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メモリーフラグメント

お久しぶりです。

今回は、二話連続投稿になります。

『俺は王子で、お前は勇者だ。ほら、十分なくらい対等だろう?』


 絵に描いたような王子様は、レンの言葉など歯牙しがにもかけない態度で言った。そのときレンに見せた顔は、国の未来を背負う公人(王子)としての仮面かおではく、友人に向ける気を許したものだった。


『この剣を、レン様に贈ります。失くしたらダメですからね?』


 魔法の才媛と名高い王女様は、国宝クラスの短剣を差し出す。別れの寂しさを紛らわす為にか、冗談の色が強い忠告を加えて。


『実は私、とある国の王女様なんです。こう見えて、けっこう偉いんですよ?』


 銀髪の少女は、さらりと自身のとんでもない出自を暴露した。その美しい顔に、悪戯っぽい色を浮かべながら。


『オレ様を使うだぁ? ハッ──面白れぇ。いいゼ、やってみろッ!』


 どこまでも傲慢な『皇様』は、やはり不遜な態度でレンを焚きつけた。殺伐としたこの戦場にはまったくと言って良いほど似つかわしくない、楽しげな笑い声が響いた。


『それ、あげる。私には無理だったけど。大丈夫、きっと使える』


 第二王女で周辺諸国に≪大魔法師≫の異名で知られる天才少女は、信頼し切った眼差しを向けて、レンの手に握られている銀色に輝く短剣を示し言い放った。


『私はティアっていうの。よろしくね、≪勇者≫のお兄さんっ!』


 陽だまりのような笑顔を振りまく竜の少女は、レンの決心など無駄だと嘲笑うかのように、あっさりとレンの素性を受け止めた。彼女にとって、レンが何者であろうと〝お兄さん〟なのだろう。


『儂を扱えるかどうか──それは、お主次第じゃの』


 まさに『皇』といった堂々たる風格で、レンに進むべき道を示す。その助言が酷く曖昧なものであっても、既に意思を固めたレンにしてみれば、背中を押してもらうことに相違なかった。






 例え、迎える幾たびかの結末で命を燃やし尽くすことになるとしても、理不尽だと叫んでなにかに当たり散らしたくなるほどの出来事に決まって見舞われるとしても。


 脳裏に浮かぶ数々の記憶は、そのどれもがかけがえのない大切なものだ。


(……本当に、これで全部か?)


 呼び出した記憶が明瞭なことからも分かるが、どれもまるで昨日のことのように覚えている。印象の浅い出来事に関しては、やはり一語一句までとはいかない。しかし、それなりには頭の片隅に残している自信があった。


(なにかが足りない?)


 それなのに、レンはどうしても違和感を拭うことが出来ないでいた。なにか大切なことを、忘れてはいけないことを忘れている気がするのだ。

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