IT'S MY LIFE
帰宅すると誰かがいる生活。
同棲、それは甘美な響き。
というわけで「IT'S MY LIFE」のレビューである。
同棲作品の有名どころを挙げるならば、漫画界隈におけるもふーでお馴染み「高杉さん家のお弁当」だろう。あれはいいものだ。あの漫画の影響で私はお弁当男子になった。三日坊主ならぬ一日坊主になってしまったのは、ズボラな性によるものか。嘆かわしい限りだ。
最近なら同棲にファンタジー要素を絡めた「魔法使いの嫁」も有名だけれども、双璧を成す名作といえば、この「IT'S MY LIFE」に他ならない。
あらすじに入ろう。
騎士団を早期退職し、念願のマイホームを手にした元騎士隊長アストラ。引っ越し直後、そこに飛び込んできたのは、魔法を使うことのできるアンティキティラ族の少女ノア。そして忘れてはならないのがペットのドラゴン、ごあごあだ。
「IT'S MY LIFE」を一言で表すなら「綺麗」だろう。なんせ、根っからの悪人が存在しないのだ。盗賊に身を費やす竜人がいるにはいるけれど、どうあっても悲惨なことにはならない。安心感のようなものが常に漂っている。もし私が十年若ければ、その綺麗さに唾を吐いていたかもしれない。
深夜に酒を飲みながら読めば、心が洗われて、頬を水滴が伝うだろう。
私は何を読んでも泣いてしまうのだが。
一人でいると涙もろくなってしまって困る。
ペットごあごあの過去はたまらない。最近はよく、マスコットキャラクターに壮絶な過去を持たせることによって、現在の可愛さなりなんなりを引き立てる手法、のようなものが見受けられるが、まさにそれだ。棒線でしかない目にいかついタテガミながらも、どこか可愛く感じてしまう。
他にも見どころは沢山ある。アストラの元同僚カイアスと、ノアの姉であり族長のエリザベスの掛け合いは、酒なしでは決して読めないほど、甘くて、甘い。場合によっては口の中まで甘くなってしまうのでブラックなコーヒーなんぞを用意するのもいいかもしれない。胸がキュンキュンして枕に顔をうずめて足をバタバタしてしまうこと、請け合いである。
ハートフルコメディを地でいくような内容。
王道と呼んで差し支えないストーリー。
アストラの家に対する執着を光るセンスでもってコメディの形に落とし込んでいる。
何度も読みたいけれど電子書籍しか持っていないので、
いずれは紙媒体も手に入れたい所存。