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サイハテの旅団  作者: こん
コリュート寒村編
1/80

行き倒れの少女(1)

こんにちは、こんと申します

以前投稿していた作品の手直ししたものとなります

多少の設定ミスが散見されたため、以前の旅団は削除させていただきましたが

今回も話の流れ自体は大きな変化はないので、ご安心ください

~セーヴェル地方 クラーヴォ山脈~

 

 2日間に及ぶ大嵐が過ぎ去り、澄んだ空気に満ちた山間の空には、数え切れない程の星が瞬いている。

 木々の葉に浮かぶ雨の粒は星の光を受け、数刻前までの豪雨の名残を残しつつ森の中を淡く照らしていた。

 幻想的な光景を彩るかのように、フェガリの音色が木々の間を流れて森全体へと響き渡る。木製の管楽器であるフェガリが奏でる音は、木製の楽器の持ち味である柔らかい音色を震わせ、棲家からでてきた動物たちもその音に耳を澄ませる。

 森の中でも一際高い木から伸びる、腰掛けるにはちょうどいい太さの枝に座った少年は、木の幹に背中を預ける形でフェガリを口元で滑らせ音を紡ぐ。

 わずか数分の演奏であるにも関わらずその音色の余韻は、森に住む獣たちがしばらく動きを止めて聞き入るほど森の深くに広がっていく。

 少年が口から吹き口を離して改めて景色に目を向けると、演奏が終わるのを待っていたのか木の根元の方から控えめな拍手が届いた。


「相変わらず見事な腕前ですね。ですが、そろそろ夕食の準備が整うのでアウリオンへと戻ってください」


 少年が首を傾け木の下を見下ろすと、そこには大柄な筋肉質の男が立っていた。

 フェガリから紐を伸ばして首にかけると、少年は軽やかに木を降り、最後の枝から軽く跳んで地面に着地する。

 先程までの風景に溶け込むような優美さは消え、その表情は年相応の少年の表情になりアウリオンへと歩き出す。

 そのあとに続く形で少年の後ろを男が歩き、少年が登っていた木のすぐ近くに留まっている大型のリスウィアであるアウリオンへと近づくと、食器を運んでいた少女が少年への文句を口にした。


「ちょっとシオン、演奏会もいいけど食事の準備を手伝ったらどう?」


「悪かったよメル、でも今日の食事当番は俺じゃないだろ?」


「今日の夕食は外で焚き火を囲んで食べようって言ったのはどこのどいつよ」


 思い出したようにあぁと頷くシオンに、呆れたようにため息をつくメルと呼ばれた少女は、シオンと共に歩いてきた男に声を掛ける。


「ディグ、こんなバカは放っておいてさっさと夕食を始めましょう」


 2人のやりとりに苦笑いを浮かべつつ、ディグと呼ばれた男は組んであった薪に火を点け、その火は一気に燃え上がり薄暗い森を明るく照らす。

 ディグと呼ばれた男が木の器にスープを満たし、旅団の面々は順番に受け取りながら、スープの入った大釜の横のバスケットから、パンを持って各々の場所に腰を下ろす。

 食事が行き渡ったのを確認し、シオンが号令をかけると同時に賑やかな夕食が始まった。

 皆が食事を始めたのを見渡し、シオンも食器を手に取り料理を食べようとしたとき、森の中から草をかき分けるような音がするのに気がついた。

 そっと料理の乗っている皿を地面に置き、腰に差している短剣に手を添えつつ草むらに近づき、小さな石を軽くほうってみると何かに当たる音とともに何かが倒れる音がした。

 すでに草むらに何かが潜んでいるのに気づいている面々は、シオンと目配せをした後もしもの時のために各々の武器に手を掛ける。

 食事の匂いにつられた野生の獣が近づいてきたのかと警戒しつつ、意を決してシオンが草むらをかき分け足を踏み出したとき、なにか柔らかいものを踏みつけた。

 今まで感じたことのない感覚を足の裏に感じつつ恐る恐る足元を見てみると、そこにはまだ年端もいかないような少女が倒れていた。


「なんだ、ただの女の子か……って女の子!?」


前書きと後書きは、なにかお伝えしたいことがある時のみ

書かせていただきます

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