちしていた。



「ラディーン様、今から私たちと楽しみましょうよ!」



「何言っているのよ! ラディーン様は私たちとしたいのよ!」



 出待ちしていた女たちがケンカを始める。よくあることだ。




 すると、衛兵たちがやって来て、



「王女様がお呼びだ。ついて来い」



と指図する。



 俺はイラっと来たので、とりあえず衛兵たちをボコボコにする。



「王女様がお呼びです。ついて来てください」



 この『ボンヌーン王国』の王女は、世界一のおっぱいの持ち主だと聞いたことがある。



 今のところ、他に用事もないし、世界一のおっぱいに会いに行こう。



 俺は衛兵たちについて行くことにした。





 ボンヌーン城ーー


「まぁ、本当にイケメンだこと。こんなに素敵な殿方がいたなんて驚きだわ」


 王女ビアンヌが、顔を近づけている。


 噂に聞いていた世界一のおっぱいが、思い切り俺の体に当たっている。


 確かに、こんなに魅力的なおっぱいに出会ったのは初めてだ。



「王女様、裸になってもらえますか? おっぱい、ちゃんと見たいので」



「バカ者! 王女様になんという無礼なことを!」



 衛兵が生意気な口をたたいたので、俺が殴りかかろうとすると、衛兵が後ずさりする。



「お前たちは下がりなさい」



「しかし、王女様。この者は、淫らな行為に長けた危険人物です」



「だから呼んだのよ。お前たちは5秒以内にこの部屋から消えなさい」



 王女がそい言うと、衛兵たちは慌てて部屋から出て行く。




 スルッ。王女はドレスを脱ぐ。下着は身につけていない。




 これが世界一のおっぱい……。




「見ているだけでいいの?」




「もちろん、いただきます」




 ドンッ! すると、ドアを体当たりで破壊して、兵士たちが入って来た。




 王女の世界一のおっぱいを見て、思わず剣を落とす兵士もいる。




 この鎧と紋章は、我が祖国『ケイローズ』の兵士たちだ。




 窓の外を見てみると、ケイローズの兵士たちが、ボンヌーン城を取り囲んでいた。




 その中には、騎士団長の父、ハミルドの姿もあった。




 どうやら、ボンヌーン王国に戦争をしかけて、攻め落としたようだ。




 しかし、どうして突然ボンヌーン王国に攻め込んで来たのだ? 祖国ケイローズとボンヌーン王国は友好関係にあったはずだ。




「噂には聞いていたが、お主の婚約者は、かなりの策略家のようだな。私にお主を奪われぬように、戦争までしかけてくるとは、恐ろしい女だ」



「ビアンヌ王女、いくら世界一のおっぱいの持ち主だとはいえ、俺の婚約者のレレッシュの悪口を言うのは許せませんよ!」



「アハハハハッ。すっかり、騙されておるのだな。レレッシュは、お主と婚約するために、あらゆる卑怯な手段を使ったのだぞ。思い出してみろ。お主と仲良くなった女たちは、ケイローズでどのような暮らしをしている?」



 花屋のメアリーは、騎士団の馬の世話係になり、帽子屋のハンナは修道女になり、メイドのクレアは消息不明になった。



 ビアンヌ王女の言う通り、俺と仲良くなった女たちは不幸になっている。



 ただ一人、レレッシュだけを除いて……。



 レレッシュの仕業なのか? いいや、優しくて、虫も殺せないレレッシュにそんなことができるわけがない。




 バリンッ! 窓ガラスが割れる。




 ビアンヌ王女が狙撃され、倒れてしまう。




「喋りすぎたみたいね……」




 銃弾は、世界一のおっぱいに命中していた。




「すぐに救護班を呼べ!」




「ハッ!」




 俺は兵士たちに命令すると、ビアンヌ王女の体にドレスをかけた。





 レレッシュと話をする必要がありそうだ。







 俺は騎士団と一緒にケイローズに戻ると、レレッシュと再会した。


 父には、


「勇者が俺より弱かったからパーティを抜けた」


と話した。


 実際に俺は勇者ミデルよりも強かった。ただ、勇者ミデルは聖剣を使うことができる。あれはズルい。“勇者の装備”を持たないミデルには負ける気がしない。



 ボンヌーン王国との戦争に勝利して、ケイローズの首都『ハリエント』はお祭り騒ぎだった。


 ヒュードドーンッ!


 打ち上げ花火も、夜空にキレイに咲いていた。


「レレッシュ、本当のことを話してくれないか?」


「だから、私は何もしていません。ラディーン様と仲良くなった女たちが不幸になったのはただの偶然です」


 俺は“ささやきの丘”にレレッシュを呼び出していた。恋人たちが、イチャイチャしながら愛をささやき合うデートスポットだ。


 よくここで、レレッシュが作ってくれたお弁当を、2人で食べていた。たぶん、あのお弁当も、レレッシュがメイドにわざといい具合に、“不慣れだけど味は美味い”感じで作らせていたのだろう。



「レレッシュ、君との婚約は破棄させてもらう」



 ヒュードドーンッ!



「そんな、ラディーン様! 私を見捨てないでください!」



「一度は愛した関係だ。レレッシュがしたことは黙っておくよ」



「……許さない。この私をフルなんて、絶対に許さない」



 ヒュードドーンッ! ヒュードドドドーンッ!



 打ち上げ花火がクライマックスを迎える。



 俺はレレッシュを残して、背後から刺されたりしないように警戒しながら立ち去った。






 3ヶ月後ーー


 前勇者ミデルが魔王に返り討ちにあい、騎士団長の父、ハミルドが勇者となった。史上最高齢の勇者だった。


 俺は父のパーティに加わることになり、魔王討伐に再び向かうことになった。



「ラディーン様、どうか無事に帰ってきてください」



「レレッシュ、帰ってきたら、挙式しよう」



 チュッ。この唇とも、しばらくお別れだ。



 俺は、レレッシュとのあれがどうしても忘れられず、婚約破棄してから1週間後には、レレッシュとよりを戻していた。




 レレッシュとは、例え殺されてもいいから、愛し合いたいと覚悟を決めたのだ。



 父はイケメンすぎるという理由で、俺をパーティから追放することはないだろう。




 さぁ、世界各国の女たちが俺を待っている。めくるめく冒険の始まりだ!

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