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サイハテの旅団  作者: こん
コリュート寒村編
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双子の問題児(1)

 先日過ぎ去った嵐は、思ったよりも大きな傷跡を森に残していたようで、朝になってから周囲を見渡してみると、所々まとまって木が倒れているのが散見された。シオンがアウリオンの屋上でのんびりと景色を見渡しつつ、起きたばかりの頭をゆっくりと起こしていると、屋上のドアを勢いよく開けてメルが飛び出してきた。

 何事かとドアに目を向けようとしたシオンの視界の隅に、こそこそと動く影が3つほど見えた。勢いよく飛び出してきたメルと、その3つの影の大きさからなんとなく事情を察し、いつもと変わらない様子を心がけつつメルに声をかけた。


「どうした、朝からそんなに急いで。寝癖くらいは直したほうがいいぞ」


 指摘された瞬間すぐに頭に手をやり、髪はいつものように整っていることがわかったメルは、すぐにからかわれたと気づいた。


「このバカシオン!今はそれどころじゃないってのに、ルーチェが部屋にいないの!」


 やっぱりそうかと、シオンは自分の予想は正しかったと確信した。

 朝早くにルーチェを迎えに行ったところルーチェがおらず、アウリオン内を探し尽くして屋上についたというところだろうか。

 息を荒くして肩を上下させているメルに手招きをして、柵越しに見える森を指差し、まだかろうじて見える小さな影を指さした。


「なあメル、あの影なんだと思う?」


 呼ばれるがままに柵に近づき、目を細めてその影を確認すると、ルーチェを連れ出した先客の目星がついたようで暗い微笑みを口に浮かべた。


「ねえシオン、あの影って3人分よね」


「俺の目には3人に見えるな。強いて言うなら、全員子供に見える」


「今アウリオンに乗ってる子供って、3人しかいないわよね」


「ルーチェを除くと、あとはレコンとメランだな」


 メルは目が良くないというわけではないものの、この距離では人物の判別まではつかなかったらしい。だが、シオンの言葉で先ほどつけた目星が、確信へと変わったようだ。

 柵から手を離し、ゆっくりと後ろに下がると大きく空を仰ぎ、思い切り叫んだ。


「あのバカ姉弟かぁぁぁぁ!!」


 心からの叫びであろう言葉が山々に響き渡り、その木霊も消えないうちにそのまま振り返りもせず、ドアの奥へと走り去っていった。

 あんな乱暴に開け閉めするから、すぐにドアが壊れるのだ。開けっ放しにされたドアを横目に眺めながら、おそらくメルが追って行ったのであろう3つの影が見えた方向に視線を戻した。

 その横顔には、今日も楽しい日になりそうだと期待を込めた、小さな笑みが浮かんでいた。

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